スクウェア・エニックス 本社ビル

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スクウェア・エニックス・ホールディングスの看板タイトルの一つで、最新作「ドラゴンクエスト12」が揺れています。開発体制の刷新や、サブタイトルを「選ばれし運命の炎」から「夢の彼方へ」へと変更することを発表したのです。ダークな大人向けの世界観も、明るくワクワクするようなものへと軌道修正を図ることが明らかになりました。突然の発表に戸惑う声も聞こえてきますが、スクエニの業績からその理由の片鱗が見えてきます。
◆傑作が残したまさかの誤算

まず、ドラクエがダークな世界観を取り入れようとしたのはなぜでしょうか。「ドラクエ11」は2017年7月29日に発売しました。前作からおよそ5年の歳月を経てのリリース。この「ドラクエ11」はシリーズの中でも王道中の王道とも言える作品で、ファンの間では非常に評価が高いものとして知られています。

練り込まれたストーリーは感動を呼び、キャラクター造形も優れていました。冒険の中で仲間と絆を深め、最終的に魔王を倒す物語はファンタジーの定番であり、万人におすすめできるRPGに仕上がっていたのです。しかし、セールス的には振るわない結果となりました。「ドラクエ11」を発売したスクエニの2018年3月期のHD事業の売上高は、前期比でおよそ3割の減少となる656億円だったのです。

◆「王道」と「ダークな世界観」の間で揺れ動く

スクエニは2016年11月に「ファイナルファンタジー15」を発売していました。ドラクエとファイナルファンタジーは、スクエニにとって2台巨頭とも言えるタイトル。しかも、当時はこの2つの派生ゲームをモバイル向けに出しており、それが収益の安定化にも寄与していました。つまり、会社としてIPの影響力を落とすわけにはいかなかったのです。

また、当時はゲームファンを中心にダークな世界観が受け入れられていた時代でした。2011年の「ダークソウル」、2012年の「ドラゴンズドグマ」、2017年の「シャドウ・オブ・ウォー」などです。

スクエニはプレイステーション向けの開発を得意としていた会社。このゲーム機は特にコアなゲームファンが遊ぶものであり、複雑なストーリーや重厚な世界観、ゲーム難易度の高さが求められるようになっていました。その傾向が如実に表れたのが2022年の「エルデンリング」で、世界累計出荷本数は3000万本を突破しています。「ドラクエ11」という王道作品で思うような結果が出なかったドラクエが、ダークな世界観という新たな方向性を見出してもおかしくはないでしょう。

しかし、異変が起こります。2024年3月期に220億円ものコンテンツ等廃棄損を計上したのです。開発プロジェクトの見直しなどを行ない、選択と集中を図ったのです。このとき、スクエニは経営方針の大きな軌道修正を行ないました。マルチプラットフォーム戦略への転換です。

◆ホームランを捨てた、生き残り策

プレイステーションの開発に強みを持っていたスクエニが、ニンテンドースイッチなどの任天堂プラットフォーム展開を強力に推進すると発表したのです。任天堂のゲーム機は、プレイステーションとは対極に位置します。年齢を問わず家族で楽しむことができ、ゲームのライトユーザーが中心になっています。

しかも、スクエニは選択と集中を進めるため、数々のモバイルゲームから撤退しました。2025年から2026年にかけては、「星のドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス」「スクールガールストライカーズ2」などの長期間運営していたタイトルを打ち切りました。

その影響もあって売上高は減少傾向にあります。2026年3月期の売上高は2976億円。2022年3月期は3652億円ありました。700億円近く下がっているのです。一方、開発タイトルを絞り込んでいるため、利益率は高まりました。2026年3月期の営業利益率は18%、2022年3月期は16%です。