【市村 敏伸】取引価格は前年の約半額に大幅下落…なぜ今年のうなぎは安いのか?素直には喜べない「豊漁」の実態
今年のうなぎが安い理由
もうすぐ土用の丑の日だ。そして、今年のうなぎは安い。
総務省の小売物価統計によると、「うなぎかば焼き」100gあたりの価格(2026年6月時点)は1455円と、前年同時期と比べて100円ほど安い。店頭の動向を伝える報道を見ていても、昨年より1割ほど価格を下げての販売が広がっているようだ。
物価高騰が常のご時世のなか、なぜうなぎは安くなっているのか。大きな理由と考えられているのは、昨シーズンのシラスウナギ漁が豊漁だったことだ。
よく知られているように、流通しているうなぎのほとんどは養殖モノだ。だが、うなぎの卵を人工的に孵し養殖する完全養殖のハードルは高いため、シラスウナギと呼ばれるウナギ稚魚を自然界で採捕し、それを池で育てるというスタイルが一般的である。
2025年漁期はこのシラスウナギがよく採れた。各都府県での採捕量の報告をまとめると、2025年漁期の採捕量は18.3トンとなり、2024年漁期から3倍以上に増えた。その結果、シラスウナギの取引価格も大幅に下落し、水産庁によると2025年漁期の取引価格は1kgあたり130万円と、前年漁期の約半額まで落ちた。
突然、採捕量が増加した理由は定かではない。国内で採捕されるニホンウナギは太平洋を回遊する魚種であり、その生態にはいまだ謎も多い。
いずれにせよ、手頃な価格でうなぎを楽しめることは多くの消費者にとって福音であろう。いつもより頻繁にうなぎの美味を楽しめることを喜んでいる読者も多いことと思う。
本当に「豊漁」なのか
だが、こうした「豊漁」の報道に接した際に、一度立ち止まり冷静に考えたいことがある。「これは果たして本当に豊漁なのか」ということだ。
筆者は昨秋、サンマの豊漁報道に際して、「長期的に見れば不漁であることに変わりない」ということを指摘した。そして、昨シーズンのシラスウナギ漁についても、おおむね同じような問題があるように感じている。
上のグラフは、水産庁が公表しているシラスウナギの採捕量の推移を示したものだ。一目で分かるように、過去数十年間で採捕量は急坂を転げ落ちるように減少した。豊漁と言われている昨シーズンは18トンの採捕量があったが、それでも20年前と比較すると少ない。
果たして、このデータを見てわれわれは何を思うべきか。「豊漁で安くなってよかった」なのか。むしろ、「どうしてここまで減ったのか」「この数を回復させるためには何が必要か」を改めて考えるべきではないだろうか。
ウナギは絶滅危惧種である
まず明確にしておくべきは、ウナギがれっきとした絶滅危惧種であるという事実だ。環境省のレッドリストは、ニホンウナギを「近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの」に分類し、国際自然保護連合もニホンウナギを絶滅危惧種に指定している。
先にシラスウナギの採捕量がどれだけ減ったのかを示したが、養殖のために池に入る稚魚だけではなく、いわゆる「天然ウナギ」の漁獲量も激減している。
下のグラフはその推移を示しているが、その減り幅はシラスウナギよりも明らかだ。
先に説明したように、ウナギの生態には謎も多い。そのため、海や河川の環境変化などが採捕量や漁獲量が減少した原因とも言われるが、それだけでは長期的な減少傾向を説明できない。多くの専門家は、ウナギの乱獲が減少の原因であると指摘する。
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