菅義偉首相から不可解な失言が飛び出したのは1月13日の記者会見だった。「国民皆保険。多くの皆さんがその診察を受けられる今の仕組みを続ける中で、コロナがあって、そうしたことも含めてもう一度検証していく必要がある。それによって必要であれば、そこは改正する」

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 国民皆保険制度の見直しに踏み込んだような発言はネットで即炎上。翌14日、加藤勝信官房長官(65)は「制度の根幹を守る中でどう考えるのか。よく検討していきたいとおっしゃられた」とボスの火消しに追われた。だが普段、官房長官としての存在感がないともっぱらだ。


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 旧姓は室崎。祖父は島根県議会議長を務め、“参院のドン”青木幹雄元官房長官と親しかった。父親は日野自動車の副社長を務めるなど経済界で活躍。東大から大蔵省へと進んだ勝信氏は加藤六月元農相に秘書官として仕え、その後、長女と婚約。だが破談となったため次女と結婚し、加藤家に婿入りした。政治部記者は「そうまでして政治の道に執着した割に、今も官僚臭さが抜けない」と嘆く。

差し入れに見えた加藤氏の政治センス

 政治家らしからぬ逸話は枚挙に暇がない。第二次安倍政権発足時に官房副長官に就いた際、当時の安倍晋三首相や菅官房長官から「お金を使って若手議員らと飲みに行って人脈を広げろ」と助言されたが腰は重かった。厚労相だった2018年の通常国会直後には所属する竹下派のライバル、茂木敏充経済再生相(当時)が、派の実力者だった吉田博美・党参院幹事長(同)に法案成立のお礼に、大量のあんパンを持参。吉田氏が「加藤さんは何も持って来なかった。総理になれないな」と笑っていると、近くにいた加藤氏は頭をかいて謝罪。その後、銀座で高級アイスを大量に買い、慌てて差し入れた様に茂木氏との政治センスの違いを周囲は感じ取った。若手議員との勉強会では「この項目に、なぜ金額が入っていないんだ」と財務省主計官のような指摘を連発する。

「菅氏は、2012年の安倍氏の再登板の際に汗をかいた加藤氏を信頼していたのだが、官房長官抜擢は失敗だった。批判の盾にもなれず調整能力もない」(政治部デスク)。政界では「安倍に菅あり、菅に菅なし」と言われるが、まさに加藤氏の力量不足を指摘している。

 加藤氏のネット上でのあだ名は「ライス加藤」。厚労相時代、質問をはぐらかす様子を、「朝ご飯を食べたか」という質問に「(パンは食べたが)ご飯は食べていない」と答える「ご飯論法」に例えられたのがきっかけだ。内閣支持率が下げ止まらぬ中、「ライス加藤」のままでは通常国会を乗り切れまい。菅氏とともに加藤氏も正念場を迎えている。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年1月28日号)