【小林 信也】【W杯目前!日本は勝てるのか】川淵三郎さんスペシャルインタビュー「森保っていうのは本当に大した男ですよ。だから…」
「森保っていうのは本当に大した男ですよ」
いよいよ北中米ワールドカップの開催が目前に迫ってきた。ここのところ、数々のヨーロッパの強豪に加え、ブラジルも破った森保一監督率いる日本代表が目指すのは当然、優勝だ。Jリーグが開幕してから33年、その生みの親であり、日本においてサッカーをメジャースポーツに押し上げた川淵三郎氏に話を聞いた。
「運さえ良ければとにかく勝てる」
――今回のワールドカップ、川淵さんはどんな思いで開幕を待っておられますか。
いまの選手は僕なんかよりずっとサッカーに関する知識が豊富だからね。すべての面で選手の方が間違いなくレベルが上だもん。いまさらアマチュアの経験しかない僕が偉そうに言えない、何か言うのはおこがましいという表現がぴったりだね。
例えば栄養学にしても、いまの選手は全部知っている。就寝の何時間前にどんな栄養を摂ると身につくとか。僕なんか全然知らない。だから偉そうにサッカーのことは言わない、言いたくない(笑)。
僕らよりみんな能力があるからね。勝ってくれたらうれしいなあ。勝ってくれるだろうなあという思いで今回は見られるわけだから。
日本代表が初めてワールドカップに出場したころとは全然違う。いままでは、こんな組み合わせだから、予選を突破できるかどうか、勝つか負けるかわかんないなあ、と心配しながら、なんとか勝ってほしいと思って見てたんだけど。今回は「運さえ良ければとにかく勝てる」と感じている。負ける前提でものを考えていた自分から全然脱皮しちゃって、「うまくいきゃ、ずっと勝ち進むな」っていう気持ちさえ持っています。
「森保はハラの据わった男」
そういう意味では、森保ってのは大した男でね。僕個人としては、4年後の大会も、3回連続で森保がやってもいいとさえ思っている。彼自身がすごく進歩しているのがわかるから。
基本的にね、初めの4年間は森保らしい良さが出てチームをまとめたなあと思った。けど、2期目に入る時、多分すぐオファーを断るだろうと思ったんだよね。というのは、岡田(武史)にしろ、日本代表の監督を経験した人は、家族に対する誹謗中傷が大変でものすごく苦労するから、だいたいみんな家族が反対する。本人も家族のことを慮り、自分自身もひどい誹謗中傷を受けるから、やっぱり続けてやりたくないというのが今までのケースだった。
そしたら森保は2期目も引き受けてくれた。僕は協会の中でサッカーに関する人事にはノータッチだから、僕の意向は関係ないんだけど、個人的には2期目も森保がいいと思っていた。
それで森保に会った時、「2期目もよく引き受けてくれたなあ、家族は大変だろう」と訊いたら、「全然平気ですよ、何の問題もありません」と言う。「広島で経験してますから」って。広島での監督経験と日本代表の監督経験では相当な違いがあるんだけど、本当に泰然としていて、喜んで受けるという感じだったからね。改めてハラの据わったやっちゃなあと感じて、必ずやってくれると確信した。
2期目に入る時、コーチをみんな代えたでしょう。いや僕はその辺詳しく知らないよ、現場にはノータッチだからあくまで「仄聞したところによれば」なんだけど、過去4年間やった指導方法、試合の運び方、選手の選び方も1期目と全然違う形にした。いろんな状況に応じて対応できるチームづくりに変えた。
それも驚いたよね。それまでの4年間を踏襲するんじゃなくて、4年間の経験を踏まえてさらに一段とレベルアップした指導でチームを作り上げてきたわけでね。森保本人がすごく進歩してるなあという印象が僕にはあるんだよね。森保に会ったら、「お前のこと、尊敬してるよ」って言うくらい、僕らはおこがましくて森保に意見なんか言える立場じゃないと、本当にそう思っている。
「森保監督の8年間の成長には期待できる」
1期目、アジア最終予選でいきなり負けたでしょ。ホーム(大阪)でオマーンに0対1で負けて、次の中国には勝ったけど、3戦目でサウジアラビアに0対1で負けて1勝2敗。「やめさせろ!」って声もマスコミには出た。僕は、監督を代えたところで大きく変わるわけじゃないし、代える必要はないと思っていたけど、本人の胸中はどうかと心配していた。ちょうど〈Jリーグアウォーズ〉で本人と話す機会があった。いやこれも本人が、「川淵さん、思うところがあったら言ってください」って言うから話したんだよ。普通はあまり言わないんだけど、森保がそう聞くから僕は「遠慮せずに、どんどん自分が使いたい選手を使った方がいいよ。ベテランに遠慮なんかしないで、自分のやりたいことをやった方がいい」って言った。そしたら森保が、
「僕はそんなにやさしい男じゃなくて、冷徹な男です」
と言ったから、びっくりしちゃったんだよ。「僕は思う通りやってます」って。
思わず顔を見直した。予選突破は難しいかと心配されるタイミングだったからね。本当にハラが据わっている男だなあって。そしてその後、勝ち切ってワールドカップに行ったからね。
そういう森保監督の8年間の成長には期待できる。だから以前のように「オランダ戦にはほとんど勝てない、引き分けで十分」だなんていまは思わない。
いまの代表を見るとクラマーの言葉が思い起こされる
(日本サッカー界の礎を築いたドイツ人指導者、デットマール・)クラマーがね、「試合の勝敗っていうのは、最後は勝利の女神が決めるもので、強いからって絶対勝つわけじゃない。最後は勝利の女神が微笑みかけてくれるかどうかによるものだ」とよく話していた。
しかし、「勝利の女神が微笑みかけてくれるか否か、と言えるのは、準備を怠らず、努力をして、技術的にも戦術的にも世界のトップクラスにあるという自信があって初めて言えるのであって、いい加減なチームがただ運に任せて勝つなんて、そういう馬鹿なことではない。勝利の女神はちゃんと見ているんだ」とね。
その言葉からすると、今回の日本代表はそう言える資格のあるチームに初めてなったなあという感じがするね。
【後編を読む】【W杯目前!川淵三郎さんスペシャルインタビュー】「世界に出ろ、世界で学べ」という僕の持論がようやく実を結びはじめた
【続きを読む】【W杯目前!川淵三郎さんスペシャルインタビュー】「世界に出ろ、世界で学べ」という僕の持論がようやく実を結びはじめた
