DMCA(デジタルミレニアム著作権法)を悪用し、正当な権利が無いにもかかわらず競合サービスをGoogleの検索結果から削除させた2人の人物に対し、カリフォルニア連邦裁判所が偽のDMCAの送信と新たなGoogleアカウントの作成を禁止する差し止め命令を下しました。

ORDER ADOPTING 30 REPORT AND RECOMMENDATION; GRANTING 29 MOTION FOR DEFAULT JUDGMENT for Google LLC v. Nguyen et al :: Justia Dockets & Filings

https://docs.justia.com/cases/federal/district-courts/california/candce/5:2023cv05824/420782/36



Google Wins Lawsuit Against Scammers Who 'Weaponized' DMCA Takedowns * TorrentFreak

https://torrentfreak.com/google-wins-lawsuit-against-scammers-who-weaponized-dmca-takedowns-240930/

DMCAはインターネットにおける著作権の侵害から著作権者を守るための法律で、著作権者から著作権を侵害しているコンテンツについての申請があった場合、すぐに削除すればオンラインサービスプロバイダーは当該コンテンツをホスティングした責任に問われないというもの。

DMCAが制定されてから現在までに、Googleには約97億件の申請が行われているとのこと。Googleは申請に基づき、半自動化されたプロセスでコンテンツを無効化しています。



DMCA申請の大半は正当な権利者からのものですが、中には「申請したコンテンツがほぼ自動的に削除される」という特性をいかして競合他社のサービスを申請し、相対的に自社サービスの検索順位を向上させようともくろむ人もいます。2023年11月にGoogleは特に悪質な22名を提訴しました。

DMCAを悪用するため65個のGoogleアカウントを駆使し約62万件のURLに削除要求を申請して検索結果から消し去った22名をGoogleが提訴 - GIGAZINE



22名のうち、身元が判明しているのはベトナム在住のグエン・ヴァン・ドゥック被告とファム・ヴァン・ティエン被告の2人で、残りの20名は身元不詳ながらグエン被告およびファム被告の協力者とみられています。特にグエン被告は「DMCAに基づく偽の削除要求でGoogleの検査結果トップを3分で獲得する方法」というムービーをYouTubeにアップしており、削除要求を使った悪質なSEO(検索エンジン最適化)を詳細に解説していたそうです。

この裁判において、ベトナム在住とみられる被告らはGmailアカウントおよびSMSを通じて召喚されたものの出廷せず、Googleは「不正行為を止めるための他の法的手段がない」として欠席判決を要請していました。裁判を要求する文書の中でGoogleは、「被告らは、GoogleのDMCA通知および削除システムを『武器』として使用し、著作権を侵害しているとされるコンテンツを迅速に削除するという本来の目的ではなく、虚偽の申し立てに基づいて競合他社の正当なコンテンツを削除させるためにそれらを使用しました」と指摘しています。

また、Googleは「金銭的賠償ではなく不正行為を終わらせることが目的」として賠償金の請求を行わず、代わりに今後被告らが虚偽のDMCA申請をしたり新たなGoogleアカウントを作成したりすることを禁止する差し止め命令を求めました。

2024年9月27日に裁判所は、被告らのDMCA申請が虚偽であったことを認めるGoogle有利な判決を下しました。その上で、2人の被告に対して以下を禁じる差し止め命令を下しています。

1:著作権を所有しているという虚偽の主張に基づく著作権侵害や削除要請をGoogleに提出すること

2:Googleアカウントの作成や作成を試みること

3:被告のウェブサイトや製品を宣伝するために、いかなるGoogle製品やサービスを使用すること

4:Google製品やサービスを使用して第三者に害を及ぼす、または害を及ぼそうとすること。これにはGoogleの検索広告顧客を含むが、これに限定されない

5:他の人や団体が、上記の1から4までの行為に関与したり実行するのを援助、支援、助長すること