「登山×デジタル地図」に見るオープンデータの可能性
「私は民間企業でネットワークの研究をしていました。ルーターやファイヤーウォールとか、論文も書いていました。一方で大学時代にワンダーフォーゲル部に入り、そこから本格的に登山に取り組みました。3,000メートル級の一般的な登山をやっていたので、まあ中級ぐらいでしょうか。会社員になっても土日は休めるので、金曜日に山の用具を持って出社して、ちょっと早めに退社して山に行くとか、そんなことを続けていました」
「大学を出てからも山の仲間が欲しいので、地元の山岳会に入りました。若い人が中心で、会員は60〜70人ぐらい。そこで年に何度か発行する会報の係になったんです。技術的に上位の人は講師をやったりするんですが、会報なら楽そうだなと(笑)」
ー紙の会報ですよね?
「はい。会員から登山の感想と写真を集めて、ワープロソフトで編集して印刷していました。それも面倒だなあ、自動的に会報作れるシステムが作れないかなあと仲間と話をして、趣味でプログラムを組んでいたので、実際にやってみたわけです。インターネット経由で感想や写真を載せていって、あとはきれいに整形して印刷するだけというシステムを作りました。それが2003年ぐらいです」
ー今だったらブログなど手軽なサービスがありますけど、その当時にネット上で写真を共有するのは珍しかったのでは?
「まだSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が立ち上がったかどうかという頃です。ネット上で望むようなサービスは提供されていないので、自宅のパソコンを24時間稼働させて、山岳会の会員みんなが使えるようにしました。ホームサーバですね。最初は情報が少なかったのですが、定着してくると数百も情報が集まる。冊子にはできないのでCD−ROMに焼いて配布しました。会員がアクセスして日付を指定すると、登山の感想と写真がダウンロードできるようなウェブ上での利用も可能でした」
「ある程度、使ってもらえるようになって、こうした情報は山の中でとても価値があることを再認識しました。例えば今、山の上の方で雪がどれくらい積もっているか。雪が少なくて一度、溶けて固まるとアイスバーンになって滑落の危険があります。逆に雪があって、少し前に人が歩いてラッセルしてくれていると、その後をトレースすると歩きやすい。じゃあ今なら行けるぞ、となる。あるいは春から夏にかけて、高山植物が咲き始める。その見所の情報とか。そういうものを山岳会の中だけで共有しているのは、もったいないなあと思っていました」
自前プログラムからビジネスへ
ー少人数だと得られる情報も偏ります。
「人気の山っていうのがありまして、関東の山岳会ですから、八ヶ岳なんかは毎週のように誰かが行っている。そこら辺の情報は得やすいです。そうでないところは、せっかく記録を残していてもあまり役に立たない。あと他の山岳会の会報も回ってきて、どの山で、どんな岩場があって、何が危険かといった情報は参考になるし、読み物としては楽しい。けどリアルタイム性はないわけです」
