汗の悩み、10代の約半数が誰にも相談せず。「“体質だから仕方がない”は変わりつつある」専門医が伝えたい受診という選択肢
「脇の汗ジミが気になって、授業中に手を上げられなかった」「テスト用紙が手汗でよれてしまって、消しゴムがかけられない」「つり革を持ちたいけど、汗ジミを見られたくない」「ハイタッチをしたかったけど、手汗を気にして避けてしまった」学生生活の中でそんな経験はありませんか?

汗の悩みは多くの人が抱える身近な問題です。しかし「体質だから仕方ない」「気にしすぎ」「我慢して当然」という考えが根強く、誰かに相談しづらいという現実があります。

特に、見た目や対人関係に敏感な10代にとって、汗の悩みは学業や友人関係、進路にまで影響を及ぼすことがあるのです。

そういった背景から、科研製薬・久光製薬・マルホの3社が立ち上げたのが「汗で病院あたりまえに委員会」です。

このプロジェクトでは、汗の悩みを社会全体で共有しやすい空気や相談しやすい環境づくりを目指しています。活動の一環として、汗の悩みに関する大規模な意識調査を実施。そのデータをもとに、汗の悩みを一人で抱え込まないための情報をまとめた特設サイトを公開しています。

今回は、調査結果から見えてきた実態について同サイトを監修する皮膚科専門医の解説とともに、汗の悩みとの正しい向き合い方を考えていきます。

「体質だから仕方がない」は変わりつつある。医学の常識がアップデートされてきた


汗の悩みがある人・ない人両方の全国10代〜50代男女9,000名以上を対象に実施した大規模な意識調査(※1)によると、全体のうち「汗はあくまで体質の問題で、治療が必要な病気ではない」と回答した人が52%、「汗をかくのは自然な生理現象であり、多少の不便は我慢するのが当たり前」と答えた人が59%にのぼりました。半数以上がいまだに「個人で対処すべき問題」として捉えているのが現状です。


しかし、こうした認識は医学的には「古い常識」だと池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長の藤本智子先生は言います。「QOLを下げるものも病気だという認識が2000年代以降、世界的に広まってきました」。ニキビや円形脱毛症など、かつては「気にしすぎ」と言われていたものが、今では治療の対象とされているように、汗の悩みも医療が正面から向き合うべき問題へと変わってきています。

9割が未受診の現実。受診目安は汗の量ではなく「困っているか」


とはいえ、汗の悩みを抱えながらも医療機関を訪れる人はまだ多くありません。汗の悩みがある人の90%が医療機関を受診したことがなく(※1)、受診しない理由として多く挙げられるのが、「よほど重症でないと病院に行ってはいけない」という感覚です。


しかし、医師の調査(※2)によると、73%が「汗の量は問わず、日常生活で少しでも困ったり気になったりしているなら受診してほしい」と回答しているのです。

「ニキビと似ています。かつてはニキビなんかで病院へという時代でしたが、ニキビも皮膚科で相談することが一般的になってきました。汗の悩みも同じような過渡期にあります」と藤本先生は語ります。

受診の目安は「汗の量」ではなく、「日常生活でどれぐらい困っているか」。「そもそも汗は体温調節のために必要で、汗をかくことは大切なことです。一方で、汗の悩みを抱える人にとって、それが改善することで生活がしやすくなりそうなら受診してほしい」と言います。

池袋西口ふくろう皮膚科クリニック 院長/日本臨床皮膚科医会 常任理事 藤本智子先生

また、「汗の悩みだけで病院に行くのはちょっと……という方は、ニキビやアトピーなど他の用件で来院したついでに聞いてみるだけでもいいと思います」と先生は付け加えます。

10代の58%が「誰にも相談していない」背景に親子のギャップも


汗の悩みは、大人だけの問題ではありません。調査(※1)では、汗の悩みを持つ10代の58%が「誰にも相談していない」と回答。

また、親に相談したことがある10代に、その時の親の反応を聞いたところ、「市販の制汗剤の購入や対処法のアドバイスをくれた」が57%と最も多く、「病院へ連れて行ってくれた(受診を勧めてくれた)」は15%。中には、「成長すれば自然に治ると言われた」(12%)、「気にしすぎだと言われた」(10%)との声もあり、対応は様々でした。


その背景にあるのが、親子間の認識ギャップです。実際に、10代の診察で「本人は深刻に悩んでいるが、親が『気にしすぎ』『成長すれば治る』と考え受診に消極的なケースがある」と、69%の医師が経験していることも分かっています。(※2)


なぜこのギャップが生まれるのでしょうか。「10代は思春期で、学業や友人関係、恋愛など人との関わりが大きく、“どう見られるか”を強く意識する時期です。汗の困りごとは見た目に限らず日常生活や対人関係にも影響し、本人にとって大きな悩みになります。

一方で親世代には、多汗症を医療機関で相談するという認識が十分に浸透しておらず、ここに親子間のギャップが生じています」と藤本先生は語ります。

さらに深刻なのは、一度否定されると子どもが相談をやめてしまうことです。「一旦親御さんに否定されると、『この人に言っても仕方ない』と、子どもは諦めてしまう。そういう子は学校卒業後に自分で来院するというケースが多いです」。

子どもの言葉を「気にしすぎ」「体質だから」と一蹴するのではなく、まず否定しないことが親子間のコミュニケーションで重要なのです。

親が気づくサインと、サポートのヒント


一方で、子どもが自分から言い出せない場合、親はどのように気づけばよいのでしょうか。藤本先生によれば、手足の汗は床がペタペタするほど濡れたり、手をつないだ時に気づいたりすることがあるといいます。また、制服や下着に目立つ汗ジミや黄ばみが出ている場合も一つのサインです。


気づいた際には、声をかけてあげるだけでなく、関連情報のサイトやリンクをそっと渡すのも有効だといいます。

「親御さんが『このサイト見なよ』と教えてあげたことがきっかけで来院するお子さんもいますよ。直接よりも間接的な方が、子どももマイルドに受け取れます」。

10代の汗悩みは学業や対人関係、進路にまで影響


汗の悩みは10代の日常にも深刻な影響を与えています。調査(※1)によると、汗の悩みを持つ10代のうち、汗が理由で25%が「着たい服(色や素材)を自由に着ることを諦める」、24%が「他人と物理的な距離を置く」、24%が「授業中・テスト中に集中できない」と回答しており、影響は日常生活の広い範囲に及んでいるのです。


藤本先生も、この現実を日々の診察の中で実感されています。「仕事や学業のパフォーマンスが半減してしまうなど、自分の持っているポテンシャルを汗が原因で妨げられるということが、実際に起きているんです」。

実際に手汗がひどい場合、テストで答案用紙がよれて消しゴムが使えなくなることもあるといいます。さらに影響は将来の選択にまで及ぶことも。

「なりたい職業を諦めてしまうという声も耳にします。汗のことで接客業を辞めてしまったり、ネイリストになりたくて専門学校に入ったけど、手汗のせいで学校に行けなくなってしまったというケースも」。汗の悩みが、子どもの人生の選択そのものを狭めてしまっている可能性があります。

正しい情報へのアクセスが子どもの未来を変える


今回の取材を通じて、藤本先生が一貫して強調されていたのは「正しい情報へのアクセス」の重要性です。

「若い子は即効性を求めたり、極端な考えになりがちです。近年は、保険診療の塗り薬がファーストステップとされることが多く、適切な治療を選択するためにも正しい情報にアクセスすることが重要です」と先生は語ります。


汗の悩みには、費用面・体への負担ともに少ない保険診療の治療法があります。情報を知らないまま高額な自費治療に飛びつくのではなく、まずはかかりつけの皮膚科に相談することが第一歩です。

医師への調査(※2)によると、91%が「多汗症は早期に適切な治療を行えばQOLを大きく改善できる」と答えており、困っているならまずは病院に相談することの意義は医師の間でも広く共有されています。

「体質だから仕方ない」「病院に行くほどではない」そんな思い込みが、大人も子どもも適切な情報や治療にたどり着けない現状をつくっています。しかし、医学の常識は変わっています。QOLを下げる悩みは治療の対象であり、困っていれば相談してよいのです。

自分自身の汗の悩みにも、子どもの汗の悩みにもまずは正しい情報を知ることが重要です。汗の悩みに関するさらに詳しい情報や近くの病院検索は、「汗で病院あたりまえに委員会」特設サイトをぜひご覧ください。

▲「汗で病院あたりまえに委員会」特設サイトはこちらの画像をクリック!


※1【調査概要】
調査①     汗に関する意識実態調査
調査対象    日本全国の15歳〜59歳男女9,459名
        汗の悩みがある人:4,767名
        汗の悩みがない人:4,692名
調査方法    インターネット調査
調査機関    株式会社エクスクリエ、株式会社メディリード(調査委託)
調査期間    2026年2月

※2【調査概要】
調査②     多汗症に対する皮膚科医師の意識調査
調査対象    多汗症の診療経験のある皮膚科医師200名
調査方法    インターネット調査
調査機関    株式会社エクスクリエ、株式会社メディリード(調査委託)
調査期間    2026年2月
※数値はすべて小数点以下を四捨五入しています。


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