家は買うべきか一生賃貸か…"生涯支出"を試算したお金のプロの「物件も家賃も上がる」インフレ時代の結論

■インフレ時代は物件価格も家賃も上昇
インフレ時代に突入したことで、最近は住居費の上昇が顕著になっています。日本のインフレが本格的に進行し始めたのは、2022年4月以降ですが、新築マンション価格は2020年頃から大きく上昇しています。
不動産経済研究所のレポートによれば、東京23区の新築マンション平均価格は2019年度で7400万円だったのが、2025年度で1億3784万円であり1.86倍になっています。首都圏全体では、2019年度で6056万円だったのが、2025年度で9383万円であり1.54倍になっています。

マンション価格だけでなく、家賃も上昇しています。アットホームのレポートよれば、平均家賃指数は2018年頃から上昇し、2026年時点では2015年時点の1.4〜1.6倍になっています。

インフレ時代は、買う人も借りる人も影響を受けます。昔からある「マイホームは購入と賃貸どっちを選ぶべきか」論争ですが、いまの時代は物件価格も賃料も上昇することを踏まえて考えなければなりません。
■最近は持ち家派の論調が増えている
最近は「マイホームは購入すべき」という、持ち家派の論調が増えてきました。インフレになると住宅価格も家賃も上がりますが、借り入れしている住宅ローンの元本は増えないから、というのが理屈です。
バブル崩壊後、長らく続いたデフレの時代だと、家は買った瞬間、大きく価値が下がると言われていました。住み続けるほど価値は下がる、というのが多くの人にとって常識だったので、価値が下がるものを買うより、賃貸で住み続ける、住み替えるというのが合理的とされた時代もありました。
インフレになったことで、「住宅価格は上がるもの」という考えが広がってきました。購入した家に生涯住み続けるのならば、経済的に見て、年々賃料が上がる「賃貸」を続けるより、持ち家の方が経済的にもメリットが大きくなります。
だから、「多額のローンを組んででも、今のうちに買った方がいい」という主張が増えてきているのです。
「どうしても家を購入したい」という強い思いがあるならば、主張の通り、一刻も早く購入した方がいいでしょう。しかし、そうではないならば、購入と賃貸のメリット・デメリットを比較してから吟味するのがベターです。

■購入と賃貸のメリット・デメリット
マイホームを購入するにしても、賃貸を続けるにしても、どちらにもメリット、デメリットがあります(図表3)。

購入のメリットは、住宅ローンを完済すれば住居費の負担が減ることが大きいです。インフレ時代ではなおさらです。完済後も固定資産税などの税金やリフォーム費用は発生しますが、自分の資産になるので、いざとなれば売却してお金に換えることも可能です。リフォームや間取りの変更も自由にできる点もメリットです。
一方、転勤などがあっても簡単に住み替えはできない点や、住宅ローンを完済したころには設備の老朽化やエリアの寂れが進んでいる可能性がある点はデメリットです。
賃貸のメリットは、ライフスタイルや家族構成に応じて住むエリアや間取りを臨機応変に住み替えできる点です。独身のときは費用を抑えてコンパクトな家、結婚して子どもが生まれたら広い家、子どもが独立したらコンパクトな家という具合に住み替えがしやすいです。
設備の新しい家や活気のあるエリアに柔軟に住み替えできる点も押さえておきたいところです。ローンを組まないので、頭金や諸経費のためのまとまった資金が不要なのもメリットと言えるでしょう。
ただし、賃料は生涯発生する点、原則2年ごとに更新料が必要になる点などから、インフレ時代では特にデメリットになるでしょう。高齢になると貸してもらえなくなる可能性もあります。
このように購入と賃貸には一長一短あります。
■購入VS賃貸 シミュレーション
インフレ時代では、購入した家に生涯住み続けるのならば、「賃貸」を続けるより経済的にもメリットが大きくなる傾向にあります。ただし、細かい前提やどんなライフスタイルを送るかによっても変わる部分は大きい点には留意ください。
購入と賃貸でどちらか悩まれている方のために、生涯の住居費シミュレーションをしておきましょう。
図表4は30歳の夫婦が6000万円の新築(長期優良住宅)を購入した場合と、賃貸に住み続けた場合の住居費の違いです。長寿化の傾向から90歳まで生きる仮定にしました。

購入ですが、マンション購入とし、住宅ローンは年1%の変動金利とし、35年のローン返済期間中の金利が変わらない場合で試算しています。賃貸の場合、子どもの成長にあわせて広い部屋に、子育てが終わって夫婦2人になるとコンパクトな部屋に住み替えると想定しています。
金利条件や物件により試算結果は当然変わるので、あくまでも目安ですが、このケースで試算をすると、購入のほうが賃貸より約171万円安くなります。とはいえ、金額だけを見て「購入」がいいと考えるのは早計です。
購入は頭金500万円が準備できているという前提です。加えて、変動金利が上昇しない前提ですので、今後金利が上昇していくと、購入の方が賃貸よりも経済的な負担が増す可能性は十分にあります。
ただし、図表4のシミュレーションには含めていませんが、購入において、90歳時点でマンションの資産価値があり、無事売却ができればその分は住居費用を圧縮できます。
■ライフプランに合わせて選択するのが正解
将来購入したいという強い思いがあるのならば、インフレ時代では、早いうちの購入をおすすめします。
住宅ローンの返済が定年後まで続くと老後の生活を圧迫しますので、借りるなら早いほうがいい。加えて、インフレ時代は金利が上昇していくフェーズでもあります。住宅ローンの金利が上昇していくのであれば、金利が低いうちに借りておいた方が負担を抑えられます。
頭金が準備できていないから購入できないという方もいるかもしれませんが、いまは、頭金なしで全額を住宅ローンで借り入れすることも可能になっています。
頭金でたくさんの資金を入れず、その分をNISAで運用するというのも、インフレに備えた考えとしては合理的かもしれません。早い時期に住宅ローンを組み、その後に繰上返済を行うという考え方もあります。
ただし、インフレ時代とはいえ、どの物件の価格も上昇するわけではありません。購入する場合、資産価値が下がりにくいエリアや幅広い世代にニーズのあるエリアにある物件を選びましょう。売却したり、人に貸したりすることになっても安心です。
購入か賃貸か迷っている方は、それぞれのメリット・デメリットを把握し、損得だけでなく、ライフプランに合わせて選択すること。誰にとっても「正解」はなく、人によって「正解」は異なります。
なんとなく選ぶのではなく、納得した上で選んだものならば、どちらを選んでも正解です。
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頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント
Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。日経CNBCコメンテーター。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など書籍110冊超、累計200万部。日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。X(@yorifujitaiki)
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(経済評論家・マネーコンサルタント 頼藤 太希)
