エヴァとのタイアップって、そんな売れるのか!?『販促会議』11月号では今までエヴァンゲリオンタイアップしてきたマーケティングを徹底調査しながら、どうしたら売れるのか、どうやったら効果的なのかを分析。エヴァタイアップ、売れるんです。

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11月17日に、ついに『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 』が上映されますね。
前回の『破』では、ぼくが17年愛を注いできたアスカさんが大変なことになっちゃいまして、もう気も狂わんばかりでしたが、これでやっと解放されま……されますよね?
そうかー、17年か。そんなにたったんだなあ。
でもなんか古い感じしないんですよ。
理由は色々ありますが、おそらくそのひとつは、コンビニや薬局などあちこちでエヴァを見かけることだと思います。
ローソンのキャンペーンをはじめ、どこかしこで見かけるエヴァ。
おいおい、エヴァをつけたらそんなに売れるのか?!
売れるんです。

「検証!『エヴァンゲリオン』起用キャンペーンの効果」と題した特集が組まれたのが、雑誌『販促会議』11月号です。
実際にエヴァを起用したらそんなに売れたのだろうか。
なぜこんなにもエヴァを起用するところが増えているのか。
実際の売上をチェックしながら、しっかり検証しています。

まずエヴァ(TV版の方です)をキャンペーン起用した先駆けになったのが、UCC缶コーヒー。
1997年に「エヴァ缶」と呼ばれる、エヴァのキャラクターをプリントしたコーヒーを販売。瞬く間に話題になり売り切れ続出しました。
当時買ったことのある人も多いのではないでしょうか。取っている人もいるんじゃないでしょうか。
はい(挙手
今もUCCはコラボキャンペーンをやっていて、箱根のあちこちに専用自販機があるくらい。10年以上に渡るコラボなんですね。
テレビアニメの作中にUCC缶コーヒーが出たのを観て、担当者が旧劇場版(今の「ヱヴァ」ではないほうです)にあわせてタイアップしたのがきっかけ。
……なんですが、今となっては当たり前のこのコラボ、冷静に考えてみて欲しいんですよ。
当時、UCCの缶コーヒーを若者が買っていたか?
買ってないんです。話によると当時のメイン購買層は40代。コンビニにUCC缶コーヒーはありませんでした。
しかしこのコラボをきっかけに、10代の購買層が爆発的に増加。
ただ絵をくっつけて売ったのではなく、劇場公開、DVD発売などにあわせてキャンペーンを組みました。
実にそのイラスト数55点。
そんなにあったの!? ひょっとしてフルコンプしてる人いる?
その後も、抱き枕、テレホンカード、フィギュアなどの抽選付きで、今もキャンペーンが続いているロングセラーコラボです。
ユニークなのは、これをきっかけにプロダクトプレイスメント、映画の作中に本物のUCC缶コーヒーが出てくる契約も結んでいます。
どのシーンか覚えてますか?

その他に個人的にインパクト絶大だったのは、シックのひげそり。
だって、ゲンドウがひげ剃るんだぜ、笑顔で。
大笑いしました。これはTV版『エヴァ』ではなく『新劇場版ヱヴァ』の方です。
もうなんかゲンドウがひげ剃っただけでツッコミどころ満載。これが見事に若い層の注目を集めました。
20代から30代のメインターゲット層って、ひげ剃る時にやっぱり電気カミソリなんですよ。ぼくもです。
なので、T字カミソリなんて見向きもしないわけですよ。嫌いなんじゃなくて、使う必要がそもそも無い。
そこで、みんなのお父さんともいえる(いや言えないか)ゲンドウが笑顔でひげそってみてごらんなさいよ、そりゃ見ちゃいますよ。
もちろん「ゲンドウやレイが爽やかに笑うわけがない」という批判もありましたが、それすらも口コミとして広まる一端なんです。
カミソリ市場がマイナスの低迷の中、プラス3.7%の増加になりました。

そして、買いやすさで抜群だったのがサンテFX。目薬ですね。
エヴァンゲリオンは色が重要です。初号機は紫、弐号機は赤、零号機がオレンジ、などです。
これをうまく配色し、デザインしたサンテの目薬。すごいかっこいいんですよ。
サンテといえば「キター!」のCMでおなじみですが、これをキャラごとに配置。シンジ君なら「キタ…!」レイなら「キタ。」
あー、キャラ出てるわ。よくわかってるわ。
サンテ目薬といえば男性の爽快目薬、というイメージですが、これで女性購買層もアップ。
実に前年比25%アップ。秋葉原のマツモトキヨシでは2500%アップというとんでもない売上を記録しました。

その他にも、NTTドコモがタイアップでスマートフォンを開発していますが、それがネルフの支給品になるというユニークなタイアップもあります。
またANAではAR(拡張現実)を利用し、スマートフォンで見ると羽田空港で実物大エヴァが動く、というファンならワクワクな企画で総額1億円の増収効果がありました。
他にもローソン、ピザハット、富士急行、ユニクロ、トヨタ、カシオ、JRA、モンテローザなどなど、エヴァンゲリオン(ヱヴァンゲリヲン)とのタイアップをしてきた一覧がこの本に掲載されています。
めちゃくちゃ多いんですが、確かに見たことがある。JRAのエヴァ馬券とかずるいよねほんと。面白すぎるよ。

さて、では「何でもかんでもエヴァをつければ売れるのか」。
そうではありません。
消費者は馬鹿ではない、タイアップするにはきちんと策を練る必要があることが分析されています。

まずエヴァがタイアップで成功している理由の一つとして、口コミ効果が挙げられています。
90年代まだネットが普及していなかった頃、アニメファンは交流するのが非常に難しい状態でした。
しかしエヴァのアニメ放映にあわせ、どうしても話したい、という欲求がファンにおき、ニフティサーブが一気に盛り上がったり、インターネットの普及にあわせてニュースグループや掲示板などが組まれたりしました。
この作品は「共有したいと思う作品」です。
それは今も同様で、面白いものを、興味深いものを見たらTwitterやmixiで人は書きます。
ゲンドウがヒゲソリしてたら、そりゃ誰かに話したくなりますよ。この話題性の効果はしっかり計算する必要があります。

次に、限定品であること。プレミア感は非常に重要です。
コンプする熱心なファンじゃなくても、今しか手にはいらない、というのは非常に大きな原動力。
UCCが成功したのも、限定缶を何種類も出し続ける努力あってのものです。
限定のフィギュアなどはそういう面ではファンが買う原動力にもなりますが、同時に買っても邪魔になる、という意識で敬遠される諸刃の剣であることも書かれています。

そして、これはエヴァ独自のものですが「センスがよい」ということ。
メインターゲットになっているのはエヴァのコアファンだけではありません。
今エヴァブランドは、他の有名ブランドとコラボをして、以前も紹介した「EVANGELION STORE TOKYO-01」でも様々なグッズを販売していますが、ようはエヴァはなんとなくしかしらないけど、そのブランドのファンでかっこいいデザインだから買う、という人も増えているのです。

たとえばこういうコラボをやっているアニメだと「ガンダム」と「ワンピース」。
ガンダムのイメージは「かっこいい」。ワンピースのイメージは「おもしろい」。
エヴァはというと「センスのある」ブランドだとこの本は書いています。
ファン側にしてみても、実際に使えるエヴァンゲリオングッズが欲しいわけです。
となると、どどーんとアスカの顔の乗っているTシャツはちょっと着られない。僕は買うけど。
それよりも、一見わからないけどかっこいいデザインのスマホやメガネなどを使いたい。ぱっと見わからないけどかっこいいTシャツを着たい。
実は見る人が見たらそれはエヴァだとわかる。
あるいは「このTシャツの柄はこういう意味があって」と話したくなる。
そういうグッズが強く求められていることが書かれています。
サンテの目薬やドコモのスマホは見事にそれに応えていますね。

買っているのはリアルタイム世代ではありません。
中には全然エヴァを知らない人もいます。
しかしタイアップにタイアップを各社が意欲的に、効果的に重ねることで、消費者の裾野が広がります。

コアユーザーだけではなく、多くの人に買ってもらうためのエヴァンゲリオンタイアップ術。
同じ事はAKB48や初音ミクなどのタイアップにも言えます。
エヴァタイアップの歴史資料としても読む価値ありますよ。

ところで、日テレの巨大綾波レイスライダーには「うわあ」と素で声だして驚きました。
東京・汐留 日テレタワーに超巨大、綾波レイ現る!!
驚かせたもんがちだよなー。だって話題にしちゃんもんこんなん。Twitterでつぶやいちゃうもん。
エヴァは消費されるのではなく、話題の連鎖の起爆薬になっているようですよ。
(たまごまご)