ロッシの鹿島リポートvol.18「2017年シーズン戦力分析」

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王者として迎える今シーズンは、様々な敵と戦う1年となる。

元旦まで激戦を重ねた代償は大きく、選手たちのコンディションはまだ完璧ではない。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)参戦による疲労も看過できない。無論、サポーター・マスコミからのプレッシャーも避けては通れない。だがそれは、王者の宿命でもある。これらに打ち勝ってこそ常勝軍団だ。

フロントは今オフ、大型補強でスカッドの底上げを行った。チームには健全な競争意識と危機感が漂い、良い状態にある。

今回の鹿島リポートでは、基本システムの4-4-2を想定したポジションごとの戦力分析を行い、連覇がかかるシーズンを占っていきたい。

▼ゴールキーパー「ハイレベルな競争を勝ち抜くのは」

昨シーズン終盤に曽ヶ端準が見せたパフォーマンスはキャリアハイとも言える素晴らしいモノだった。背番号21の活躍無くして、クラブW杯での躍進は無かった。

今オフ、フロントは曽ヶ端と同等もしくはそれ以上の実力者の補強を目論んでいた。ACLへの参戦を見据え、更なる底上げが必要となっていたからである。そしてそのミッションを満点でクリアした。「韓国のファン・デル・サール」との異名を持つクォン・スンテがやって来たのだ。

鹿島アントラーズGKクォン・スンテ

前所属の全北現代ではACL優勝に貢献する等、その実力は折り紙付き。安定したセービングが魅力であり、周囲とのコミュニケーションが高まれば、不動の地位を築く可能性は高まる。

もちろん曽ヶ端も黙っていないはずで、最後尾のポジション争いはシーズンを通して続きそうだ。

▼センターバック「層の薄さが吉と出るか、凶と出るか」

昌子源、植田直通、ブエノ、町田浩樹の4人が揃うCBは、前線の層の厚さから比べると不安が残る。

今や不動のディフェンスリーダーとして君臨する昌子の成長ぶりは誰もが認めるところであり、本当に頼もしい存在となった。また、コンビを組む植田直通も昨シーズン終盤にポジションを奪い返し、逞しくなった。しかし、この2人に不測の事態があれば大きなダメージを負うのは間違いない。

クラブはセンターバックの補強を見送ったが、あえてそうしたという見方もできる。今シーズンは過密日程となるだけに、ブエノと町田の出場機会は昨季より増加するに違いない。

実践経験を積んでいく中で、両名の更なる成長に期待が持てる。特に町田は貴重なレフティーであり、大化けすれば非常に面白い。

▼サイドバック「左サイドは一転してストロングポイントに」

昨季は左サイドの層の薄さに不安を抱えていたが、一転してストロングポイントとなった。湘南ベルマーレから三竿雄斗の獲得に成功したからだ。

三竿雄斗は正確な左足を武器とするクロッサータイプ。ドリブル突破とセットプレーのゴールセンスに定評のある山本修斗とは違った特長を持つ。

昨季は山本がフル稼働を強いられたが、その負担は大いに軽減されるだろう。西大伍が君臨する右サイドも伊東幸敏の成長ぶりが頼もしい。誰が出ても一定以上のパフォーマンスが期待できる。

▼ボランチ「レオ・シルバが更なる高みへ導く」

柴崎岳がスペインへ旅立ったが、的確な補強で背番号10の穴を埋めた。アルビレックス新潟から加入したレオ・シルバだ。

新潟時代のシルバは文字通りの「王様」だった。攻守両面で絶大なる存在感を示し、リーグ最強ボランチとしてその名を馳せていた。鹿島でもそのプレゼンスは圧倒的で、富士ゼロックス杯でもボール奪取からの展開に凄みを見せていた。チームをワンランク上のレベルへ導く存在となるに違いない。

小笠原満男、永木亮太といった既存戦力も健在を示しており、質の高いターンオーバーが可能となった。ボランチの出来が指揮官の描くトランジションサッカーを左右するが、問題はなさそうだ。

▼2列目「競争は激化。チームに貢献し続けることが肝要」

2列目は多士済々のタレントが揃う。

遠藤康、土居聖真が軸となりそうだが、新加入のレアンドロと金森健志、スキルフルな中村充孝も虎視眈々とレギュラーの座を狙う。鈴木優磨も両翼に対応可能なだけに、全員が危機感を持っていることだろう。

ゴール、アシストと目に見える結果だけではなく、「タメをつくる動き」や「献身的な守備」も非常に重要なファクターとなる。鹿島にはエゴイストは要らない。常にチームへ貢献できるハードワーカーが重宝されるのは不変である。

▼フォワード「オールラウンダーが顔を揃える」

今季も伝統の2トップが採用されるが、金崎夢生と新加入のペドロ・ジュニオールがファーストチョイスとなりそうだ。両者ともオールラウンドなプレースタイルと推進力が強み。前者は今季も柱となりそうで、後者は連携が深まれば2桁ゴールはマストとなる。

プレシーズンでゴールを連発している鈴木優磨は、現状では3番手。しかしそれは、途中出場でも決定的な仕事ができることの裏返しでもある。

勝負強さとメンタルの強さはチーム随一で、スタメンで起用されても結果を残すだろう。様々なメディアで注目を浴びる背番号9が掲げた目標は「15ゴール」。彼のポテンシャルを考えれば問題なくクリアできる数字である。サポーターからの期待も当然高いが、それを力に変え、更なる高みへ飛躍する日は近い。

2017/02/19 written by ロッシ

筆者名:ロッシ

プロフィール: 1992年生まれ。1998年フランスW杯がきっかけでサッカーの虜となる。筆者の性格は堅実で真面目なため、ハビエル・サネッティ、長谷部誠、ダニエレ・ボネーラ、アルバロ・アルベロア、マッティア・カッサーニにシンパシーを感じている。ご意見・ご感想などありましたら、ツイッターアカウントまでお寄せください。
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