山火事が起きても「人間の手で消さない」!?世界遺産イエローストーン国立公園が貫くワイルドな自然保護思想【眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産】
10の基準で読み解く「一度は行きたい世界遺産」
10の登録基準に沿って代表的な世界遺産を紹介。景観だけではない、真の魅力が見えてきます。
【登録基準(醃)自然美や景観美、独特な自然現象を示す遺産】
「イエローストーン国立公園」大地が噴く!環境保護の象徴
世界で最初に登録された世界遺産のひとつ、「イエローストーン国立公園」は、世界遺産条約の誕生を象徴する遺産でもあります。1872年、アメリカはこの場所を世界初の国立公園に指定しました。当時、アメリカでは西部開拓と工業化が進む中で自然破壊への危機感が高まっていました。そこで研究者や歴史家、探検家の後押しのもと、イエローストーンの雄大な自然を国として守る仕組みが整えられました。
そして1971年、アメリカ大統領リチャード・ニクソンが、国立公園の設立100周年に当たる1972年に、自然遺産と文化遺産をともに保護する国際的な体制を立ち上げると演説します。こうした動きが結実し、世界遺産条約がユネスコ総会で採択されたのです。
この一帯は約210万年前の北米プレートの移動により、地中の浅い場所にあるマグマ溜まりの上に位置するようになり、火山活動や断層運動、氷河作用などにより多彩な地形と熱水現象が生まれました。カラフルな熱水泉や定期的に熱水を噴き上げる間欠泉、轟音とともに大地を削るイエローストーン川など、美しく多様な地形が魅力です。
公園内で道路などのインフラが整備されているのは2%ほどで、90%以上は原生的な自然が残り、バイソンやヘラジカ、オオヤマネコなどの野生動物が生息しています。
【THINK!】守るとは手を加えること? それとも見守ること?
山火事の鎮火も自然任せ
アメリカの国立公園の管理は、ウィルダネスという考えに基づきます。ワイルド=野生や原生の状態を指し、自然保護を可能な限り自然の力に委ねるということです。そのため、イエローストーン国立公園では、山火事が起きても人命に関わる危険がない限り、多くの場合は自然に鎮火するのを待ち、火災後も植林はせず、植物が芽吹くのを待ちます。こうした定期的な火災と回復の循環が、森林や土壌、生物の多様性を豊かにするといわれています。
規則正しく噴き上がる大地の息吹
イエローストーン国立公園には、300以上の間欠泉(ガイザー)があるといわれます。中でも有名なのが「オールド・フェイスフル・ガイザー」です。約90分間隔で規則正しく熱水を噴き上げることから、名前に「faithful(忠実な)」が付けられました。噴出時の高さは50mほどに達し、最大で3万リットル以上の熱水を噴き上げるそうです。
ここがスゴイ!認定ポイント 虹色の正体はバクテリア
イエローストーン国立公園を代表する熱水泉が「グランド・プリズマティック・スプリング」です。熱水は青色の中心部が最も温度が高く90度に達します。この高温では生物が生息できないため、水は透明で太陽光の波長のために青色に見えます。そこから外側に向かうにつれ温度が下がり、それぞれの温度ごとに異なるバクテリアが生息するため、黄・橙・赤の幻想的な虹色が帯状に広がるのです。
\微生物の種類によって色が変わる!/
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界遺産』監修:宮澤 光 / イラスト:どくだみ三銃士
【監修者紹介】
宮澤 光(みやざわ・ひかる)
NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員。北海道大学大学院博士後期課程を満期単位取得退学。仏グルノーブル第Ⅱ大学留学。2008年より現職。跡見学園女子大学非常勤講師。世界遺産に関するさまざまな書籍の編集・執筆・監修を手掛けるほか、「チコちゃんに叱られる!」(NHK)などの多くのメディア出演や、全国各地で100本を超す講演・講座を実施している。著書に『13歳からの世界遺産』(マイナビ出版)、『世界遺産のひみつ』(イースト・プレス)など。
