『お別れホスピタル2』写真提供=NHK

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 4月4日・11日に、土曜ドラマ『お別れホスピタル2』(NHK総合)が前後編の2部構成で放送された。本作は、現代医療のセーフティーネットといえる療養病棟を舞台にした沖田×華の傑作コミック(小学館)を原作に、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』や『透明なゆりかご』(NHK総合)の安達奈緒子が脚本を手がけた、2024年放送のドラマ『お別れホスピタル』の続編である。

参考:岸井ゆきの、『お別れホスピタル』で得た“演技”への原点回帰 “生と死”を見つめた先に

●変わらぬ日常と、生と死の境界線

 まず印象的だったのは、シリーズが変わっても、これまでと変わらぬ日常が描かれていたことだ。前編の冒頭は、夜の病室の光景から始まった。カーテンの向こう側がゆっくりと明るくなったと思ったら、主人公の看護師・辺見(岸井ゆきの)の「おはようございます」という声と共にカーテンが開けられ、朝の光が入り込む。第1シリーズの冒頭が、辺見の車から見た朝焼けの光景から始まっていたこととも繋がり、視聴者はそこに変わらず続いてきた辺見の日常を見つめずにはいられない。

 さらに言えば、第1シリーズ第1話で辺見が見つめた「窓辺に映る3人の死者たちの光景」や、第2シリーズ後編で辺見が見つめる「元気だった頃の安斎(伊東四朗)の姿」をそこに重ね、生と死の境界に思いを馳せることもできるのだ。

 カーテンのこちら側には、第1シリーズで描かれた妻・久美(泉ピン子)の死後を生きる、人工呼吸器をつけた水谷(田村泰二郎)の姿がある。別室には、「ケンさん」ことケアワーカーの南(長村航希)に変わらずべったりの幸村(根岸季衣)や、より愛されキャラになった大戸屋(きたろう)がいる。「一度来たら退院する人はほとんどいない」という療養病棟が舞台だからこそ、彼らが変わらずそこにいるということに、ひとまず安堵せずにはいられなかった。

●「生きるってなんだろう」問い続ける人々の姿

 『お別れホスピタル2』は、全4話構成だった第1シリーズと違い、前後編の2話構成のため、より凝縮された展開になっていた。第1シリーズの最終話は、辺見の「たとえどんな死を迎えても、私は私で、あなたはあなただ。死ぬってなんだろう」というモノローグで終わっている。

 一方、第2シリーズ前編は、「ただ生きる」だけでは心が休まらない人間の性を思うと共に「生きるってなんだろう」という問いかけで終わり、後編の終盤は「あなたと話したい」という辺見の呼びかけで幕を閉じる。療養病棟の慌ただしい日常と、何人もの生と死をたった2話の中に凝縮しながら、本作が描こうとしたのはまさに、人々の「執着」とその果ての孤独、そしてそれでもなお「対話」することの大切さだった。

●病棟に響く「あなたが欲しい」と、様々な執着

 後編において、大戸屋がよく鳴らすナースコールのメロディが「あなたが欲しい(Je te veux)」というシャンソンであることが、患者である作家・桜田(YOU)によって明かされた。「あなたが欲しい」――ある意味それは、第2シリーズのテーマとも言える「執着」の歌だろう。

 例えば、患者の安斎が忘れられない女性・林美枝(渡辺えり)を探してほしいと願うことを、医師の広野(松山ケンイチ)は「執着」と形容した。桜田の元編集者・秋山(広岡由里子)が自身の桜田への憎しみを「執着」と言ったことや、死の間際まで「アッキー」を思わずにいられない桜田の思いもまた「執着」だ。

 患者・千代子(阿川佐和子)の夫・三郎(柄本明)は、妻の死という現実を受け入れられず「生」にしがみつくほかないし、闘病中の看護師・赤根(内田慈)は、病状が悪化しできないことが増える中で、天職だった仕事に執着せずにはいられない。また、辺見の妹・佐都子(小野花梨)に多くのことを望み過ぎてしまう母・加那子(麻生祐未)の思いも、愛ゆえの執着と言えるだろう。

●執着の果ての孤独と、「対話」がもたらす救い

 「日々、風の中のろうそくみたいな命と向き合っている」その場所、「あなたが欲しい」が鳴りやまないその場所は、患者やその周囲の人々の様々な「執着」で溢れている。

 執着のその先で人は、どうにもならない現実を突きつけられる。死は彼らを待ってはくれない。孤独な桜田の前に秋山が現れることは二度とないし、死の間際に見る夢の中でさえ、秋山は何も言わず桜田を見つめているだけだ。それでも、ずっと言いたかった「ごめんなさい」と「ありがとう」を口にすることで、桜田は静かに亡くなった。

 執着のその先で、人はたった1人で自分自身の人生と、あるいは完全には分かり合うことができない他者の思いと向き合うしかない。本作はそんな事実を突きつけながらも、それでも誰かと対話することが救いになり得ることを告げるのだ。桜田と、彼女のファンだった医師・谷山(国広富之)や辺見との会話を通して。あるいは、赤根と大戸屋の絵を介した対話を通して。これが最期と知って、愛する妻への一生分の思いを込めた三郎の言葉も、まさに濃密な「対話」だった。

 そして何より、「1人が好き」な広野と辺見が、患者たちとの関わりを通してやり場のない思いを抱えた時に、何かを食べたり飲んだりしながら話をする時間を互いに必要としていること。そんな2人の関係性が見ていてなんとも心地良いのは、安達奈緒子脚本作品に共通する「共に生きる」登場人物たちの理想的な佇まいだからだろうか。

 「あなたと話したい」という言葉と共に、本作は終わった。「最後は1人」で死と向き合わなければならない人々の過酷な戦いを日々目の当たりにしているからこそ、辺見は「あなたと話したい」と願うのだ。「命は一つしかない」から、「あなた」を通して「私」を見つめたい。「私」を通して「あなた」を見つめたい。そしてそれこそが「生きる」ことなのだと、『お別れホスピタル2』は教えてくれたような気がした。(文=藤原奈緒)