投手なのに打撃で“ギネス記録” 職人も唸るこだわり…ハマの番長が好んだ「長尺バット」
「打席に入れば一人の打者」…三浦大輔氏が求めたバットの振りやすさ
打撃の“ギネス達成”には、投手には珍しいバットへのこだわりがあった。大手スポーツメーカー・ミズノが主催する、親子で野球を楽しめる体験型イベント「ディアルーキー」が、今月4日に東京・千代田区の「MIZUNO TOKYO」で開催された。元横浜・DeNAで投手・監督として活躍した“ハマの番長”三浦大輔さんをゲストに迎え、野球の“つくる楽しさ”を体感できるさまざまなプログラムを提供。中でも大きな盛り上がりを見せたのが、ミズノのトップクラフトマン・名和民夫さんによる「バット削り」の実演だ。
機械で回転する木材から削り出されていくのは、かつて三浦さんが愛用したのと同じ型のバット。豪快に木くずが舞うたびに子どもたちからは歓声が上がり、目を輝かせながら名和さんの手元を注視した。ノギス(測定器)を手に0.1ミリ単位の微調整を重ねる、まさに職人技だ。
「名和さんのバット削りを久しぶりに見させてもらいました。現役の頃は投手なのにいろいろ要望を出していましたが、嫌な顔をせず応えていただきました」と感謝を述べた三浦さん。名和さんは「大体ピッチャーの方は、球団所有のバットを使うことが多かったのですが、三浦さんは自分自身の(バットの)型を持っていた。先発(投手)の方が自分の型を持つようになったのは、三浦さんが最初ではないでしょうか」と振り返った。
トレードマークであるリーゼントヘアと、横浜一筋の深い愛と男気から多くのファンに愛されてきた三浦さん。エースとして通算172勝を挙げた一方、プロ2年目の1993年から引退した2016年まで毎年ヒットを積み重ね、「投手による24シーズン連続安打」というギネス記録を樹立している。
投手といえども、打席にかける思いは人一倍強かった。「打席に入れば一人の選手、一人の打者と思っていたので。自分が振りやすいバットで塁に出られればチャンスが広がり、結果的に点が入れば、投手である自分自身が楽になる。チームの勝利に少しでも貢献できるようにと、一番振りやすいバットを選んでいたんです」と語る。
「手元に届いた時に100%」…職人がバットに込める誇り
名和さんによると、三浦さんのバットは、グリップの形状がなだらかで握りやすい「タイカッブ型」。素材は、現在のプロ選手の約8割が使う非常に硬い「メープル」ではなく、打感が柔らかい「ホワイトアッシュ」だった。サイズも規格外で、通常の投手が84〜85センチの短めを選ぶことが多い中、三浦さんは長距離バッターのように長めの86センチを選択。重量も890〜910グラムと、現在の主流からすると重めのものを選んでいたという。
なぜ長いバットにこだわったのか。三浦さんは「投手が打席に入ったらやっぱり球が怖いので。遠めに立っても当たるように長く、と。そんな気持ちですよ」と、笑顔で茶目っ気たっぷりに教えてくれた。
グラブ同様にバットも見た目にこだわった。「バットに焼き(焼いて木目を出す加工)を入れるのも、職人の皆さんに聞いても、特に反発が変わるわけでもないというので、単純に見た目のカッコよさで入れていました。プロ野球は見られる商売ですし、やはり子どもたちに少しでも憧れをもってほしいと思っていましたから」。
実演の最後に、名和さんは子どもたちにこう語りかけた。
「木製バットは、他の野球道具と違い、慣らすことができません。グラブやスパイクは、自分で型をつけたり手や足で慣らしたりして、やっと使える状態になる。しかしバットの場合は、手元に届いた時に100%の力が発揮できる道具ではないとダメなんです」。まさに職人としての誇りと、多くのプロ選手から寄せられる信頼を裏打ちする重みが詰まった言葉だ。
現役時代、バット製作現場を度々見学に訪れていたという三浦さんも、「少年野球のお子さんたちが使うのは、金属バットが多いと思いますが、バットが出来上がるまでに職人さんがああやって丁寧に、丹精込めて作ってくれたものであることがわかってもらえたら。子どもたちも道具を大事にし、愛着が持てると思います」。今回イベントを通して、野球用具を大事に手入れして使う大切さを、子どもたちは感じ取ってくれたはずだ。(吉田三鈴 / Misuzu Yoshida)

