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高級ジュエリーブランド、ジョン・ハーディのクリエイティブチェアマンに就任したリード・クラッコフ氏はブランドの新たな方向性を打ち出し、ジュエリー業界に革新をもたらしている。

伝統的なバリ島のルーツを尊重しつつも、カジュアルでセクシーなスタイルにシフトし、新コレクションがベストセラーになっている。

マーケティング手法として、AR投稿やインフルエンサー活用でブランド認知度を高め、次のステップとしてホームアクセサリーの展開を計画中。



リード・クラッコフ氏がジョン・ハーディ(John Hardy)のクリエイティブチェアマンに就任してから、2年が経った。そして同氏は、その類まれな才能がいまなお健在であることを証明している。

クラッコフ氏は、かつてコーチ(Coach)とティファニー・アンド・コー(Tiffany & Co.)で、カテゴリーミックスの枠を大きく広げ、その堅苦しさをやわらげることで、両ブランドに変革をもたらした。そしていま、同氏は創業50年を迎えるファインジュエリーブランド、ジョン・ハーディに新たな命を吹き込もうとしている(同ブランドの株式の過半数は2014年からLキャタルトン[L Catterton]が所有)。クラッコフ氏による初のコレクションのうち、5つはすでにジョン・ハーディの歴史のなかで最大級のベストセラーになっており、新旧問わずファンの心をわしづかみにしている。また、同氏がジョン・ハーディのマーケティングおよびリテールプレゼンスにもたらした、ディスラプティブといってもいい華麗さも、新たな可能性のドアを開きつつある。「カジュアル」「セクシー」「クール」「コンフィデント(自信に満ちた)」──これらの言葉でクラッコフ氏はジョン・ハーディが進む新たな方向を表現している。

「我々が目指しているのは、大手のブランドや、従来のラグジュアリーブランドが辿る道をなぞることではない。そんなことをしても高くつくだけであり、ハードルが上がるだけだからだ」と、クラッコフ氏は米グロッシーに述べている。「ほかのジュエリーブランドはフォーマルさや慎ましさ、ステータスを重視しているが、我々のアプローチはもっとゆったりしている」。

クラッコフ氏が打ち出した新リテール体験



クラッコフ氏が2022年に合流する前の何十年にもわたって、ジョン・ハーディはこのアプローチの対極にいた。クラッコフ氏の言葉を借りれば、バリ島のルーツと職人芸にあまりにも忠実に敬意を表することが、同ブランドの創造力の足かせになっていたのだ。また、商品に関しても、バラエティーに乏しいわりに、その品揃えは無駄に幅広かった。

だからこそ、ジョン・ハーディには伸びしろがあると、クラッコフ氏は力説する。そして、その実績を見れば、クラッコフ氏こそがその仕事にうってつけの人物だった。

ジョン・ハーディは11月26日、米国3号店となる新店舗をマイアミデザインディストリクトにオープンした。これに先立つ2カ月前には、ニューヨークのロックフェラーセンターに2つ目の店舗をオープンしている。ちなみに、米国内にある店舗の第1号はニューヨークのソーホーにあり、東南アジアにもジョン・ハーディの店舗は点在している。実店舗のオープンは今後も続くと、クラッコフ氏は話す。

新店舗の数々とその「エキサイティングな」リテールロケーションに触れて、「これはジョン・ハーディの新たなリテールコンセプトの始まりにすぎない」と、クラッコフ氏は語る。そのどちらでも、「鮮やかで表情豊かなマリーゴールドオレンジ」の配色を通してバリ島が表現されており、それはブランドのサイトとパッケージにも取り入れられている。また、店舗内体験に関しても、従来の小売業から意図的に脱却する路線が取られている。「我々のアプローチは『次世代型ジュエリーブランド』のそれにはるかに近い」と、クラッコフ氏は語る。顧客が望んでいるのは、デスクで店員と話しながら一度にひとつずつジュエリーを見せてもらうスタイルではなく、「あれこれ試着して、その感じをつかむスタイルだ」。

「ジョン・ハーディは、まだそこまで知られているブランドではない」と語るクラッコフ氏にとっての優先事項のひとつが、実店舗などを通してブランド認知度を高めることだ。これが特に顕著になるのは、価格帯や顧客基盤でかぶる、ティファニーやカルティエ(Cartier)などのブランドと比較した時だ。価格についていえば、ジョン・ハーディのジュエリーの平均は1250ドル(約19万円)である。同社の年間売上高は公表されていないが、クラッコフ氏がニューヨーク・タイムズ(New York Times)に語ったところによると、「1億〜10億ドル(約150億〜1500億円)」だという。

デザインの刷新 先鋭的でセクシーなジュエリーに



ライバルから既存のマーケットシェアを奪うことに加えて、ジョン・ハーディにとっての大きなチャンスのひとつが男性の顧客だと、クラッコフ氏は話す。新たな顧客層である男性は、ほかのジュエリーブランドに比べてカジュアルなジョン・ハーディのスタイルに魅力を感じるようになっているという。

しかし、クラッコフ氏に与えられた最重要任務は、やはり何といっても、ジョン・ハーディのジュエリーとデザインコンセプトから興奮を生み出すことだ。「ジョン・ハーディはサステナビリティと職人技に優れた素晴らしいブランドだが、デザインや時代性に関しては、リフレッシュが必要だった」。同氏によれば、ファッションアイテムと比較した場合、ジュエリーは身につける頻度が高く、また多額の出費も強いられるため、その購入には熟慮が要求される。消費者の支出を勝ち取るには、「ほかでは手に入らない、心奪われるものを提供しなければならない」と、同氏は語る。

クラッコフ氏はいま、この課題に真っ向から取り組んでいる。ジョン・ハーディのクリエイティブチームを率いるようになって半年、同氏は9つのコレクションを発表した。新シリーズであるスピアー(Spear)とサーフ(Surf)、ラブ・ノット(Love Knot)、ナーガ(Naga)、エッセンシャルズ(Essentials)の売上はすでに、これまでのジョン・ハーディの全コレクションを上回っている。クラッコフ氏によれば、ジョン・ハーディがこれまでに販売してきたジュエリーのなかで、もっともクールで、セクシーで、大胆で、彫刻的で、カラフルで、高尚なのが、これらだという。セクシーさを前面に押し出したスピアー・チョーカー(Spear Choker)は、売上トップ5のなかのひとつだ。もともとは、マイアミのポップアップストアで独占販売することになっていたボディーチェーンのコレクションは、需要に合わせてパーマネントコレクションのひとつになっている。

「ジョン・ハーディのなかで新たに出てきたカテゴリーが、先鋭的でセクシーなジュエリーだ」と、クラッコフ氏は語る。「これがジョン・ハーディをそこに進出できていないブランドから際立たせている。そうしたブランドにこのタイプのジュエリーを顧客が求めることはない」。

最高5万ドルの高額ラインも投入



ホリデーシーズンに向けて、ジョン・ハーディはハイエンドな限定版を中心とするアーティザン(Artisan)シリーズを投入した。もっとも高額なアイテムの価格は5万ドル(約750万円)だ。売り上げは上々で、そこにはこれにつながるチャンスの存在がほのめかされている。最新コレクションのブラック・サンド(Black Sand)で採用された独自のホワイト・ブラックダイヤモンド加工は、ブランドのシグネチャーアイテムのひとつになりつつある。また、ジョン・ハーディはシングルダイヤモンドとソリティアの使い方も新たに模索している。同ブランドはこれまで、ダイヤモンドの使用をパヴェ(アクセント)・ストーンをあしらったジュエリーに限定してきた。

ファンが期待していいジョン・ハーディの新しい部分は、これだけではない。ベストセラーコレクションのニューバージョン、カジュアル路線のコレクション、来年のブランド創業50周年記念に合わせた限定版デザイン、コラボ商品など、ほかにもいろいろある。ジョン・ハーディの次のステップはホームアクセサリーのカテゴリーだと、クラッコフ氏は話す。

「いちばん難しいのは、刷新することだ」と、クラッコフ氏は言う。「ファンはブランドのどこを好きになってくれたのか? それを守りながら、新たな興奮を生み出せるはるか遠くにまでブランドを動かさなければならない。(中略)ビジネスの前進に有意義な方法で、ファンの注意を引かなければならない」。ジョン・ハーディのジュエリーは、いまも職人400人による手づくりであり、これは注目に値する。

ソーシャルメディアも積極的に活用



マーケティングに関しては、クラッコフ氏は少ない投資で多くの成果を上げることに力を入れている。バリ島の現地モデルだけを起用するだけでなく、ブランドイメージにはビーチカルチャーやサーフカルチャー、自由や旅といったテーマなどが幅広く表現されている。また、ジュエリーの広告にありがちな、同じコレクションのおそろいのジュエリーをモデルたちに身につけさせるのではなく、いまの時代に合わせたスタイリングをイメージに取り入れている。

さらには、AR(拡張現実)生成のソーシャル投稿も開始した。クラッコフ氏によれば、そのエンゲージメント率は平均の投稿の10倍に上るという。インフルエンサーやユーザー生成コンテンツ(UGC)も積極的に活用されており、近いところでは、スタイルアイコンのジェナ・ライオンズ氏がロックフェラーセンターにあるジョン・ハーディの店舗でショッピングを楽しんでいる様子がソーシャルメディアに投稿されている。

今後のジョン・ハーディは、クラッコフ氏の専門知識とビジョンにコミュニケーションの焦点を絞っていくことになっていくようだ。また、若年層が重視する倫理的な製造工程にも、これまで同様にマーケティングの力点が置かれていく見込みだ。なお、マイアミデザインディストリクトに店舗をオープンしたジョン・ハーディだが、クラッコフ氏によれば、アート・バーゼル(Art Basel)などの同地区で開催されるアートフェアに参加する予定はないという。小規模ブランドが雑音に飲み込まれずにメッセージをオーディエンスに伝えるのは難しい、と同氏は述べている。

[原文:Luxury Briefing: Inside Reed Krakoff’s rapid reinvention of a 50-year-old brand

Jill Manoff(翻訳:ガリレオ、編集:戸田美子)