「投票所に投票用紙がない」韓国中央選管が統一地方選で大失態…不正選挙の陰謀論も再燃
韓国の統一地方選挙が3日に実施されたが、ソウル市内の一部投票所で投票用紙が不足し、有権者が投票できないという「前代未聞」(韓国メディア)の混乱が発生した。投票所によっては数時間にわたって投票が中断され、長時間待機を余儀なくされた有権者の中には、投票を諦めて帰宅する人もいた。
今回の選挙では進歩系与党が大勝したが、一部の保守支持者は「特定の有権者の投票を妨げるための意図的な措置ではないか」と主張し、街頭で抗議デモを続けている。
中央選挙管理委員会(選管)によると、通常は各投票所に地域の有権者数の60~70%程度に相当する投票用紙を配布している。しかし近年、不正選挙をめぐる陰謀論が拡散し、投票用紙が疑惑の材料として取り上げられるケースが増えていた。このため今回は、余剰の投票用紙への疑念を避ける目的で、有権者数の約50%分に抑えて配布したという。
ところが実際の投票率が予想を上回り、一部地域で投票用紙が不足する事態となった。
「日の丸投票用紙」など根強い不正選挙論
韓国では近年、投票用紙をめぐるさまざまな疑惑が保守系YouTuberなどを通じて広がっている。代表的なものは、余った投票用紙が特定候補への票の水増しに利用されているという主張だ。
また投票用紙の偽造を指摘する声もある。その1つが「日の丸投票用紙」だ。投票用紙に押される選管の赤い公印がにじみ、日本の国旗のように見えることからこう呼ばれる。
また、印刷が重なって白菜の葉のように見える「白菜の葉投票用紙」や、本来は投票箱に入れる際に二つ折りになるはずなのに折り目がない「新札投票用紙」が見つかった、とする主張も繰り返し提起されてきた。
こうした疑惑について裁判所は、いずれも根拠がないとの判断を示している。
揺らぐ「K民主主義」
選管は今回の選挙で透明性向上にも力を入れた。投票箱の投入口を特殊な封印紙で封鎖したうえで、警察官立ち会いのもと開票所へ移送した。さらに各開票所の集計結果をインターネット上で公開し、開票状況をリアルタイムで確認できるようにした。
ところが投票用紙の準備という肝心な部分で大きなミスを犯し、不正選挙論を再燃させる結果となった。
投票用紙不足はソウル市内の14カ所の投票所で起き、いずれも保守系最大野党「国民の力」の支持者が多いとされる地域だったため、「意図的な投票妨害だ」「選挙に外部勢力が関与している」などの主張がSNS上に拡散した。
混乱が広がる中、李在明大統領は4日、「国民の投票権が損なわれてはならない」として深い遺憾の意を表明し、責任の所在を明確にするよう指示した。
一方、「国民の力」は地方選で敗北したことから、一部では「選挙は無効」との主張も上がった。しかし、注目されていたソウル市長選で、自党候補が進歩系与党である「共に民主党」候補を僅差で破り、当選を果たしたため批判の勢いはやや弱まっている。
韓国では、民主主義が危機に直面した際にも国民の積極的な政治参加によって乗り越えてきたとの自負から、「K(韓国)民主主義」という言葉がしばしば用いられる。
しかし、民主主義の根幹を支える選挙制度や、選挙を管理する組織への信頼が揺らげば看板倒れになりかねない。
文/五味洋治 内外タイムス
