昨季に現役を退き、今季から柏のアカデミーで指導者の道を歩む染谷コーチ。「難しいんですけど、日々が充実していますよ」。写真:志水麗鑑

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 10月9日に行なわれた高円宮杯U-18プレミアリーグEASTの17節、FC東京U-18に4−1で快勝した柏U-18において、CBコンビの池端翔夢と福島大雅が、ひと際存在感を放っていた。

 1ゴールを許したとはいえ、失点シーン以外では相手に目立ったチャンスを作らせていない。とりわけ後半のパフォーマンスが素晴らしく、FC東京U-18に打たれたシュートはわずか2本だった。

 池端は178センチ、福島は172センチながら、183センチのサイズを誇るFC東京U-18のFW山口太陽には1本もシュートを打たせていない。同リーグで9ゴールを積み重ね、得点ランキングで3位タイにつける相手FWをシャットアウトしたクレバーな守備対応を見て、現役時代にDFだった藤田優人コーチの指導が行き届いている成果なのだろうと感じた。

「私は全体のマネジメントをしているだけで、サッカーの細かいところを教えてくれているのは、染谷(悠太)コーチですよ。僕の手が届かないところを選手に強く指導してくれているので、非常に助かっています」

 藤田コーチはそう謙遜し、「今のチームが見せているパフォーマンスは染谷コーチのおかげ。彼は去年まで選手をやっていたとなると、選手もものすごく聞く耳を持ちます」と染谷コーチの貢献を語る。
 
 主にCBとしてJリーグ通算284試合に出場し、昨季に柏で現役を退いたばかりの指導者からのコーチングは、確かに選手に大きな影響をもたらしている。池端が染谷コーチへの感謝をこう述べていた。

「本職はボランチですが、怪我人が出た影響で今はセンターバックをやっているので、染谷さんの存在が本当にありがたくて。僕はサイズもないし、スピードもそこまでない。だからポジショニングや予測で相手より上回り、先にボールに触る、跳ね返す、マイボールにする。そういう準備の重要性は、染谷さんの指導から学ばせてもらっています」

 そして福島も、本職はボランチでCBにコンバートされているが、適応できているのは染谷コーチのおかげだと話す。

「身長が大きい選手に競り勝つのは難しいので、相手がトラップした瞬間を狙ってボールを奪いに行くのを意識するところは、染谷さんから教わったことです。また試合前日にも染谷さんから、1対1の対応方法、あとはリスク管理として、球際で潰しきる重要性とかも、結構細かく教わりました」

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 藤田コーチや選手たちの数々の賛辞を交えながら、いざ染谷コーチに取材をしても、当の本人は「いやいやいや、僕は藤田コーチのサポートをするくらいしかできていないですし、僕自身の指導の手応えは全然感じていないですよ」と謙虚な姿勢を貫くばかりだった。

 口から出るのは反省、でも話のトーンからは、1年目となる指導者という仕事への充実感が伝わってくる。

「指導者はめちゃくちゃ難しいですよ。選手それぞれの状況によって、僕の話の受け取り方は変わってくるので、どう話せば選手が受け入れやすくなり、スッと言葉が入っていくのか、言葉のニュアンスは試行錯誤の連続で難しいです。

 最初は自分も頭でっかちになってしまっていたところがあったので、選手の感じていることを拾いあげようと、今は意識しています。難しいんですけどね、でも日々が充実していますよ。選手が迷いなくプレーできるように、これからも手助けしていきたいと思っています」
 
 話す内容からも人柄の良さが伝わってくる。こういう人格者には選手もついていきたくなるのだろう。だから印象的だったのは、4ゴール目を決めたワッド・モハメッド・サディキが得点後、染谷コーチと抱擁しに行ったシーン。本人が振り返る。

「ピッチに送り出してくれる時、染谷さんが『1点取れよ、1点取るんだぞ』とすごく鼓舞してくれたので、期待に応えられたのが嬉しくて、とっさに抱きついてしまいました(笑)。染谷さんはたくさん声をかけてくれるので、その期待に応えたいと思っていたので」

 試合が終わると、染谷コーチは選手たちを携え、また自らも率先して動き、グラウンドの片付けや手入れに勤しんでいた。降りしきる雨の中で見た情景が、妙に脳裏に焼き付いている。こういう縁の下の力持ちが組織を支えるアカデミーは、これからも土台が頑丈だと思う。

取材・文●志水麗鑑(フリーライター)