“ブーメラン”にご注意!論点がズレる「お前だって」の罠【眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス】

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自分に対するブーメランに注意
【お前だって論法】

放った言葉がそのまま自分に返ってくる

夫婦げんかや兄弟げんかの場面でよく聞こえてくるセリフの1つに「お前だって」というのがあります。いわゆる「売り言葉」に対する「買い言葉」の常套句といってもよいくらいよく使われるワードですが、この「お前だって」を反論として用いるケースでは、相手に落ち度を指摘された側に加え、指摘した側にも同様の落ち度が認められることになります。こうした議論の展開のしかたを認知バイアスにおける「お前だって論法」、あるいは「ブーメラン効果」と呼んでいます。

下の図は「お前だって論法」を用いたよくある夫婦の会話の例です。妻の「食べ終わったら食器は片付けて」という主張に対し、夫は「お前だって部屋の電気をつけっぱなしだろ」と反論。妻はいい返すことができなくなってしまいました。反論に思い当たる節があったため言葉に詰まってしまったのです。

ただ、ここで注意したいのが「お前だって」に続く反論と、本来の話の趣旨が必ずしも一致しない場合があるということ。前述のケースであれば、「食器のかたづけ」と「電気を消す」のは直接的にはまったく関係のない話です。反論で痛いところを突かれても「今、何の話をしてたんだっけ?」と振り返る冷静さを保つことで、論点そらしを回避することができます。

「お前だって」の一言で立場が逆転

相手の主張がその言動と一致していない場合、
「お前だって」と指摘しかえすことで、論点をそらすことができる

自分の言葉がブーメランにならないように注意

受けた指摘に対し「お前だって」と反論して相手の落ち度に変えることから
『お前だって論法』や『ブーメラン効果』と呼ばれる

参考文献 Edward Damer, Attacking Faulty Reasoning: A Practical Guide to Fallacy-Free Arguments. Cengage Learning, 2008. Hans Hansen. “Fallacies,” in The Stanford Encyclopedia of Philosophy, edited by Edward N. Zalta, (https://plato.stanford. edu1archives1sum2020/entries/lallacies/), 2020. Bowell Tracy and Kemp Gary, Critical Thinking: A Concise Guide, Routledge, 2015.

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 認知バイアス』監修:高橋 昌一郎