もし80歳まで働くとしたら、どのような働き方を選びたいでしょうか。人生の探索と学習を成功させるために考えるべき7つの問いを考えます(写真:KY/PIXTA)

人生100年時代、もし80歳まで働くとしたら、あなたはどんな働き方を選びたいだろうか。「老後」に備えてお金を貯めるために、心身の消耗も厭わず働くという生き方は、過去のものとなりつつあり、人生には探索と学習が欠かせなくなる。
14万部突破のベストセラー『ライフ・シフト2』から、人生の探索と学習を成功させるために考えるべき7つの問いについて、抜粋・編集してお届けする。

人生のマルチステージ化で起こること

これまで多くの人が、教育→仕事→引退という古典的な3ステージの人生を送ってきた。しかし、例えば今、20代半ばの日本人は、親の世代よりはるかに長い、60年間にも及ぶ職業人生を送る可能性がある。


そうした未来を想像したとき、親たちと同様のキャリアの道筋を歩みたいと思う20代の人は、どれだけいるだろうか。

多くの人が、自分にどのような選択肢があるかを知り、自分が得意なのはどのようなことで、好きなのはどのようなことなのかを学びたいと思っているだろう。

3ステージの人生を生きてきた人は、探索や移行に取り組む機会がほとんどなかった。探索は不要であるばかりか、逆に大きな不利益をもたらす可能性すらあった。

3ステージが主流の時代に、もし同僚たちと異なる行動を取ろうとしたなら、上司から疑いの目で見られたに違いない。

しかし、そのような固定観念は急速に崩れはじめている。人生のマルチステージ化が進んで、人々が生涯で経験する移行の回数が増えつつある。本人が主体的に移行を選ぶこともあるだろうし、本人の意に反して、やむなく移行を経験せざるをえないケースもあるだろう。

私たちの人生は、さまざまな能力やスキル、人的ネットワークによって構成される「足場」から出発して、いくつかの「ありうる自己像」に向けて進んでいく。

探索と学習の面で、未来の「ありうる自己像」に関するあなたの考え方は妥当だろうか?

この点を検討するとき、未来を予測しようとするより、みずからが目指す未来を構築・探索するうえでどのようなステップが必要かについて理解を深めることを重んじるべきだ。

あなたの人生計画を機能させるためには、どのようなことが必要なのか。思い描いている人生の好ましい要素を最大化するには、どうすればいいのか。

いま、あなたが念頭に置いている進路について考えてみてほしい。おそらく、その道を歩む過程では、いくつもの移行を遂げることが前提になっているだろう。

新しい職種に転身したり、キャリアを全面的に転換させたり、住む地域や国を変えたりすることも考えているかもしれない。その進路について、次の問いを検討してみよう。

*問い1 私は十分に探索を行っているか?

未来の移行に向けて、自分のストーリーの幅を広げ、探索を行う準備ができているか。未来の選択肢を狭めてはいないか。未来の可能性について幅広い助言を求めているか。現在の自己像だけでなく、未来の「ありうる自己像」の観点でも、未来を考えているか。

*問い2 私は人生の計画を修正するのに役立つ人的ネットワークを築けているか?

いまあなたは、未来への計画をできる限り具体的に描き出しているに違いない。しかし、時間が経てば、その計画は変更や修正が避けられない。というより、変更や修正を行ったほうがいい。

そこで、いま想定している未来の人生のステージで、人的ネットワークの活力と広がりを維持し、計画の検証と修正を行うことが可能かを考えよう。

学習の機会を設けるための3つの問い

人生のすべてのステージで学習に大きな投資をすれば、あなたが検討している人生の計画がうまくいく可能性が高まる。

*問い1 私はどのように感じるか?

いま思い描いている進路とステージの1つひとつについて、よく考えてみよう。あなたはどのように感じるだろうか。内面からモチベーションが湧き上がり、主体的に学習できそうだろうか。

激しいストレスにさらされて、主体的な姿勢をいだけない状態でも、ひとつのステージだけなら乗り切れるかもしれない。しかし、複数のステージを乗り切るのは無理がある。

*問い2 十分に学習できるか?

計画している人生のステージすべてを細かく検討し、それぞれのステージで何を学ぶことになるかを考えよう。

人生のなかには、経験の幅が大きく広がり、刺激的な人たちに囲まれて過ごせる可能性が高い時期がある。このように学習量が多いステージは、人生においてきわめて重要な意味をもつ。そうしたステージを大切にしよう。

*問い3 足場を築けるか?

未来の選択肢を支える足場を築くために、スキル、能力、人的ネットワークをはぐくむ必要がある。計画している人生のステージすべてを点検し、それぞれのステージでどのくらい足場を築けそうかを見極めよう。

すべてのステージで足場を築くための活動をする必要はないが、人生全体でそのような機会があまりに少なければ、未来の選択肢が狭まってしまう。その点は肝に銘じておくべきだ。

学習できる場を確保するための2つの問い

どのように自分の空間をつくり、どのような土地で暮らすかによって、どのくらい学習できるかが影響を受ける。

*問い1 学習に適した場をつくっているか?

人生のそれぞれのステージで、自分がどのように生きるかを確認しよう。学習が促進されるような場をつくれるだろうか。

*問い2 どこに住むか?

生涯の間には、学習を促進するために人材のクラスター(集積地)で生活するべき時期があるかもしれない。一方、そうしなくても学習できる時期もあるだろう。それぞれの時期の人生のリズムを意識しよう。

(アンドリュー・スコット : ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授)
(リンダ・グラットン : ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授)