【山口 伸】三井の「ミヤシタパーク」は成功したのに…代々木公園の「BE STAGE」が開業1年で「ガラガラ」「穴場」と言われてしまう理由
2025年3月、代々木公園の一角に東急グループの商業施設「BE STAGE」が開業した。民間事業者の収益を公園の維持・管理に充てるPark-PFI(公募設置管理制度)を活用した施設で、公園内施設という位置づけだ。
だが、実際に訪れてみると規模の割に賑わいに欠ける印象だ。立地や規模が異なるとはいえ、同じくPark-PFIを活用して三井不動産が建設した「RAYARD MIYASHITA PARK」のように賑わってはいない。
昨年以降、SNSでは「渋谷がつまらなくなった」という言説が聞かれる。商業的な賑わいより機能性を重視する東急グループの開発手法が要因とみられ、BE STAGEにもその“東急らしさ”が表れている。
ミヤシタパークと同じ制度を活用した商業施設だが…
「BE STAGE」は25年3月より順次テナントをオープンした。岸記念体育会館跡地に誕生した施設で、原宿駅から徒歩3分ほど、渋谷駅から10分ほどの場所に位置する。明治神宮から見ると都道413号線の向かい側、代々木競技場の裏側にあり、目立たない場所だ。旧岸記念体育会館はスポーツ団体が事務所を置くなど、オフィスビルとして機能していた。
同地に関しては、21年に東急不動産や東急などが構成する「代々木公園STAGES」が公園の整備・管理運営を行う設置等予定者として選ばれ、事業化が進んだ。
区画の敷地面積は約4200平米で、商業施設は地下1階・地上3階建て、延床面積は約2400平米だ。建物は区画内の奥側にある。地方のPark-PFIではスターバックスなど、小規模の施設を設けることが多いが、BE STAGEは区画面積に対して規模が大きく、公園というより施設が中心だ。
規模の割に賑わいが無い
BE STAGEの1階にはカフェとレストランの計2店舗があり、2階はシューズブランド「ニューバランス」の店舗やイベントスペースなどで構成される。3階にはスポーツスクール、英会話教室などの教育施設のほか、民間事業者が運営するランニングステーションがある。公式サイト等では屋上をBBQスペースと記載しているが、現地では立入禁止となっていた。
同施設に関して、SNSでは「ガラガラ」「穴場である」といった意見も散見される。実際に訪れてみると、筆者も建物の規模のわりに賑わいが無い印象を受けた。公園部分のベンチやスケートボードパークには一定数人がいるが、建物部分は1階の飲食店・カフェを除いて人流は少ない。
三井不動産が宮下公園に建設した「RAYARD MIYASHITA PARK」(ミヤシタパーク)とは対照的だ。ミヤシタパークには若者や学生も多く、モールのように賑わっている。現状のBE STAGEを見ると、地上3階建てではなく、地方のPark-PFIのようにカフェだけにしたほうが適切だったのではないかと思われる。
集客力のあるテナントが無い
ミヤシタパークが渋谷駅の近くにあるのに対し、BE STAGEは原宿駅からやや離れており、前述の通り目立たない場所にある上、繁華街とは線路で隔てられている。また、ミヤシタパークのほうが規模は大きく店舗数も多い。BE STAGEの賑わい不足は両者の立地や規模が違うと言えばそれまでだが、テナントの集客力が低いことも要因のひとつだ。
ミヤシタパークには高価格帯の飲食店もあるが、それ以外にフードコートがあり、マクドナルドやスターバックスなどのチェーン店も存在する。特にスターバックスは屋上にあるため、若者や学生の憩いの場となっている。小売店はブランドショップが中心だが、飲食店は庶民的なテナントも多く、集客につながっている。
対するBE STAGEの飲食店の客単価はお昼時が2000円以上、夜は4000円以上とみられ、若年層を対象としていない。イベントスペースやランニングステーションのように、体験型施設が主体である点もミヤシタパークとの大きな違いだ。目的なしにふらっと訪れる施設ではない。
屋上をBBQ会場とする構想が実現しないのも、BE STAGEの認知度や集客力に課題があるためだろう。商業施設や百貨店の屋上にBBQ会場を設ける事例は多いが、BBQ会場はあくまで施設本体の集客力に依存している。
「オフィス街化」を目指す再開発
賑わいよりも機能性を重視するのは近年の“東急らしい”開発といえる。昨年頃からSNSでは「渋谷がつまらなくなった」「渋谷に若者が集まらない」などの言説が聞かれるようになったが、その背景にあるのは東急グループによる再開発だ。東急グループは2012年の渋谷ヒカリエを筆頭に、18年開業の渋谷ストリームや19年開業の渋谷スクランブルスクエア(東棟のみ、中央棟・西棟は31年度予定)、24年開業の渋谷アクシュなど駅周辺で再開発を主導してきた。
東急文化会館や東急百貨店東横店などの商業施設のほか、雑居ビル群を高層化して再開発を進めている。地上17階から34階をオフィスエリアとする渋谷ヒカリエのように、いずれも上層階にオフィスビルを設け、低層階を店舗・飲食店街とする構造だ。渋谷ストリームのように一部ホテルを設けるビルもある。そして低層階の店舗・飲食店は若年層ではなく、大人をターゲットにしたテナントが多い。
このような東急主導の「オフィス街化」が渋谷の変化を嘆く言説を引き起こしたと筆者は考えている。その背景には、ブルセラショップなど怪しい店が多かった時代に対する当時の若者のノスタルジーもあるだろう。センター街の賑わいは今も健在で若者が消えたわけではないが、再開発により渋谷の雰囲気は過去20年で大きく様変わりした。
とはいえ、こうした言説が巻き起こるなかでも、商業的には成功を収めている。渋谷駅周辺エリアのオフィス空室率は1%台で他のエリアより低く、賃料上昇にも寄与している。
「BE STAGE」に話を戻すと、目的外でふらっと訪れる人はなく賑わいを創出する能力には欠けるが、入居するテナントは施設の開業以来から営業を続けており、採算性には問題が無いとみられる。渋谷エリアでは今後も同様の施設が増え、シックな街へと変化していきそうだ。
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