「地獄旅」からの脱出 フランス人を救った日本のTVドラマ
「日本は終わった」「未来は暗い」――そう言われることが多いこの国で、フランス人YouTuberのフロリアン氏がなぜ「日本こそが私の終の棲家だ」と断言するのか。
フランスから日本へ移り住んだフロリアン氏が、日々の生活で感じる日本の「奇跡」と、この国の強さ、そしてこれから私たちが向き合うべき課題について綴った書籍『なぜフランス人の僕が、日本を“天国“と呼ぶのか』。
なぜ、外国人である彼が、日本人以上に日本の未来を信じ、愛することができるのか。その理由を紐解きます。
フランスから日本へ移り住んだフロリアン氏が、日々の生活で感じる日本の「奇跡」と、この国の強さ、そしてこれから私たちが向き合うべき課題について綴った書籍『なぜフランス人の僕が、日本を“天国“と呼ぶのか』。
なぜ、外国人である彼が、日本人以上に日本の未来を信じ、愛することができるのか。その理由を紐解きます。
(本記事は『なぜフランス人の僕が、日本を“天国“と呼ぶのか』から一部を抜粋・編集して掲載しています)
なぜ、私の人生は日本で救われたのか
私が10年以上前にフランスでの生活を捨て、遠い異国の地である日本に骨を埋める覚悟で移住した「本当の理由」は、単に「日本のアニメが好きだから」「日本の食事が美味しいから」といった、多くの人が想像するようなものではありません。
それはもっと深く、私の人生の根幹に関わる、切実な理由でした。シンプルに言えば、日本は、暗闇の中にいた私の人生を照らす、唯一の「光」だったのです。
選択肢が閉ざされていくフランスでの過去
この話をするためには、まずフランスにいた頃の私の過去について、正直にお話ししなければなりません。私は、フランスでごく普通の、恵まれた育ち方をしたわけではありませんでした。父親との関係は難しく、家庭にはあまりお金もありませんでした。住んでいたのは、団地が立ち並ぶ、決して治安が良いとは言えない地域です。そんな環境の中で、私は16歳で高校を卒業することすらできませんでした。
大人に近づくにつれて、私は自分の人生の選択肢が、どんどん狭くなっていくのを感じていました。まるで、見えない壁に四方を囲まれ、閉じ込められていくような感覚。明るい未来を想像することすら、できなかったのです。
そんな荒れた日々から抜け出すために、私はフランス海軍に入隊しました。当時の私にとって、日本の精神――努力、礼儀、あきらめない心――に強く憧れ、その想いが私を変える力になっていたのです。心の空白はまだ埋まりませんでしたが、自分を探す旅を続けることに決め、日本へ向かうことになります。
職場という名の「地獄旅」
フランスでの閉塞感を象徴するのが、日本に来る直前に働いていたフランスのスキーリゾートでの経験でした。モンブランの麓にあるその高級ホテルは、そこで働く季節労働者だった私にとって、今思えばまさに「地獄旅」でした。
驚いたのは、多くの若いスタッフにとって、そこは「仕事」ではなく「遊び」に来る場所だったということです。仕事とプライベートの境界線が完全に崩壊していました。会社から提供された住み込みアパートは、毎日のパーティーのせいで、わずか3日で戦争の後かのようにボロボロに。お酒とドラッグの匂いが充満し、人がまともに生活できるような環境ではありませんでした。
最も衝撃的だったのは、スタッフが平気でドラッグをやり、仕事中にまでお酒を飲んでいたことです。ある晩、キッチンの責任者であるはずのシェフが、薬物の影響で完全に「ボーッ」として仕事にならないのを目撃しました。社長に報告しましたが、返ってきた言葉は「置いておいて」の一言だけ。
この職場は半分が社長の「仲間」で固められ、何をしても許される無法地帯だったのです。そして、社長がお客さんを殴って階段から突き落とすという傷害事件を起こし、もはや無茶苦茶でした。
私は、この半年の契約期間を終えることなく、この職場を去ることを決意しました。当時の私は、これが世界の「当たり前」なのだと、どこかで思い込んでいました。そんな歪んだ労働観しか、私にはありませんでした。
そんな私の暗く、閉ざされた世界に、ある日突然、一筋の光が差し込みました。それが「日本」でした。
アニメの『ONE PIECE』をきっかけに、私は日本のポップカルチャーに夢中になりました。そして、ある時から日本の映画、ドラマ、音楽といった文化そのものに、さらに深くのめり込んでいったのです。それは、私の鬱屈した日常とは全く違う、きらびやかで、希望に満ちた世界に見えました。特に日本のドラマは、私の人生観を大きく変えるほどの衝撃を与えてくれました。当時の私が観ていたのは、1995年から2010年頃の作品が中心です。
最初に心を奪われたのは、『花より男子』でした。貧乏な女の子が、お金持ちばかりの学校に入り、そこでトップに君臨するイケメン4人組「F4」と出会う。最初は対立しながらも、やがて恋に落ちていく…。正直に言って、フランスにはこのような「純粋な恋愛」を描くドラマはほとんどありません。だからこそ、その純粋さが新鮮で、とても美しく感じられたのです。
他にも本連載の原案書籍なぜフランス人の僕が、日本を“天国“と呼ぶのかでは
・フランスから見た日本の食文化の品格
・日本のお風呂・トイレ文化の衝撃
など、あなたが日常で見過ごしている「奇跡」に著者が深く迫ります。

著者情報
フロリアン(Florian)
京都在住のフランス人YouTuber。フランスと日本の文化の違いをテーマに、食べ物・働き方・人生観など幅広い話題を発信している。自身の経験をベースに、等身大の言葉で「外国人から見た日本の魅力」を伝える動画が多くの共感を呼び、国内外にファンを持つ。現在は京都を拠点に、自身が代表を務める「KyoFlow合同会社」を通じて、ホテルマーケティングや文化交流のプロジェクトにも携わっている。
◆フロリアンさんの記事一覧はこちら
【ECHOES連載企画】なぜフランス人の僕が、日本を“天国“と呼ぶのか
第1回 「席取りでスマホを置ける国は奇跡」 在住10年のフランス人が日本から離れたくない理由
第3回 「日本は優しくない」と主張する前に。フランス人YouTuberが語る「差別」と「区別」の境界線
第1回 「席取りでスマホを置ける国は奇跡」 在住10年のフランス人が日本から離れたくない理由
第3回 「日本は優しくない」と主張する前に。フランス人YouTuberが語る「差別」と「区別」の境界線
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