米環境保護局(EPA)で開かれた電力料金負担者保護誓約に関するイベントで発言するトランプ米大統領=23日/Kevin Dietsch/Getty Images

CNN)トランプ米大統領は23日、国民にこう問いかけた。2年前に起きた大規模なテレビの機能停止を覚えているかと。

そのような機能停止は起きていない。空想を話すのが好きなトランプ氏は以前と同じように、自身が作り出した出来事を思い出すよう国民にはっきりと求めた。

今回、編み出した話は風力エネルギーについてだった。長年風力発電を激しく非難し、その動きを阻止しようとしてきたトランプ氏は、風力発電が採用されている地域では風が吹いていないとテレビがつかないというでっち上げも含め、虚偽の主張を展開してきた。

これは事実と異なる。風力は複数の電源の一部として使われているのであって、唯一の電源ではない。風が吹いていないときでも送電網は稼働し続け、テレビもついたままだ(風力タービンで生み出したエネルギーを蓄え、風が弱い時間帯に供給できる蓄電池もある)。しかしトランプ氏はこの「テレビが見られない」話を面白おかしく披露することも多く、これまでファクトチェックを免れてきた。

23日に環境保護局(EPA)で行った演説でトランプ氏はこの話の大半をあたかも実際にあった過去の話のように語った。

トランプ氏は「われわれがだまされた『グリーン・ニュー・スキャム』」を非難。そのうえで、こう述べた。「国全体がだまされた。私はだまされなかった。最初から正しく見抜いていた。このくだらない話を聞いた最初の瞬間から分かっていた。風力は本当に素晴らしい、本当に素晴らしいと言っていたが、テレビは見られなかった。みんなドナルド・トランプ対スリーピー・ジョー・バイデンの討論会を見たがっていた。だが風が吹いていなかったので、誰も見られなかった。覚えているか?」

いや、そんなことはない。

2024年6月に行われた、トランプ氏と当時のバイデン大統領による討論会は、数千万人の米国民が視聴した。ニールセンの推計では、テレビだけでも5100万人を超えたとされる。もちろん視聴者には、24年も現在も風力発電量が他州を大きく引き離して最多の州の住民も含まれていた。その州とは、共和党が優勢のテキサス州だ。トランプ氏が勝利した州の中で最も人口も多い。

バイデン氏は大統領在任中、再生可能エネルギーの導入を推進し、35年までに米国の電力を100%「クリーン電力」にする目標を掲げた。しかし、進歩派の民主党議員らが打ち出した議会決議案「グリーン・ニューディール」は、議会で可決されることも、バイデン氏が署名することもなかった。連邦政府のデータによると、24年の純発電量に占める風力発電の割合は10%ほどだった。

虚偽の話はほかにも

23日のイベントでトランプ氏が語った架空の話は、風力発電だけにとどまらない。カリフォルニア州では「毎週末、電圧低下や停電が起きている」とも主張したが、これもまったく事実ではない。同氏は何年もカリフォルニア州について同様の虚偽の主張を繰り返してきた。

ニューサム・カリフォルニア州知事の報道官は24日のメールで、「カリフォルニア州では約6年間、計画停電を実施していない」と反論。22年以降、緊急の節電を呼びかける必要性も一度もなかったとし、州によるクリーンエネルギーと蓄電池への投資が成果を上げている証拠だと述べた。

さらにトランプ氏は、2期目の最初の1年だけで、米国が「19兆2000億ドル(約3140兆円)」の投資を受け入れたにもかかわらず、自分は「まったく評価されていない」と2度嘆いた。そうした評価を得られないのは、2期目に受けた投資はその額に遠く及ばず、最初の1年などなおさらだからだ。CNNが繰り返し説明してきたように、トランプ氏が持ち出す数字はホワイトハウスですら根拠を示せない作りものだ。

本稿はCNNのダニエル・デール記者による分析記事です。