「完全にバレたなって」AIに丸投げした社会人の痛恨のミス。クライアントは無言で“契約終了”
なぜか土壇場であるほど、そう思い込んでしまいがちだ。生成AIは、リサーチから文章作成、翻訳まで瞬時にこなし、ビジネスパーソンから学生まで忙しい現代人にとって頼もしい存在となった。
だが、その便利さに甘え、「考える」「確かめる」「自分の言葉にする」といった工程まで手放してしまえば、思わぬ代償を払うことになる。
◆多忙が引き金となった「AIに丸投げ」
そう語るのは、鈴木幸喜さん(仮名・30代)だ。本業でIT系の社内SEとして働く傍ら、副業で7年以上のキャリアを持つWebライターでもある。
2023年後半、ChatGPTが急速に普及し、多くの人がその利便性に期待を寄せていた。鈴木さんもその一人。本業ではAI導入を推進する立場にあったため、その実力を誰よりも理解しているつもりだったという。しかし、その過信が、長年築いてきたクライアントとの信頼関係を崩壊させる引き金となった。
当時、複数の継続案件を抱えていた鈴木さん。
「本業の繁忙期と副業の納期が重なるという事態に直面しました。平日の夜と週末を執筆にあてていたんですが、どうしても時間が足りなくなって」
この状況を打開するため、彼はある決断を下す。「この記事をChatGPTに任せて、ほぼそのまま納品してしまおう」。構成案だけをAIに渡し、生成された文章に軽く目を通しただけで納品したのである。
◆あっけなく崩れ去る信頼関係。静かな契約終了
普段であれば、必ず音読して推敲し、自身の体験談を交えて文章に「温度」を加えてから納品する。だが、この時ばかりはそのひと手間を省いてしまった。
「AIが出力した文章は、たしかに一見すると誤字もなく、文法的な破綻もない、整ったものに見えました。時間的な制約があったこともありますが、“AIだから大丈夫だろう”って。
ただ、読み手のプロの目はごまかせなかったんです。納品後、クライアントからすぐにフィードバックが届き、『内容が薄い』『いつもと文章のトーンが違う』という厳しい指摘がありました」
特に鈴木さんの胸に突き刺さったのは、「いつもと違う」という言葉だった。それは、これまで彼が書く文章そのものを信頼してくれていた証左にほかならない。AIが生成した文章は、表面的には整っていても具体性に欠け、どこかで読んだことのある一般論の寄せ集めに過ぎなかった。その「違和感」を一目で見抜かれてしまったのだ。
その案件は継続が前提だったが、その後の発注はぱったりと途絶えた。クライアントから「もう頼みません」と明確に告げられたわけではない。ただ、静かに声がかからなくなった。はっきりと叱責されるよりも、黙って離れていかれるほうが、自身の過ちの重さを突きつけられるようで、何よりもこたえたという。
◆人間として“選ばれる理由”を放棄してしまった
この苦い経験を経て、鈴木さんのAIとの付き合い方は一変した。彼は、問題はAIそのものではなく、自身の使い方にあったと振り返る。
「AIは無難な文章を作るのは得意でも、『その人だから書ける一文』は出せません。私が信頼されていたのは、文法の正しさではなく、自分の経験や視点を混ぜ込んだ文章だったはずです」
AIに執筆を丸投げした時点で、彼は自ら“選ばれる理由”を放棄してしまった。納期のせいにしてはいたが、心のどこかに「ラクをしたい」という気持ちがあったことを、彼は率直に認めている。
「現在はリサーチの補助や構成案の作成などには、積極的にAIを活用していますが、最終的に読者に届ける文章は、必ず自分の言葉でリライトするようにしています」
