【鈴木 貴博】沈む家電業界が、ついに生まれ変わる…!ヤマダ・エディオン2.5兆円連合から始まる「ユニクロ型革命」と業界大再編
「3メガ再編」の先にあるもう一つの未来
ヤマダ電機とエディオンの経営統合によって、売上高約2.5兆円という巨大な家電量販店グループが誕生します。
前編では、その背景にある家電小売り業界の変化を見てきました。
(前編はこちら『「ヤマダ・エディオン」2.5兆円連合の誕生が意味するもの…!誰も行かなくなった家電量販店に迫る「3メガ再編」と淘汰の時代』)
かつて家電量販店は、日本メーカーの最新家電を安く売ることで成長しました。その後は携帯電話の契約が収益を支えましたが、スマートフォンの普及によって黒物家電の市場は縮小。日本メーカーの競争力も低下し、いまでは家電量販店だけでなく、アマゾンやホームセンター、ドン・キホーテなどでも安価な家電を買えるようになりました。
こうしたなかで、今回の経営統合には次の2つの未来が考えられます。
シナリオ1:家電小売り業界の縮小
シナリオ2:経営イノベーションによる新たな発展
シナリオ1は、家電小売り業界の縮小です。
ヤマダとエディオンが本社機能や情報システム、仕入れなどを共通化し、組織をスリムにして生き残りを図る。今回の統合が成功すれば、ビックカメラやヨドバシカメラ、ケーズデンキ、上新電機なども再編に動き、家電量販店業界がやがて「3メガ」に収れんする可能性もあります。
これは、縮小する市場で規模の利益を追求する「守りの統合」です。
しかし、今回の経営統合の狙いは、それだけではないと私は考えています。
そこで浮上するのが、シナリオ2の「経営イノベーションによる新たな発展」です。
ヤマダとエディオンは、単にコストを削減するだけでなく、家電を売る会社から、自ら商品を企画し、製造し、ブランドとして育てる会社へ変わろうとしているのではないでしょうか。
この可能性を考えると、経営統合の本当のメリットが見えてきます。
家電業界の「ユニクロ」になれるのか
【シナリオ2:経営イノベーションによる新たな発展】
このままいくと家電小売り業界は縮小に転じるかもしれないという危機感は、すべての業界関係者が心にもっているはずです。その場合、すぐれた経営者がそのような未来を変える方法を考えるシナリオもありえます。
今回のヤマダ・エディオンの経営統合の狙いには間違いなく、未来を変えるための計画が存在すると思います。さきほど両社の統合でさまざまなメリットがあるという話をしました。そこに書かなかったもので、一番大きなメリットが生まれるのは家電のプライベートブランド開発への投資です。
実はヤマダエディオンの統合に先んじて、家電小売り大手のノジマが日立の家電部門を買収すると発表しています。ノジマは以前にパソコンのVAIOも買収していて、今回の日立の買収で自社開発商品が大幅に拡充されることになります。
ノジマの戦略のおもしろいところは、世の中がプライベートブランド戦略一色のなかであえてメーカーブランドを取りに行くところです。これは経営のイノベーションとして、販売業からメーカー直販を通じての複合事業へと事業構造をイノベーションしようとしているのです。
ヤマダ・エディオンも狙いは単なるプライベートブランド戦略の強化ではなく、事業構造のイノベーションにありそうです。業界内で噂されるのはユニクロ型の製造販売事業への転換です。
ユニクロはかつての「自社製造だから安いカジュアル」という位置づけから「みなが欲しがるカジュアルウェアブランド」へと変貌しています。それと同じ変化を家電のプライベートブランドで引き起こすことができるのではないでしょうか。
「安いだけの家電」からブランド家電へ
家電で近いコンセプトをもっているのは無印良品の家電です。爆発的に売れているわけではありませんが、独自の世界観の中で無印らしいシンプルなデザインの掃除機やトースター、ケトルなどは一定のファンが支持しています。
私は無印の家電はもっていませんが、個人的に素敵なデザインだなと思うのが無印良品の冷蔵庫です。シンプルな白い冷蔵庫で取っ手の部分がシンプルな丸棒になっていて、何かレトロで都会的な独特の空気をもった製品なのです。
経営統合によって両社のプライベートブランドの開発チームは統合されますが、それを経費を半分にする目的ではなく逆に投資に力をいれたら面白いことがおきそうです。
ユニクロがやったように世界的なクリエイターとコラボしたり、ヒートテックやエアリズムのような新機能家電を開拓したり、家電メーカーのバルミューダのような独自の高級ブランドを生んだりと、やれることはかなり多いと思います。
ニトリを巻き込む「家電製造販売経済圏」
このシナリオに関連してもうひとつ話題があります。実はエディオンの株式をニトリがもっていて、これまでニトリのプライベート家電はエディオンが協力してきた過去があるのです。
ニトリとヤマダはリフォームなどの分野で競合するため、今回の協業でエディオンがニトリから離れるのではないかという観測があります。
ところが経営統合発表の記者会見では山田社長がニトリも一緒にやったら面白いことになるとラブコールを送ったのです。
ニトリもユニクロや無印良品ほどではないですが、さまざまな家庭用品で独自商品ブランドを構築しつつあります。ニトリの家電はデザインはシンプルで家の中に自然にとけこむ、いい感じの製品ラインナップになっています。とはいえ、いまのところ消費者がニトリで家電を買う一番の理由は安さです。
当面、ヤマダ・エディオンのプライベート家電も同じ安くて品質がよくデザインもシンプルといったところをウリにするのであれば、わざわざ競合するよりもニトリも一緒になってより巨大な家電製造販売経済圏を作っていくほうがイノベーションになるでしょう。
もしこうなった場合は、他の家電小売り競合の経営統合相手も変わります。
家電量販店の「異業種再編」が始まる
同じように家電の製造販売で独自の強みを生むという考え方であれば、たとえばビックカメラの統合相手はドン・キホーテのほうがぴったりかもしれません。顧客がドキっとするようなプライベート家電づくりは両社がどちらも目指すもののはずです。
ヨドバシカメラは別の選択を考えるかもしれません。
難易度は高いかもしれませんが、西武百貨店とのコラボを通じて売り場のブランド力をアップさせて、次のターゲットとしては理美容業界のユニクロを目指す戦略はありかもしれません。
いつのまにか女性に一番支持される家電はヨドバシになるというイノベーションです。
こうして家電小売り業界には、同業者同士がまとまり、コストを削って生き残るだけではなく、異業種と手を組みながら、製造から販売までを一体化する新たな未来も見えてきます。
家電量販店が「安く仕入れて売る場所」から、消費者が欲しくなる商品を自ら企画し、ブランドとして育てる企業へ変わる。そうなれば、ヤマダとエディオンの統合は、沈みゆく業界で始まった単なる再編ではありません。
長く疲弊してきた家電業界が、もう一度成長へ向かうための「革命」の始まりになるかもしれないのです。
さらに連載記事『安さの帝王「コストコ神話」が“物価高”で限界に来ている…?コストコ歴27年のベテラン会員が見た「神話崩壊」の危うい現実』でも小売業のビジネスモデルについて考察しているのでぜひ参考になさってください。
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