【判決】「殺す、殺す、殺す」と女子高生を脅した被告の「わいせつ目的ではない」という主張の“中身”
最後まで「わいせつ目的ではない」と
7月29日──、3人の女性に対する不同意わいせつの罪に問われた岡陽介被告(46)の控訴期限が切れ、「懲役4年(求刑5年6ヵ月)」の実刑が確定した。’26年7月14日、千葉地裁で開かれた判決公判で池田知史裁判官によって言い渡された。
裁判では、女性を恐怖や睡眠薬で抵抗できないようにしてからわいせつな行為に及ぶ、岡被告の卑劣な犯行が明らかになった。しかし、被告はことごとく、「覚えていない」「わいせつ目的ではない」などと主張し続けていたのだ。彼は何をもってそう主張していたのか。裁判を振り返る。
2月16日の初公判で読み上げられた起訴状などによると、岡被告は’25年5月の朝、電車内で女子高生Aさん(当時16歳)のスカートの中に手を入れるなどのわいせつな行為に及んだ。犯行中に「殺す、殺す、殺す。騒いだら殺すぞ。ナイフを持っているからな」と背後からAさんを脅して、抵抗できないようにしていた。
また同じ’25年5月には、マッチングアプリで知り合ったBさん(当時23歳)にも、飲み物に睡眠導入剤を入れて意識をもうろうとさせたうえで、衣服の中に手を入れるなどのわいせつな行為に及んでいる。
Bさんと会うのはこの日が初めてだったという。1万円の謝礼を支払う約束で会って焼き肉屋で食事をしたが、Bさんがトイレに立った隙にしょうゆ差しに入れて持ち込んだ睡眠導入剤をBさんの飲み物に入れた。その後、バーの個室に移動し、犯行に及んだ。
さらに同年7月の夕方には、電車内でCさん(当時20歳)の衣服の中に手を入れるなどの、わいせつな行為に及んだ。このときもCさんに対して「殺すぞ」などと脅していた。
岡被告は各犯行について「間違いありません」と罪を認めた。ただ、これは「各犯行に関する防犯カメラ映像に映っている犯人が自分である」ことを認めるという意味で、「服用していた睡眠導入剤の影響で、各犯行の記憶がないか、はっきりしない部分がある」と主張。岡被告は、自身には睡眠障害があり、「20年近く睡眠導入剤を服用している」と説明していた。
睡眠導入剤は「本音を聞きたかった」から
岡被告はなぜ、次々と卑劣な犯行に及んだのだろうか。
公判で岡被告がまず訴えたのは、当時勤務していた飲食店の劣悪な環境だった。
「直属の上司は月に200時間以上の残業をしているような職場で、私自身もほとんど休みがありませんでした。また仕事中に全治3ヵ月の骨折をし、ギプスをして生活する状況でも仕事を休むことができなかったのです。なんの配慮もなかったことから会社に対する不信感がかなり強く、精神的にそうとう追い詰められていました」
さらに、当時同居していた母親との関係も悪く、「気が休まる場所がなく、日増しに服用する睡眠導入剤の量が増え、意識がもうろうとしていることが多かった」のだという。
そして、AさんとCさんに対しての犯行を覚えていない理由として、事件当時の自身の状態をこのように説明していた。
「朝、起きたら買った覚えのない食品が大量に置いてあったり、気づいたらまったく知らない場所にいたことがありました。また、これも断片的な記憶でしかないんですが、電車内で喧嘩をしたこともあります」
岡被告によると、「大量に服用した睡眠導入剤のため、まったく意識がないまま行動していることがあった」そうだ。そういう状態でAさんとCさんへの犯行に及んだため、わいせつ目的ではないという説明だった。
しかし、Bさんに対する犯行は断片的には覚えているという。Bさんの飲み物に睡眠導入剤を入れたのはある目的があったのだと、こう振り返った。
「睡眠導入剤を飲ませることによって、嘘がつけなくなったり、本音の部分が見えたりして面白いんです。過去にも職場で同僚の男性にこっそり飲ませたりして、言い方は悪いんですが、遊んでいました」
弁護人が「なぜBさんの本音を知りたいと思ったのですか」と質問すると、次のように答えていた。
「私自身もそうなんですけど、やっぱりマッチングアプリでは仕事や出身といったプロフィールが適当だったりするんです。薬を飲んだら、どういうふうに話が変わるんだろう、本音が出るんだろうっていうのを知りたいっていう好奇心がありました」
そして睡眠導入剤を飲んだBさんから「男性の体に興味がある」という“本音”が出たことが犯行につながったと説明。睡眠導入剤を飲ませたのはわいせつ目的ではないと主張したのだ。
「女子に対して憎しみを持っていた」とも
これを聞いた検察官は、怒りからかメガネを外して机に置くと、厳しい口調で追及した。
検察官「本心が聞きたいから、飲ませようと思ったって言いましたね。それを聞いて信じる人がいると思いますか?」
岡被告「まあ僕のほうは実際そうなので、そうとしか言えません」
検察官「私が聞きたいのは、その話を聞いて『なるほどね』って信じる人がいると思いますかってことです」
岡被告「一般的には少ないのかなと」
検察官「少ない? 少しでもいると思いますか」
岡被告「いるんじゃないですか」
また、岡被告は、電車内でAさんやCさんにわいせつな行為に及んだ動機のひとつに「過去に女子高生から性被害を受けたことがあり、そのトラウマから女子高生に対して憎しみを持っていた」と述べていた。
被告によれば、当時20歳だったCさんは、若く見えたため無意識の状態で女子高生と認識したのではないかという。意識のないまま徘徊し、女子高生に見える女性に対して「復讐」目的で性加害をしたというのだ。
このように、裁判で岡被告はかたくなにわいせつ目的で犯行に及んだことを否認しつづけた。論告弁論ではAさんと示談が成立したこともあって、弁護人は「懲役3年6カ月が相当」と主張。しかし、岡被告は控訴することなく判決を受け入れたのだった。
最終陳述で岡被告は、被害者への謝罪の言葉を述べていた。さらに、この勾留中に睡眠導入剤との縁が切れたことや母親との関係が改善されたとして「これを機に今後は真面目に生きていきたい」とも語っていた。言葉どおり、服役を終えて社会復帰した際には、今度こそ罪を犯さずに日常生活を送ることができるだろうか。
取材・文:中平良
