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ミラノ・コルティナ冬季五輪のフィギュアスケート・ペアで金メダルを獲得した「りくりゅう」こと三浦璃来選手と木原龍一選手の関係に注目が集まっています。

2人の息ぴったりの演技や仲睦まじい姿が注目を集め、ネット上では「付き合っているのでは?」と、交際を推測する記事やSNSの投稿が相次いでいます。

こうした記事や書き込みについては、「余計なお世話」「誹謗中傷では」といった意見もあります。法的に問題ないのか、簡単に解説します。

●「推測」や「願望」の書き込みだけなら、法的責任は問いにくい

SNSに「あの二人は付き合ってるだろう」「付き合っててほしい」と書く行為は、多くの場合、ファン個人の「意見」「推測」「願望」といえるでしょう。この程度の表現だと、刑事責任や民事責任を問うのは、一般的には難しいと考えられます。

まず、名誉毀損罪(刑法230条)との関係では、仮に「付き合っている」と推測されるような表現でも、社会的評価を下げるとは言いにくいと思われます。したがって、名誉毀損罪は基本的に成立しないでしょう。

次に、民事上のプライバシー侵害の面です。プライバシー侵害とは、本人が公にしたくない私生活上の事実(または事実ではなくても、真実らしく受け取られる情報)を、本人の意思に反して公表するような場合に成立する可能性があります。

しかし「付き合ってるだろ」という書き込みは、あくまでも推測や願望にすぎないと考えられます。単なる推測や願望の表明だけでは、プライバシー侵害が認められにくいといえます。

●法的に問題になり得るケースとは

一方で、次のような場合は、刑事責任や民事責任(不法行為)が問題になり得ます。

一つは、推測ではなく「事実」として虚偽の情報を流す場合です。「〇〇のホテルで密会していた」「関係者から交際の事実を聞いた」など、具体的な虚偽の事実をでっち上げて拡散すると、第三者や本人が「真実だ」と誤信するおそれがあります。その場合、プライバシー侵害や名誉毀損として、民事上・刑事上、責任が問われやすくなります。

二つ目は、選手本人のSNSアカウントに「付き合ってるんですか?」「正直に言ってください」などと、連日リプライやDMを送り続けるような行為です。これは、相手の平穏な生活を脅かすものであり、不法行為に基づく損害賠償請求の対象になる可能性があります。

三つ目は、「付き合っている」という推測に便乗して、具体的な性行為を連想させる卑猥な言葉を書き込んだり、どちらかの容姿を貶めたりする場合です。このような書き込みは、名誉毀損罪、侮辱罪や民事上の不法行為にあたる可能性があります。

●法的に「セーフ」だからといって、やっていいわけではない

一つ一つの書き込みについて、法的には責任追及することが難しいからといって、そうしたコメントを続けていいわけではありません。

フィギュアスケートのペア競技は、大きな危険を伴う演技の中で、二人の信頼関係が不可欠です。その関係を、安易に「男女の恋愛」に矮小化し、性的な文脈で消費することは、アスリートとしての彼らへの冒涜になりかねません。

純粋に二人の幸せを願って発信している人も多いとは思いますが、本人たちが公言しているのであればともかく、憶測や願望を執拗に発信し続けることは慎むべきでしょう。

また、外野から「付き合ってるだろ」などという発言を過剰に繰り返すことは、選手同士に不要な気まずさを生み、信頼関係やコンビの雰囲気を損なうおそれがあります。最悪の場合、競技生活そのものに影を落とすいやがらせになりかねません。

SNS上の「付き合ってるだろ」といった書き込みは、一つ一つは法的責任は問われない可能性が高いと思います。それでも、そうしたコメントが無数に降り注ぐことで、アスリートの心を確実に削っていく側面があります。「法的にアウトかセーフか」よりも、観客側のモラルや、スポーツをどう楽しむかが問われているといえるでしょう。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士