覚醒剤使用の女性2人、克服への“本気度”は…証言に立ったのは夫と意外な男性だった【裁判傍聴記】
茶髪のA被告(44歳)はアイラインが濃く、瞳が大きな女性だった。
夫と中学生の息子との3人暮らし。
夫と一緒に歩いているところを職務質問されて、A被告だけが尿から覚醒剤成分が検出された。
警察官には「BARで知らない男性におごってもらったテキーラに変な薬が入っていたのかも。急にテンションが上がった」と。覚醒剤取締法違反で前科2犯。
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「別れるつもりはありません」
裁判では、A被告の夫が証人に。
――事件についてどう思いますか?
「とても残念です。別れるつもりはありません。社会復帰するまで妻を支えます。子どもがいるし、離婚を考えたことはありません。妻からは反省の言葉を何度も言われました」
――妻が覚醒剤を使用していたことに気づいていましたか?
「私は夜勤が多くて、妻の変化に気づけませんでした」
――あなたが覚醒剤を使用したことは?
「ありません」
――どうやって止めさせますか?
「悪い人に会わせない。コミュニケ―ションを取って本人を監視します」
――妻はなぜ使ったんだと言いましたか?
「負けてしまったんだと」
――使うとどうなるのか、聞きましたか?
「興味がないので聞きませんでした」
――なぜ使うのか、使うとどうなるのか、それが分からなくて監督できるんですか?
「……」
妻の覚醒剤使用を知らなかったと話す夫は、検察官と裁判官からの質問に、かなりとまどっているように感じた。
A被告に対する被告人質問が始まった。
――使用しなくちゃいけない理由はあるんですか?
「ありません。友人に勧められた」
――でもほとんどの人はやらない。あなたはなぜやっちゃうんですか? 普通の人は断るでしょ。
「……」
――快感ですか?
「快感というより……疲れを忘れられるというか、嫌なことを忘れられるとか」
――反社会的組織の資金源になるんですよ。
「……はい」
――ご主人の証言を聞いてどう思いましたか?
「申しわけないと思いました」
22年前と14年前に逮捕歴
A被告は22年前に覚醒剤とMDMAで逮捕。刑務所から出てしばらくして再開して14年前に再び逮捕された。密売人から購入したという。
裁判官がA被告に質問する。
――なぜ職務質問されたと思いますか?
「今思うと様子がおかしかったのかな、テンションが上がっていたのかな、と」
――止めたいという気持ちはあるのですか?
「もちろんです」
――先ほどご主人に厳しいことを言いましたが、ご主人が怒られる筋合いはまったくないので、
「……はい」
検察官の求刑は懲役2年。
「これまでに覚醒剤使用で2度の懲役刑。親和性と依存性が高い。覚醒剤仲間の存在があり、再犯の可能性が高い」
弁護人は以前の逮捕は14年前だと主張。メンタルクリニックに通って、治療を行っていると。A被告は「二度と覚醒剤に手を出さないと誓います」
裁判官が下した判決は、懲役2年執行猶予4年。
「覚醒剤使用の前科があり、服役したこともあるのに、再び使用。常習性は深刻。しかし夫が監督すると証言し、いま一度社会の中で更生を図ることを期待する」
裁判官がA被告を説諭した。
「絶対に止めると宣言するのは、正直なところ不安があると思います。ここで止めることができるかどうかで、人生が大きく変わると思います」
判決の日、「監督する」と証言した夫は傍聴席にいなかった。
23歳女性の裁判では、飲食店の客が証人に
B被告(23歳)は千葉市の自宅で、交際相手の男性と一緒に逮捕された。逮捕された時、交際相手がベランダから覚醒剤入りのビニール袋を投げ捨てた。
B被告は丸顔で小柄な女性。化粧っ気がなく、ショートカットの後ろ髪を青色のゴムバンドで結んでいた。
弁護側の情状証人が証言に立った。情状証人とは、情状酌量(被告人の罪を軽くする)のために弁護側が呼ぶ証人のこと。「こんなにいい人だから罪を軽くしてください」と主張するのが目的ではない。
主に被告人の更生を支援して、社会復帰に協力。今後を見守り、再犯防止のための監督や指導を担う。
覚醒剤取締法違反は、再犯率が高い犯罪だ。警察庁によると、令和6年の再犯率は66.6%にも及ぶ。それだけに再犯の可能性が高いかどうかは、量刑を左右する。他の犯罪に比べて、被告人をサポートする情状証人の存在が大きいともいえる。
家族(両親や配偶者、兄姉など)や、勤務先の上司などが情状証人になることが多い。
B被告の情状証人は知人の男性だった。スーツ姿のぽっちゃり体形の男性で、40歳前後に見えた。B被告と知り合ったのは3年前。拘置所に差し入れをしたり、悩みを聞いたりする仲で、面会も4回したという。
B被告が妊娠した時に病院について行ったり。頼まれて保護観察官と会ったこともある。住む場所がない状態なので、証人が住んでいるマンションに住む予定。社会復帰した後は、証人が勤務する会社の社長に話して、勤めさせてもらうことになっている、と。
2人が知り合ったきっかけを聞かれて、「飲食店の従業員と客です。飲食店とは接客業。今後、親代わりになれれば」と答えた。B被告本人によれば、両親は亡くなっている。父親は前科十何犯だったと。
「役に立ちたい」という気持ちは伝わってきたが、情状証人としてどれだけ有益だったのかは分からない。「親代わりになりたい」という言葉にも違和感があったが…。
13歳から覚醒剤
被告人質問が行われた。
「(覚醒剤が)そんなに悪いことだとは思いませんでした。覚醒剤を使用している男性と一緒にいることが多かったので」
13歳から覚醒剤を使い始め、19歳の時に逮捕された。保護観察処分を受けて、2年間は守れた。
覚醒剤は当時の交際相手が横浜の密売人から購入。B被告自身が直接買ったことはないという。
検察官の求刑は懲役1年6月。B被告は落ち着かない様子で目をショボショボさせたり、うつむいたり、足を伸ばしたり。弁護士は「再犯の可能性はない」と主張した。4か月の拘留中、覚醒剤の離脱症状はなく、依存度は中程度。
B被告の最後の発言は、声が小さくて聞き取れなかった。
論告弁論が終わった後、女性弁護士と証人の男性が法廷の外で会話をしていた。
「これから先生の所へ行くんでしょうか」
「今日は大丈夫です。もう十分お役目は果たしていただいたので」
「実際どうなんですか? どっちでもいいんですけど」
「執行猶予がつくような気はするんですけど……」
2週間後、言い渡された判決は懲役1年6月執行猶予4年。裁判官が執行猶予付き判決を選択した理由を説明した。
「被告人はまだ若く、周囲に手助けをしてくれる人もいる」と。
退廷時、B被告は安どした様子で、傍聴席の最前列にいた男性に会釈した。証人になった男性だ。
その後、傍聴していたビジネスマンらしき男性2人がトイレで雑談しているのが、偶然聞こえてきた。
「あの女、絶対またやるよな」
「全員、そう思ってるよね」
文/青山泰 内外タイムス

