9月15日に大阪のなんばグランド花月で初単独ライブを催した友近が、「右近亭友近」の芸名で着物姿で登場。自作の創作落語を一席演じた。もともと一人コント芸で評価の高い友近だけに、今後もコントと平行して落語活動を続けるのかが注目される。同公演は、東京でも27日に新宿・ルミネtheよしもとで催される予定である。

 友近以外にも、ここ数年、落語の専門家ではない芸能人が座布団に座って落語を演じる光景をあちこちで見かけるようになった。
 去る9月7日には、日本テレビの羽鳥慎一ほか男性アナウンサー6人が古典落語を覚えて披露する企画『日本テレビ男子アナ はじめての落語』がオンエアされたばかり。同番組のDVDも11月5日発売が決まっている。

 この『はじめての落語』を落語の側面から企画演出したのが、最近はプロデューサーとして辣腕をふるう機会も多い春風亭小朝だ。人気落語家を集めた「六人の会」の主催をしたり、2004年から毎年7月に銀座で開催した「大銀座落語祭」の企画・運営をしたりと、今や小朝はマスコミの落語ブームの一翼を確実に担っている存在である。
 現に、主催する「大銀座」の中でも、芸能人の落語会はいつも企画されている。毎年ほぼレギュラー出演の南原清隆をはじめ、千原ジュニア・ますだおかだ増田・アンガールズ田中・コロッケ・渡辺正行・松尾貴史・光浦靖子・猫ひろしといった顔ぶれが、過去に「大銀座」の高座を踏んでいる。落語経験が長い俳優・風間杜夫に至っては、「大銀座」の中では常に大看板との二人会公演。すっかり別枠扱いだ。
 落語マニアや年配客だけではなく、落語に興味を持たない層からの注目も得ようという作戦ではあったが、結果的に落語ファンの裾野は広がり、その後の寄席・落語会への客足は大いに伸びるというプラス効果があった。一連の落語ドラマや落語が題材の映画など、他ジャンルの流れと合流した結果も含まれるとはいえ、落語業界にとっては、動員数の増加が何よりの慶事なのである。
 その後、増田は「大銀座」後も独自にライブで落語を演じて、自身の芸域の幅を広げた。これもまたひとつの効果であろう。風間や松尾は、大手興行会社を主催につけて大規模なホールで会催する「本腰」ぶりだ。ここまでくるともう、たかが芸能人落語とは一概にあなどれない。
 
 「芸能人による落語」に最初に目をつけたのは、25年前の立川談志であった。
 1983年に落語立川流を創設し、そこで本流(Aコース)の弟子とは別に、芸能人や文化人からの弟子(Bコース)を募った結果、ビートたけし・高田文夫・横山ノック・上岡龍太郎・山本晋也・ミッキーカーチス・景山民夫らが弟子入りした。このうち、談志自身が技量や話題性を認めた高田とミッキーは後年「真打」に認定されている。
 当時の談志の意見によれば、落語とは別世界の第一人者に着物を着せ、座布団の上でしゃべらせ、現代を語らせれば、それこそが「現代の落語」だったのだ。これは集客目的よりも、落語というジャンルの危機感が優先した末のアイディアだという。

 談志というと現在でこそコワモテの批評家みたいな役だが、1960〜70年代はテレビやラジオに出まくった、いわば売れっ子芸能人のハシリだ。この点は小朝も共通していて、真打昇進する前後の1980年前後当時、東京の落語家で小朝ほどマスコミで売れていた芸人はいなかった。ともに落語という業界以外の「裾野の広さ」を、若い頃から身をもって知っていたのである。
 それまで芸能事務所的マネジメントの戦略発想が無かった落語業界において、この談志・小朝という「外部視点」の持ち主2人は、時期も細部も異なるとはいえ、二代にわたって落語ファンの裾野拡大を目論んできたわけである。

 ただ、落語人気が高まったからといって、現状に安閑としてもいられない。落語が商売になるとわかった現在、マネジメント能力で段違いに秀でた大手芸能事務所が、落語業界の次の商売敵、すなわちライバルとなるのだから。ひょっとしたら人気芸人をたくさん落語の名手に育てて、独自に落語会を企画し、従来の寄席のお客を本気で奪いにかかるかもしれない。その時はもう、落語家個人の力ではどうにも対抗できないはずだ。
 もし現実となった時、どういう対抗手段を立てるか。ちょっと注目しておきたい。

(編集部:尾張家はじめ)
 
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