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新型コロナを世界に拡大させた原因

米下院外交委員会のマイケル・マッコール筆頭委員(共和党)が6月15日、中国共産党による新型コロナウイルスの隠蔽や世界保健機関(WHO)の不適切な対応に関する調査報告書を発表した。とりわけ、WHOの酷さは「これほどだったか」と、あらためて驚かされる衝撃的な内容だ。

新型コロナについては、英国のシンクタンク、ヘンリー・ジャクソン協会が4月5日、「コロナウイルスの代償?〜中国の潜在的犯罪性と法的対応手段」と題した包括的な報告書を発表している(https://henryjacksonsociety.org/publications/coronaviruscompensation/)。マッコール報告は最新状況をさらに深堀りし、WHOの責任を鋭く追及した点で読み応えがある。同氏は米議会の「中国タスクフォース」議長でもある。

マッコール議員は外交委員会のプレスリリースで「数カ月にわたる調査の結果、中共は新型コロナの感染を世界に広げるうえで、決定的な役割を果たした」「WHOは中共の言い分を検証することなく、オウム返しに語る一方、自分たちの専門家が出した警告さえ無視して、事態を悪化させた」と厳しく批判した(https://gop-foreignaffairs.house.gov/press-release/mccaul-releases-interim-report-on-origins-of-covid-19-pandemic/)。

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報告書のポイントをいくつか紹介しよう。

〈パンデミック(世界的大流行)の初期段階〉
・中国共産党は2019年12月半ばの時点で、全面的な公衆衛生上の対応が求められるのに十分な情報を得ていた。
・中共は繰り返し、かつ意図的に「2005年国際保健規則」で義務付けられたルールに違反した。規則は2002年から04年にかけて発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)への対応に中国が失敗したために、定められたものだ。
・WHOは台湾や外部の専門家、メディアによる報告を無視した。

〈中共による隠蔽工作〉
・中共はウイルスに関する情報拡散を制限するために、積極的に隠蔽工作を展開した。
・工作には、医師に対する懲罰、ジャーナリストの失踪、インターネットの検閲、SNSを使った偽情報散布、WHOや国際社会からの情報圧殺などが含まれる。
・現在に至るまで、中共は国際社会に対するウイルス・サンプルや正確な患者情報の提供、武漢に関わるネット情報へのアクセスを拒んでいる。
・中共の隠蔽によって、我々は感染爆発の起源を特定できないだろう。
・習近平国家主席や他の指導者たちは、武漢を封鎖する数週間前に感染の大流行が始まっている、と知っていた。
・もしも中共が昨年2月始めの段階で全面的な対応をしていれば、中国の感染爆発の95%は2月末までに防げたはずだ。

〈武漢ウイルス研究所〉
・2018年の米国務省電報は「武漢ウイルス研究所(WIV)」の安全性に問題があることを示唆していた。04年には、別の研究所でSARSウイルスが誤って外部に流出する事故が起きていた。
・フランスの協力で建設されたWIVは安全性をめぐって、当初から中仏政府間に大きな不信感があった。フランスの軍と情報機関は「技術の軍民利用」に懸念を示していた。
・研究所の上級責任者は中共の地元指導者だった。
・WIVはコロナウイルス研究の長い歴史がある。「遺伝子変異による新たな機能獲得(gain-of-function)」研究もその一部だ。
・研究所の中の「BSL−4実験室」は今年初め、人民解放軍の生物化学兵器に関する上級専門家に運営が委ねられた。

〈WHOの不適切対応〉
・WHOとテドロス・アダノム事務局長は感染の初期段階から、中共の言い分を十分に検証しないまま、真に受けていた。
・WHOは繰り返し、自分たちが決めた国際保健規則とメンバー国に対する義務に違反した。
・WHOは香港大学のWHO連携センターや他からの警告にもかかわらず、何週間も「ヒトヒト感染は起きていない」と主張し続けた。
・テドロス氏が緊急事態宣言の発令を遅らせたのは、医学的理由からではなく、政治的な理由からだ。
・テドロス氏とWHOは、中共が新型コロナに関して誤った情報散布と宣伝を続けられるように、ミスリーディングな声明とプレスリリースを出し続けている。

私が注目したのは、WHOとテドロス氏を批判した部分だ。

たとえば、WHOは新型コロナの感染発生をどのようにして知ったのか。話は昨年12月31日に遡る。

この日、中国メディアが「新型肺炎の患者が複数例あり、感染爆発が起きている」とネットで報じた。すると、記事をそのまま機械翻訳したリポートが「ProMED」と呼ばれる、米国を拠点とするネット上の公開プラットフォームに転載された。この投稿が、WHOが事態を認識する最初のきっかけだった。

クラスター発生「最初の報告」の謎

WHOの緊急事態プログラムの幹部であるマイケル・ライアン博士は4月20日、ネット上の記者会見で次のように語っている。

「我々はProMEDで『武漢で新型肺炎のクラスターが発生している』という感染情報を得た。同じ日、台湾の当局から『少なくとも7人の患者が出ている』という報告を受け、調査を依頼された。我々は直ちにWHOの中国事務所に報告を転送し、中国当局にフォローするよう依頼した。翌1月1日には国際保健規則に従って、中国に対して正式に事態を確認するよう要請した」(https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/transcripts/who-audio-emergencies-coronavirus-press-conference-20apr2020.pdf)

つまり、WHOは中国メディアが報じた記事を転載したProMEDを見て、初めて新型肺炎(新型コロナウイルス)の感染拡大を知った。その後、現地のWHO中国事務所に連絡し、中国当局にも実態把握を要請した。これが事実経過である。

ところが、WHOはどう対外的に説明したかと言えば、オフィシャルサイトで「昨年12月31日、武漢の衛生健康委員会がクラスターの発生を報告した」と記述したうえで、2020年1月5日に発表したプレスリリースでは「WHOの中国事務所が武漢で未知の肺炎患者が発生している、と知らされた(was informed)」と説明した(http://www.who.int/csr/don/05-january-2020-pneumonia-of-unkown-cause-china/en/)。知らせたのは誰か、を記述していない。

本当は「WHO中国事務所はジュネーブにあるWHO本部から感染を知らされた」にもかかわらず、報告した当事者を特定せず、受け身で書くことによって、あたかも「中国当局から知らされた」かのように装ったのである。それだけではない。ライアン氏は「ネットで知った」と正直に認めたにもかかわらず、事務局長のテドロス氏は否定した。

中国を利する「印象操作」

4月20日の会見に戻ると、テドロス氏は記者に聞かれてもいないのに、自ら割って入り、こう述べた。

「ちょっといいですか。マイク(注・ライアン氏)の話を要約したい。12月31日に受けた最初のメールは、台湾からではない。多くの国がこの点を尋ねてきている。最初の報告は武漢、すなわち中国からだ。これが事実のナンバー1だ。武漢から来たのだ」

マッコール報告は「『最初の報告が武漢から来た』という言い分は技術的には正しい」としながら「WHO担当者が報告を最初に発見したのは米国のウェブサイトだった」と記した。「テドロス氏はあたかも武漢、あるいは中共がWHOに感染を報告したかのようにコメントしているが、これは真実ではない」と批判している。

つまり、中国が不利にならないよう、WHOは言葉の使い回しで巧妙に事実をねじ曲げているのだ。まさに「印象操作」である。これはほんの1例にすぎない。「ほかにも嘘とは言えないまでも、部外者を誤解させるようなWHOの努力が、いまも続いている」

その結果、何が起きたか。世界中のメディアが騙されてしまった。

報告は「感染の第1例は12月31日にWHOに報告された」(CNN)、「中国は12月31日、いくつかの異常な肺炎についてWHOに警告した」(アルジャジーラ)、「中国は12月31日、WHOの中国事務所に未知の病気について報告した(Axios)など、世界中のメディアが騙された実例を挙げている。日本のメディアもけっして例外ではない。

世界中の命と健康を守るはずのWHOは中国の「共犯者」として、事実の隠蔽と偽情報の散布、そして感染拡大に一役も二役もかっていたのである。メディアだけではない。ジョージタウン大学のローレンス・ゴスティン教授は「私や他の公衆衛生専門家は中共とWHOの声明に騙されていた」と語っている。

「ヒトヒト感染」を否定し続けた

もう1つ、挙げよう。

WHOはいつから「ヒトヒト感染」を知っていたのか。WHOは1月13日、タイで確認された最初の患者について「ヒトヒト感染の疑いはない」と発表した。翌14日の声明も同様だ。ところが、1月21日になると、中国の国家衛生健康委員会が「ヒトヒト感染が起きている」と認めた。

すると、WHO中国事務所も翌22日に「ヒトヒト感染が起きている」と認めたのである。これだけでも、WHOのデタラメさが分かるが、4月13日になると、衝撃的な新事実が明らかになる。

WHOの新型コロナに関するテックリード(技術面のリーダー)であるマリア・ファン・カークホフ博士が記者会見で次のように暴露したのだ。

「我々は最初の報告を得た12月31日の、まさにその時点から直ちに、――私は中東呼吸器症候群(MARS)の専門家であり、コロナウイルスとインフルエンザの研究者ですよ――これが呼吸器の病原体であるからには、もちろん、ヒトヒト感染があり得る、と考えていました」(https://www.youtube.com/watch?v=NCy-qvcDDl4)

WHOは自分たちの最高の専門家が「ヒトヒト感染」と考えていたのに、中国が認めるまで、一貫して否定し続けていたのだ。

メディアにはできなかった仕事

私は本来、メディアがこうした中共とWHOの悪巧みを暴く役割を担わなくてはならない、と思っている。ところが、実際は世界のメディアが、こぞって偽情報の拡散に手を貸してしまった。メディアに代わって真実を明るみに出したのは、政治家のマッコール議員だった。

これは敏腕記者顔負けの仕事である。記者会見の記録1つとっても、よほど目を皿のようにして、徹底的に読み込まなければ、真実は浮かび上がってこない実例だ。率直に敬意を評したい。私もマッコール報告を理解するのに、3回は全文を読み返した。

マッコール氏は報告をまとめるのに「武漢の医師や住民によるWeChatなどSNSへの投稿、内外のメディア報道、アカデミックな報告、科学的研究、シンクタンク報告、米国とフランスの情報機関による評価など、あらゆる情報を活用した」と書いている。

これは中間報告だ。いずれ「数カ月以内に最終報告を出す」という。次に何が飛び出すのか、大いに期待したい。