成功すれば孫正義の後継者に?経産省の筋悪ファンド「クールジャパン機構」140億円投資が焦げ付いたユニコーン企業を「孫の長女」は救えるか
「孫氏の娘が引導」
経済産業省所管の官民ファンド「クールジャパン機構」(以下、CJ機構。正式名・海外需要開拓支援機構)が存亡の危機に直面している。
アニメや和食、先端技術など「日本文化のクールな魅力」を世界に売り込むとの触れ込みで2013年に設立されたが、全く成果を上げられないまま、度重なる投資の失敗で2025年3月期の累積損失を383億円に膨らませた。
20近くある官民ファンドの中でも突出した業績の悪さで、これまでも存在意義が問われてきた。CJ機構は政府に運用改善計画を提出するなどして延命を図ってきたが、約140億円を投資したバイオ繊維ベンチャー「スパイバー」(山形県)が、今年3月に事実上経営破綻したことで万事休す。
出資金全額が焦げ付く見込みとなり、廃止か他の官民ファンドとの統合かを迫られる事態となっている。
スパイバーの事業はソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長の長女である川名麻耶氏が代表を務める企業に50億円で譲渡され、新生スパイバーとして再建を目指している。
霞が関では「稀代の投資家の娘から経産省の筋悪ファンドが引導を渡された」(財務省幹部)と皮肉る声がしきりだ。
「日本のユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)として名高いスタートアップへの投資が失敗するとは露ほども考えなかった」。CJ機構幹部にとって、スパイバーの破綻劇は寝耳に水だった。
「白馬の騎士」として登場
07年創業のスパイバーは、頑丈で柔らかく環境負荷が低い人工タンパク質繊維の製造技術が売り物だ。アパレルや自動車など幅広い分野での応用が期待され、機関投資家などから1000億円以上の資金を調達。英バーバリーや、スポーツアパレルのゴールドウインなど有名ブランドにも採用されるなど前途洋々に見えた。
それだけに、CJ機構を所管する経産省商務情報政策局幹部も「失敗ファンドとの汚名を返上する起死回生の投資先」と当て込んでいた。
だが、そんな期待とは裏腹に、スパイバーの台所は火の車だった。事業拡大を急ぐあまり、20〜21年にかけて約400億円を借り入れ、米国の生産拠点の整備などに投じたことがあだとなった。
「日本で希少なユニコーン」(経産省幹部)とはいえ、売上高数億円の企業にとって身の丈をはるかに超えた巨額投資は致命的だった。25年12月期には400億円の最終赤字に陥り、約360億円の借入金を期限通りに返済するのが困難となるなど経営が行き詰った。
この窮地に「白馬の騎士」として登場したのが、ゴールドマン・サックス証券を経てコンサルティング会社を経営していた川名氏だった。
「孫さんの後継者に」
それまで女性起業家としてマスコミに登場した際にも避けてきた「孫氏の長女」という出自をあえて公表。金融機関による債権放棄などを条件にスパイバーの再建を支援すると表明した。
「孫ブランド」の威光は絶大で、今年3月には金融機関が大部分の債権を放棄する私的整理が首尾よくまとまった。
4月1日付で川名氏を最高経営責任者(CEO)とする新生スパイバーが誕生すると、アデランスや兼松、関西ペイントなどの有力企業12社と川名氏の母校である慶応大学の先端生命科学研究所が戦略パートナーとして名を連ねるなど、上々の船出となった。
総資産約25兆円に上る巨大IT・投資帝国を率いてきた孫氏も来年に古希(70歳)を迎える。このためSBG内では「スパイバーの再建をテコに麻耶さんを孫さんの後継者に」と期待する声も出ている。
一方のクールジャパン機構は、今後どうなるのか。後編記事『巨額の国民負担が生じる可能性も…悪あがきする経産省の「クールジャパン機構」お取り潰しにするべき「これだけの理由」』に続く。
【つづきを読む】巨額の国民負担が生じる可能性も…悪あがきする経産省の「クールジャパン機構」お取り潰しにするべき「これだけの理由」
