大手広告主たち、 X に見切りをつける。イーロン・マスクは広告主の陰謀を主張

記事のポイント
イーロン・マスクがXのオーナーになってから、反ユダヤ主義的な発言を含む彼のコメントに対する批判が高まり、IBM、Apple、CNN、ディズニーなどの大手広告主がXへの広告出稿を停止した。
マスク氏は、広告ボイコットを一種の陰謀と見なし、広告主を糾弾。AJLアドバイザリーのルー・パスカリス氏は、マスク氏のコメントがXの広告事業に更なる打撃を与える可能性があると指摘。
他のプラットフォームと比較して、Xの経営陣は広告主との関係を優先せず、広告主との溝を深めているという指摘も。
イーロン・マスクがXのオーナーになってから、反ユダヤ主義的な発言を含む彼のコメントに対する批判が高まり、IBM、Apple、CNN、ディズニーなどの大手広告主がXへの広告出稿を停止した。
マスク氏は、広告ボイコットを一種の陰謀と見なし、広告主を糾弾。AJLアドバイザリーのルー・パスカリス氏は、マスク氏のコメントがXの広告事業に更なる打撃を与える可能性があると指摘。
Xへの広告出稿を一時停止した大手広告主は、もう二度と戻ってこないかもしれない。もっともXの運営会社オーナーのイーロン・マスク氏は、そんなリスクを意に介していないようだが。
マスク氏は11月29日、ニューヨークで開催されたディールブック・サミット(DealBook Summit)で登壇し、関係者の懸念を一蹴する強気な発言をした。
事の発端はあるユーザーが11月中旬、Xに投稿した反ユダヤ主義的陰謀論で、これに同調するマスク氏の返信コメントを受けて、IBM、Apple、CNN、ディズニー(Disney)などがXへの広告出稿を停止した。
マスク氏は自身の反ユダヤ主義的投稿については愚かだったとして事後に謝罪したが、ディールブック・サミットの壇上では一連の騒動に対する反省の色も見せず広告主を糾弾し、「この広告ボイコットで会社はつぶされる……全世界がどう反応するか見守ろうじゃないか」と息巻いた。
イーロン・マスクは広告主の「陰謀」を主張
マスク氏がXの前身Twitterを買収して13カ月。今回の騒動は、多くの大手広告主にとって、Xとの広告取引の終わりを告げるきっかけとなりそうだ。社員にも、Xと袂を分かつ決断をした人々が多数いる。フリーランスジャーナリストのクレア・アトキンソン氏が報じた11月30日付の記事によると、Xのリンダ・ヤッカリーノCEO率いる営業チームにも「辞職の波」が押し寄せている。退職者のなかには、2023年6月のヤッカリーノ氏の就任前からいた経営幹部も含まれているという。Xは最近、広告事業回復に注力しているが、せっかくの成果もマスク氏の言動で帳消しになりそうだ。
AJLアドバイザリー(AJL Advisory)の創業者でCEOのルー・パスカリス氏は、マスク氏のコメントについて、ただでさえ厳しくなっているXの広告事業にとどめを刺すような発言だと評し、大手広告主の大半がすでに承知しているとおり、同氏がXの広告依存への不快感を抱いている現状をあらためて示したとした。
「Xのブランドスータビリティに対する広告主の懸念はもっともで、マスク氏の悪ふざけ的な投稿により深刻化している。しかし同氏はこの事態を、広告主が結託して起こした大がかりな左派の陰謀とみなし、広告撤退により同氏を『脅迫』して言論の自由を奪おうとする行為だとしている」とパスカリス氏は指摘する。「しかし、広告取引の分野で30年の経験がある私に言わせれば、広告主らがひそかに結託してXを崩壊させるためその種の行動を起こすと考えるなど、まさに噴飯ものだ」。
今回のできごとは、Xという会社の事業存続に必要な要素に対するマスク氏の認識不足を浮き彫りにした。同氏は広告ボイコットを自身に対する侮辱と受け止めているが、一連の騒動は昨今のプラットフォーム運営では十分起こりうる事態だ。実際、YouTubeやメタ(Meta)も近年、幾度となく同様の事案に対処してきた。
では、Xとの違いはどこにあるのか。これらの企業の経営陣は、世間に向けた自身のイメージにこだわるより自社の事業を守ることを優先し、離脱した広告主を呼び戻すためなら妥協もいとわなかった。とはいえ、広告費の回復に多大な努力を要したかというとそうでもないだろう。プラットフォーム各社が広告主頼みであるのと同じく、広告主もプラットフォームが頼りだからだ。
ブランド各社は投稿すら停止
「X上でのマーケティング活動はブランドセーフティのリスクがかなり大きい。各社の広告出稿停止は賢明な判断だ」と、イービクイティ(Ebiquity)の最高戦略責任者、ルーベン・シュラーズ氏はいう。「ただ、そうした行動がここまで公に取り沙汰された前例はなく、私自身、見聞きしたことがない」。
その点、大手広告主も異論はないはずだ。過去に起きたXに対する広告ボイコットと異なり、今回のボイコットは多くの企業にとって、Xでの広告宣伝活動の恒久的停止になるだろう。ディズニー、パラマウント(Paramount)、ライオンズゲート(Lionsgate)、ソニー・ピクチャーズ(Sony Pictures)など、以前はよく情報発信していた企業も、2週間近くXに投稿していない。
この現象は、過去1年間にXの広告主各社と話し合う機会があった某エージェンシーの経営幹部が10月末、米DIGIDAYに語った話と傾向が一致している。マスク氏による買収以降もXに広告を掲載しつづけた企業は同氏からの非難を恐れてそうしたのだろうが、Xへの支出は買収前に比べ激減したようだ。
「広告の停止は再開より簡単だ。Xの広告ボイコットにみられる特徴は、ボイコットの主な理由がコンテンツの隣接性や監視以外にあることだ」と、調査会社のインサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)でソーシャルメディア部門の主席アナリストを務めるジャスミン・エンバーグ氏は指摘する。「広告主が懸念するのは、マスク氏の会社との取引がもたらすレピュテーションリスクや不確実性だ。加えて11月29日の発言により、広告主とXのあいだの溝はさらに深まるだろう」。
ヤッカリーノ氏の辞任はない?
XのCEOを引き継ぐという難題を引き受けたヤッカリーノ氏にとって、今後の道のりはますます厳しくなりそうだ。マスク氏の暴言に端を発した直近の騒動以前も広告事業は苦戦しており、ガイドライン(Guideline.ai)の調べでは、マスク氏による2022年秋の買収以降、Xの米国内月間広告収入は前年同月比で平均55%減少していた。2023年夏のCEO交代の効果もむなしく減少の勢いは止まらず、5月から8月の平均は前年同月比61%減となった。
「広告主の需要を再び喚起すべくヤッカリーノ氏が挑戦する登山ルートは、いまや急斜面から絶壁に変わった」とパスカリス氏はいう。「マスク氏はTwitter時代から、社会の分断を助長させるような、特定のグループを標的にしたとおぼしきコメントを投稿してきた。それに追い打ちをかけたのが、ディールブック・サミットでの暴言だ。
離脱した広告主を罵倒した発言のダメージは決定的で、信頼回復が果たしてできるのか危ぶまれる。ただし、それでもヤッカリーノ氏はCEOの座を下りないだろうと私は見ている。彼女にとって辞任は失敗を意味するから、自身の評判がどんなに傷ついたとしても、辞めるという選択肢はないと心に決めているはずだ」。
この件に関するDIGIDAYの取材依頼に対し、X側からは回答がなかった。
[原文:Is this X’s (formerly Twitter) final goodbye to big advertisers? It looks like it]
Krystal Scanlon and Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)
