【曽和 利光】なぜ企業は「ビズリーチ」でスカウトした”即戦力”を書類選考で落としまくるのか…雑な採用活動を続ける「企業の裏事情」
スカウトしたのはそっちでは?
「あなたのご経歴に大変興味を持ちました」
「ぜひ一度お話しできませんか」
「カジュアルに情報交換させてください」
スカウトメディアを通じて、こうしたメッセージを受け取ったことのある人は少なくないでしょう。よく知られている代表的なサービスとしてビズリーチなどがありますが、こうしたサービスの普及によって、企業の採用活動は大きく変わりました。
かつての中途採用は、求人広告を出し、応募を待ち、応募してきた人の中から選ぶという「待ちの採用」が中心でした。しかし、いまは企業が自ら候補者を探し、直接声をかけることができます。これは、採用活動における大きな進化でした。
企業にとっては、まだ転職を強く考えていない人材にも出会えるようになりました。求職者にとっても、自分では想定していなかった会社や仕事から声がかかり、キャリアの可能性が広がるようになりました。スカウトメディアの登場自体は、採用市場にとって非常に良い変化だったと思います。
ただ、その一方で、求職者側からは次のような不満も聞かれるようになりました。
企業からスカウトが来たので返信した。職務経歴書も整えた。日程も調整した。
ところが、書類選考であっさり落とされた。
あるいは、「カジュアル面談」と言われて行ってみたら、実際には従来の普通の面接だった。「なぜ当社を志望したのですか」と聞かれ、「いや、そちらが会いたいと言ってきたのではないですか」と感じた、という話もあります。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
両者の認識にズレが生じている
結論から言えば、問題の多くはスカウトメディアそのものにあるのではありません。ビズリーチなどのサービスは、あくまで企業と候補者が出会うための場です。問題は、それを使う企業側の採用設計が粗いことにあります。
まず前提として、スカウトは選考通過や内定を保証するものではありません。
企業側からすれば、スカウトは「応募喚起」の手段です。候補者の登録情報や職務経歴を見て、「可能性がありそうだ」と判断し、まず接点を持つ。その後、正式に書類選考や面接を行い、採用基準に照らして判断する。企業側の理屈としては、これは一応成り立ちます。
しかし、求職者の受け止め方は違います。
「あなたに興味があります」と言われれば、多くの人は「少なくとも自分の経歴を見たうえで、一定程度は合いそうだと思ってくれたのだろう」と考えます。忙しい仕事の合間を縫って返信し、場合によっては職務経歴書を更新し、面談日程を調整します。
それなのに、いざ応募したら「書類選考の結果、お見送りです」となる。しかも、理由がよくわからない。そうなれば、「では、あのスカウトは何だったのか」と感じるのは自然です。
これは企業の意図と、感情上の納得感がずれている問題です。
企業側は「スカウトは応募の案内にすぎない」と思っている。求職者側は「企業から名指しで関心を示された」と受け止めている。この認識のズレが、モヤモヤの出発点です。
経歴を読んでいないケースも…
もう一つ、企業側の内部事情として大きいのは、スカウトを送る人と、選考で判断する人が違うことです。
たとえば、採用担当者や外部の採用支援会社が、スカウトメディア上で候補者を検索します。年齢、職種、業界、経験年数、キーワードなどで絞り込み、「この人は可能性がありそうだ」と判断してスカウトを送る。
ところが、実際に応募が来ると、現場責任者や面接官がより細かく職務経歴を見ます。そして、「この経験は少し違う」「即戦力とは言いにくい」「今回のポジションには合わない」と判断する。
つまり、入口では広めに声をかけ、出口では狭く判断しているのです。
もちろん、採用活動では一定の見極めが必要です。声をかけた相手を全員通すべきだ、という話ではありません。
しかし、あまりに粗く声をかけてしまうと、求職者から見れば「ちゃんと経歴を読んでいないのではないか」と映ります(そして、実際にちゃんと経歴を読んでいないケースもあります)。
採用担当者は母集団を増やしたい。現場はぴったり合う人だけに会いたい。この両者の目線がそろっていないと、候補者だけがそのしわ寄せを受けるというわけです。
焦りが雑なスカウトを生む
もちろん企業側にも事情はあります。
いまは採用難の時代です。求人を出しても応募が集まらない。現場からは「早く採ってほしい」と言われる。経営からは「このポジションはいつ埋まるのか」と問われる。採用担当者としては、まず候補者との接点を増やさなければなりません。
その結果、スカウトの数がKPI(最重要指標)化されることがあります。何通送ったか。何人から返信が来たか。何人を面談に呼べたか。こうした数値を追うこと自体は悪いことではありません。
しかし、数だけを追いすぎると、「誰に、なぜ送るのか」が薄くなります。
候補者の経歴を丁寧に読み込むより、検索条件に当てはまった人に広めに送る。個別の文面を作るより、汎用的なテンプレートを使う。結果として、「ご経歴に魅力を感じました」「ぜひ一度お話ししたいです」という、誰にでも当てはまる文面が量産されます。
しかし、求職者もそこまで鈍感ではありません。自分のどの経験を見て声をかけているのか。本当に自分に関心があるのか。単に検索に引っかかったから送っているだけではないのか。そうしたことは、文面からかなり伝わります。
スカウトは、便利な一斉配信ツールではなく、候補者に対する「招待状」です。招待状が雑であれば、その会社そのものが雑に見えてしまいます。
企業が考えを整理できていない
スカウトされたのに応募したら断られる。カジュアル面談と言われたのに普通の面接になる。企業側から声をかけたのに、候補者にばかり志望度を求める。
これらの背景にある根本原因は、企業側の「ターゲット」が定まっていないことです。
ここで言う「ターゲット」とは、いわゆる「求める人物像」とは違います。
多くの企業は、求める人物像については考えています。「論理的思考力がある人」「主体性がある人」「法人営業経験がある人」「マネジメント経験がある人」「カルチャーフィットする人」などです。これは、「どういう特性の人が欲しいか」という話です。
しかし、採用で重要なのは、その次です。そういう特性を持つ人を、どこから探すのか。どの業界にいるのか。どの職種にいるのか。どの規模の会社にいるのか。どんなキャリア上の悩みを抱えているのか。どんな言葉で声をかければ反応するのか。これが「ターゲット」です。
「求める人物像」は「欲しい人の特徴」です。「ターゲット」は「その人が存在している場所」です。この二つを分けて考えないと、スカウトは雑になります。
たとえば、「法人営業経験があり、経営層に提案できる人が欲しい」とします。このとき、多くの企業は、同業界の競合企業や、有名企業の営業職を探します。もちろん、それ自体が間違っているわけではありません。
しかし、誰もが同じ場所を探せば、そこはすぐにレッドオーシャン(競争の激しい「血の海」)になります。人気企業の営業経験者、SaaS企業のカスタマーサクセス経験者、外資系企業のマネージャー経験者、コンサルティングファーム出身者。こうした人材には、多くの企業が声をかけています。候補者の受信箱には、似たようなスカウトが大量に届いている。
そこに後発で「ぜひお会いしたいです」と送っても、反応が鈍いのは当然です。
仮に返信が来ても、他社からも誘いが来ています。内定を出しても、より条件の良い会社、より知名度の高い会社、より明確なキャリアを提示する会社に流れてしまう。
結果として、企業は「スカウトを送っているのに採れない」「面接しているのに入社しない」と嘆くことになります。そして、その結果、さらに雑にターゲットを広げることにつながっていきます。
しかし、それはスカウトメディアの問題ではなく、企業が狙っているターゲットの問題なのです。
実は、カジュアル面談の問題も、同じ構造です。
つづく記事〈「志望動機は?」「え、今日はカジュアル面談ですよね?」…ビズリーチで雑にスカウトする「企業の末路」〉で、詳しく解説します。

