「品質工学」を経営主導で採り入れたらクレームが激減した
「不良を出さない意識が当社の文化」。11月30日に都内で開かれた品質工学会(東京都千代田区、谷本勲会長、03・6268・9355)の発表大会で、アルプス電気の天岸常務は技術の経営方針を明確に説いた。
異常とされ破棄するスイッチは、従来の検査なら合格するものもある。「合格なのに捨てるのはおかしいと、初めは問い詰められた」(天岸常務)が、出荷後の品質は劇的に向上した。
モノづくりの変革に真正面から向き合ったのは、製造業の激変がある。グローバル経済で生産が低コストの新興国へ移り、デジタル技術の進化で開発や製造の許容時間も短縮した。試行錯誤を繰り返す開発やサークル活動で品質を保つ従来の手法は、市場が求める開発のスピードや生産のコストダウンに応えられなくなっている。
天岸常務は「スイッチのクレーム数は激減し、信用も高まった。品質工学は経営の一端を担う。品質の管理にもかなりの資金をかけている」と説明する。
発表大会では同社の佐々木市郎シニアスタッフが、景気の悪い時期も粘り強く技術者教育する取り組みを紹介した。佐々木氏は「スイッチの異常を判定する予測手法は、人工知能(AI)の先駆けになる」と例える。三森智之主任技師も車載用ヒーター制御パネル製品の複雑化した形状を、品質工学の手法で手直しを少なく設計した実例を報告した。
多くの製造業はリーマン・ショック後の危機を、人員削減や事業縮小でしのいできた。技術の変革で乗り越えた同社のようなモデルは少ないのが現状だ。品質工学会の谷本会長は「マネジメント(経営)が技術の効率化を考えないと、モノづくりの構造変化に対応できない」と指摘する。
(日刊工業新聞社大阪支社・田井茂)
