2020年7月の豪雨で、甚大な被害を受けたJR九州の肥薩線。その復旧について、JR九州の青柳社長が「BRT(バス)」への転換も排除しないという認識を示しました。九州の人気鉄道路線は、どうなるのでしょうか。

有数の観光鉄道路線

 2020年7月の豪雨で鉄橋や線路が流されるなど甚大な被害を受けた、JR九州の肥薩線。復旧の見通しがたたないまま、八代駅(熊本県八代市)と吉松駅(鹿児島県湧水町)のあいだ86.8kmで、いまだ不通になっています。

 こうしたなか2021年1月、JR九州の青柳俊彦社長が肥薩線の復旧について、鉄道での復旧をまず検討するものの、BRT(バス高速輸送システム)などへの転換を排除するものではないという認識を示したと、複数のメディアが報じました。

 同様に、2017年7月の豪雨で被災したJR九州の日田彦山線は、復旧にあたり一部がBRTになることが2020年7月に決まっていますが、肥薩線はどうなるのでしょうか。


球磨川第一橋梁を渡る「SL人吉」。この鉄橋も流出した(画像:photolibrary)。

 肥薩線の不通区間には、D&S列車(観光列車)の「かわせみやませみ」「いさぶろう」「しんぺい」「SL人吉」が走っていました。

 また車窓には球磨川や「日本三大車窓」のひとつが広がるほか、スイッチバックとループ線という鉄道的な見どころがあります。

 そしてJR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」も通過する、九州の鉄道周遊ルートのひとつになっています。

 日田彦山線はローカル輸送が主体の路線ですが、肥薩線は鉄道的な観点からだけ見ても、観光列車が走るように他の地域から人を呼べる路線であって、それにより九州新幹線などの他路線、また沿線地域への波及効果も考えられることから、状況は違います。

 もし肥薩線がBRTによる復旧になるとしたら、これが大きく変わるわけで、JR九州も「鉄道での復旧」を目指したいところでしょう。

しかし「BRT」無いとはいえない?

 ただ、肥薩線の復旧には治水工事なども関係してくるため、費用や方法など具体的な形はまだ見えてきていませんが、巨額の費用が想定されます。


流出した球磨川第一橋梁(画像:JR九州)。

 鉄道の復旧費用の4分の1ずつを国と地方が補助(場合によっては3分の1以内まで)する仕組みがあるものの、コロナ禍によりJR九州は上場後初の赤字になる見込み(284億円の純損益)であるなど、厳しい状況です。

 また肥薩線の不通区間は、2019年度の営業収支が8億9000万円のマイナス。路線を維持していくには、先述の観光列車など、工夫が必要です。今後の状況や流れによっては、「BRT」という選択肢が現実性を増すことがないとは限らないでしょう。

 少子高齢化、人口減少、過疎化が進むなか、地方路線の維持管理をどうすべきか、民間企業がどう公共交通を担っていくか、災害復旧の有無にかかわらず課題になっている現代。JR九州と地域、国がどう考え、未来を描いていけるか、注目されるところです。