「正直、手も足も出ない」から4年 突きつけられた現実…北欧に渡った姉妹が再び挑む五輪
志賀葵・紅音姉妹…日本女子アイスホッケーの主力はなぜ海外へ?
アイスホッケー女子日本代表「スマイルジャパン」は、2014年のソチから4大会連続の五輪出場を果たし、6日にフランスとの1次リーグ初戦を迎える。北京大会では初めて準々決勝に進出し、過去最高の6位。ただ選手たちは厳しい現実を突きつけられたのだという。それから4年、強くなるためにスウェーデンへと渡った姉妹は、何を感じたのか。
北京五輪の日本は、出場10か国の中で世界ランキング下位の5チームが戦うグループBをトップ通過。史上初めて準々決勝へ進んだ。ただ試合は、のちに銅メダルをつかみ取るフィンランドに1-7の完敗。メダルが目標と口にしてきた選手たちが突きつけられた現実だった。
「フィンランド戦の時、正直手も足も出ないなと思ったんです。今のままなら絶対に勝てないと」
こう口にするのは、3大会連続の五輪出場となるDF志賀葵だ。2018年の平昌五輪ではチーム最年少の女子高生。試合での滞氷時間はほとんどなかった。4年後の北京ではチームの主力DFに成長したものの、今度は世界との差を身をもって味わった。さらにうまくなるにはどうすればいいのかと考えた末に、2023-24年にスイスリーグへ。さらに五輪のある今季を、アイスホッケー強国のスウェーデンで過ごすことにした。同国中部のエルンシェルツヴィークを本拠地とする強豪「モド」でプレーする。
スウェーデンの女子リーグは欧州随一の規模で、各国の代表選手が名を連ねる。試合ではゴール前に大きな選手がガンガン飛び込んでくる。女子アイスホッケーのルールでは男子のような激しいチェックは反則となるが、お構いなしだ。国内とは審判の判定基準が全く違う。DFにとっては相手選手を抑える術を日々考えさせられる。
身長166センチの志賀葵は、日本代表の中では特に小柄ではない。ただここでは世界が違った。「国内にいると、海外の選手とやる機会がどうしても少ない。毎年世界選手権に出るたびに、体の大きさやリーチの長さに驚かされる。その環境の中でプレーしたいと思ったので」。望んだ経験を得られたシーズンだった。
日照が3時間まで減る町で…変わった常識「特別に考えなくなった」
同じ思いから日本を飛び出したのが、1学年下の妹・紅音だ。北京五輪の翌年、2023-24シーズンに世界最高峰の北米プロリーグへ挑戦したのを皮切りに、昨季からは姉と同じスウェーデンで戦う。かつては姉と同じくDFだったが、代表落ちした平昌大会の後にFWへ転向。昨年の五輪最終予選でも3試合で2ゴール4アシストを記録するなど、瞬く間に日本のエースとなった。
「私自身、エースとしての自覚を持っているわけじゃない。メディアに取り上げられることで頑張らないとと気持ちを奮い立たせている面があるんです。ホッケーを見た誰もがそう思う選手になるために」
現在所属するのは、北極圏にほど近い街を本拠地とする「ルレオ」だ。北緯65度。北海道最北端の稚内が北緯45度だから、それよりはるか北にある。最も短い時には1日の日照が3時間ほどまで減る町で、地道にホッケーと向き合ってきた。
「4年前は、体の大きさだったり、リーチが長い選手とやる時に構えてしまう部分があって……。なかなか思うようにできないことが多かった。でも海外でプレーすることで、国際試合の中で構えてしまうことがなくなった。国内でやってると、海外の選手とやる時に焦るんです。海外の選手は体の強さも、判断の速さも違うので。特別に海外の試合というのを考えなくなったのが、私の中で一番大きいことですね」
リーグでは姉妹対決もあった。姉・葵は「試合中は妹だから意識するとかはないですし、お互いの試合をYouTubeで見たりもするんですけど……」と笑う。「日本とは時間が合わないので、姉妹で結構連絡はします、たまに電話もしますし。もうちょっとシュート打てばとか、日本語で言い合えるので」。拠点を置く北海道・苫小牧では、一緒に住んでいた2人。「ケンカもしますよ」と口にするが、日本のために力を合わせる時がやってきた。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
