「サイゼ、元の味に戻して」有名人のツイートが波紋…サイゼリヤ業績好調も、ファンの間で急速に広がる「味への違和感」
「味が良くない」「ありえないレベル」
値上げラッシュが日常茶飯事となった飲食業界において、あえて「値上げをしない」と宣言し、低価格なメニューを提供しているイタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」。その圧倒的な安さと美味しさで、長きにわたり多くのファンを獲得し続けてきたが、ここへきて風向きが怪しくなってきた。
〈サイゼリヤ、一律コストカットを感じさせる方向に味がリニューアルしていて困惑。カルボナーラはチーズの分量を減らしたのか生クリームのシャバい感じになり旨味が減りパンチェッタも質量ともによくなく、何故これでOK出されたのか理解できない。グラタンのペンネが全粒粉に変更、これも味が良くない〉
11月25日、サイゼリヤに対する「味のダメ出し」を自身のXに投稿したは、『ロマンポルシェ。』のボーカルで、DJやライターなどでも活躍する、掟ポルシェ氏だ。
この投稿には、約30万のインプレッション(表示回数)がつき、世間の関心を集めた。さらに同氏は立て続けにこう投稿している。
〈自宅近くのおいしかった店がたまたまダメになっただけなのかもしれないが、サイゼリヤファンとして今季の味の全面見直しはちょっとありえないレベルで、しばらく行くのやめようか迷うほど。蒸し鶏の香味ソースも鶏を冷凍のままカットしたような食感になっていたりワカメの感じも変わり味も薄く感じた〉
〈サイゼリヤのいいところはまず安さにあると思うが、今回の味リニューアルは100円値上げしてもいいから元の味に戻してほしいレベル。サイゼリヤファンとして切に願う。〉
実は掟ポルシェ氏に限らず、ここ最近、SNS上ではサイゼリヤに対する不満を吐露する投稿が増えているのだ。
味は「主観」のはずだが…
とはいえ、サイゼリヤの足元の業績動向を見ると、「客離れ」どころか、きわめて好調にある。
同社が10月9日に発表した2024年8月期の決算では、売上高は前期比22.5%増の約2245億円、営業利益は2倍の約148億円と、増収増益を達成。それも売上高2000億円超えは初、営業利益も過去最高となっている。
また、最新となる10月の月次営業情報によれば、既存店売上高は17.4%増、客数も14.5%増と、やはり好調をキープしている形だ。
味はあくまで「主観」――と考えると、SNSで「サイゼの味が落ちた」という趣旨の投稿が増えたのは偶然なのか。背景として挙げられるのが、度重なる「メニューの改変」だ。
「サイゼリヤはパスタや肉類、野菜など主要食材の原料原産地こそ公開していますが、細かな変更などは明らかにしておらず、味の具体的な変化は根拠を持って説明できるものではありません。ただ、SNSでの一連の投稿を見るに、おそらくここ数年続く、グランドメニュー変更が影響を与えていると考えられます」(飲食業界ジャーナリスト)
物価高や人件費・高熱費の高騰により、サイゼリヤも痛手を受けている。当然、コストカットは免れない。それでも定番メニューのひとつ「ミラノ風ドリア」を300円で提供しているように、値上げはあくまで行わない。
「安さ」こそがサイゼリヤの強み。そこで値上げに代わって行われてきたのが「メニュー削減」だ。
「選択肢が減る」哀しみ
今年10月16日に実施されたグランドメニューの改定では、人気商品「カリッとポテト」が愛知県から以西の地域を除き、販売終了。また6月には小さなフランスパン「ミニフィセル」が東京を中心とする一部地域で姿を消した。
このほかにもスパゲッティメニューの「大盛り」の終了やトッピング用粉チーズ「ペコリーノ・ロマーノ」の無料提供の廃止など、次々と人気のメニューに変化が起きた。昨年まではおよそ140品目あった通常メニューも、今や100品目ほどに減っている。
前出のジャーナリストが続ける。
「メニューの種類が多ければ多いほど、仕入れる原材料は増え、オペレーションも複雑になり、コストは高まっていきます。そこでサイゼリヤが価格維持のために考えついたのが、メニューを絞りこむことだったのでしょう。
この転換でサイゼリヤの強みである『安さ』は維持されたわけですが、今度は『メニューの選択肢が減る』ことによる不満が、顧客の間で顕在化しつつあります。とりわけ50年以上の歴史があるチェーンだからこそ、ファンの中には特定のメニューに愛着を持っている人も少なくない。
それだけにメニュー削減に違和感を覚えたファンも多いはず。その違和感が、サイゼリヤへの『味が落ちたのでは?』といった疑念につながっていると考えられます」
変わらない安さと、変わるメニュー。サイゼリヤが「値上げしない」という方針を貫く限り、ファンたちの議論は続きそうだ。
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