ナオ・オブ・ナオ

「ハイ、チーズ!」
 5月13日、このフレーズで始まる “ある曲” のMV(ミュージックビデオ)が、YouTubeを通じて世間に発表された。その曲のタイトルは『FLASH』。本誌2月18日発売号のスクープ報道を元に作られた、アンサーソングである。

 同曲は、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)発のアイドルグループ「豆柴の大群(以下・豆柴)」のシングル曲として、5月14日にデジタル配信がスタートされ、6月10日に発売された1stアルバム『スタート』の2曲目にも収録されている。

 題材になった「報道」とは、豆柴のリーダーであるナオ・オブ・ナオ(20、以下・ナオ)が、一般人だった2018年11月の19歳当時に、友人たちと未成年飲酒をしたというものだ。本誌の取材に対しナオは、所属事務所のWACKを通じ、事実関係を全面的に認めた。

 同事務所の代表取締役・渡辺淳之介氏は、関係各所やファンへの深謝とともに、「事態の重さを鑑みて、ナオ・オブ・ナオに関しては深く反省を促し、今後このようなことがないよう、しっかりと監督し、今まで以上に豆柴の大群の活動に精進させたいと存じます」という公式声明を発表。退所・謹慎の措置を取らずに活動を続けさせる方針を示した。

《夢を真っ青にした閃光》……歌詞に込められた「表現者の意志」

 豆柴の楽曲『FLASH』のサビには、すべてこの一節がある。

《夢を真っ青にした閃光》

 同曲の作詞家は「JxSxK」。WACK代表の渡辺氏が、作詞をする際のペンネームだ。渡辺氏は、豆柴誕生よりずっと以前から、「BiS」や「BiSH」といった同社を代表するロックアイドルたちの楽曲作詞と、プロモーションにおけるプロデュース全般を手掛けてきた “名物プロデューサー” だ。

「FLASHさんからお問い合わせをいただいた日、夜遅くだったと思いますが、すぐにナオに電話して事実確認をしたんです。そしたら彼女が、『事実です……』と。

 僕も、“お先真っ暗” な心境だったんですが、電話越しなのに、顔面蒼白になっているナオの顔が目に浮かんで。そのときの印象を、このフレーズに落とし込みました。

 当時、アルバムの制作が進んでいたので、じつは報道されたあとすぐに、曲はできていました。ナオとも、ナオの親御さんともたくさん話をしまして、僕のほうでは全体を通して、『ナオの報道されたときの気持ち』を歌詞にしたんです」(渡辺氏、以下同)

 ではなぜ、スキャンダルを楽曲にする方法を選んだのか。

「僕らの音楽は『ストーリー』を大切にしていて、いま起こっていることが、すごく反映されています。たとえば、あるグループで誰かが脱退したときに、ただ見守るんじゃなくて “さよならソング” を作ったり。

 ですから『FLASH』も、その流れのなかで出すことに決めました。報道に対する怒りではなくて、『やってしまった』という “後悔の歌” です。一番に感じて頂きたいのは、『間違っていたのは理解している』ということ」

 当のナオ本人は、どう感じていたのだろうか。

「私の過去の過ちが報道されることを、渡辺さんからお聞きしたときは、まず『周りのみなさんに、ご迷惑をおかけしてしまう』と思って、顔面蒼白になりました。

 飲酒現場にいた当時は、一度(地元・北海道を中心におこなっていた)芸能活動をやめて就職していた時期で、『自分はもう、芸能はやらない』と決め、ある種の自暴自棄になっていて、何も考えていませんでした。とても後悔しています。

 だから、『FLASH』の歌詞を初めて見たときは、『私が書いたわけじゃないのに、私の気持ちを代弁してくださっていて、すごいな』と、素直に思いました」(ナオ)

 同曲には、ナオ本人が書いたかと見紛うような、後悔と反省、困惑の言葉が並ぶ。一方で、《あんたはどうなんだ》《ほっといてほしいよ》《次はどこかな もう嫌です》など、ユーザーに揶揄されるリスクをはらんだフレーズも存在する。

「『芸能人は公人だから模範であるべきだ』というご意見も、理解しています。そして何より、『成人になる前に、お酒を飲んだことがある人も多いですよね』という言い方だけはしてはいけない、と思っています。

 でも表現者として、僕たちもイチ人間なんだ、ということも含め、『自分たちがどう思っているかを伝えなければならない』とも思っているんです。

 たとえば《あんたはどうなんだ》は、今回のように、過去のことでどうしようもないときに、言い訳をしてしまいそうになる『弱い気持ち』を、自戒を込めて表現しました。ナオや豆柴のメンバーというより、書いた僕の気持ちなんですけどね(苦笑)」(渡辺氏)

「豆柴の大群」のメンバー5人

報道2日後のライブで「人間って優しいな」豆柴 “りスタート” 物語

 報道を受けたあとも、ナオに立ち止まっている時間はなかった。

「渡辺さんから、最初は『グループ全体の意識が足りていないんじゃないか? このままで大丈夫なのか?』というお叱りの言葉を頂きました。それから、こう言われたんです。

『クビとか謹慎にはしない。これからの活動で、マイナスイメージを晴らしていけばいいじゃないか』

 申し訳ない気持ちでいっぱいでしたし、自分のなかで『辞めて終わらせたくない。何も伝えられないまま、いなくなりたくない』という思いがありました。

 ファンの方々にも、渡辺さんはじめスタッフの皆さんにも、これからの活動で頑張りを見せていけたらいいなと思ったんです」(ナオ)

 力強い決意とは裏腹に、報道直後のナオは「私達の言葉が、何も耳に入っていなかった」と証言するのは、豆柴のメンバーたちだ。

「私は、ナオと寮で一緒に暮らしているんですけど、ナオは本当に “死んだような表情” をしていて。こういう報道をされることなんて初めてですし、何をすれば正解なのかも、わからなくて……。

 グループ自体のことも心配でしたけど、とにかくナオの精神面が心配で、『大丈夫だよ、大丈夫だよ』と声をかけることしかできませんでした」(アイカ・ザ・スパイ[20、以下・アイカ])

 ナオ以外の4人も、ナオが事実確認をされたのと同じ夜、マネージャーからLINEメールで報道の事実を知らされていた。

「未成年飲酒自体は悪いこと。それが世間の人にどう思われるのか、今後どういう影響があるかを考えて、ただただ、すごく怖かったですね。芸能活動をしていないときの過ちが、ここまで大きく扱われてしまうことも」(カエデフェニックス[21、以下・カエデ])

「私も、怖いな、というのが第一にあったんですけど、率直に『豆柴の大群、終わったな』って思いました。経験がなくて、報道されたらどうなってしまうか、わからなかった」(ミユキエンジェル[19、以下・ミユキ])

「私はまず、私たちが報道される対象だったことに驚きました。それから、決して他人ごとじゃないな、と。『私たちは今後ずっと、気をつけていかなければいけないんだ』と痛感しました。

 報道されると知った翌日には練習があって、ナオにはすぐに会いました。ナオは『終わった……』みたいな顔をしていましたが、私はいつもどおり接しようと決めていて。でも、どう話しかけてもナオは、『ああ……うん……』っていう感じでした」(ハナエモンスター[19、以下・ハナエ])

ハナエモンスター

 ところが、本誌報道があった2日後の2月20日にはZepp Tokyoで、2月24日にはZepp Sapporoで、WACKに所属する全グループ合同のライブが控えていた。

「WACKのツアーでしたから、先輩方のファンのほうが圧倒的に多かったんです。豆柴のファンでライブに来てくださる人たちなら、ナオに対して批判はしないかな、と思える部分もありましたが、『自分たちのファンじゃない人たちは、どうなんだろう』って。罵声を浴びる可能性も、なきにしもあらずだと思っていましたし。

 でもライブでも物販や特典会でも、お客さんからナオを責める言葉はありませんでした。それが一番、大きかったですね。『大丈夫だよ』とか、心配の声をかけてくださる方もいました」(ハナエ)
 

「私たちはテレビの企画からスタートしたので、最初から応援の声が多くてありがたいぶん、批判されることもたくさんあって。だからお客さんの反応を見て、『人間って、じつは優しいんだな』って思いました。

 ライブでは、その2日ともナオがMCをやって。そこで気持ちを切り替えたというか、『これからだ!』という意識の変化が見られたような気がしました」(ミユキ)

 ファンからの温かい反応に、気持ちを新たにする兆しを見せたナオ。もう一方で、渡辺氏の “フォロー” も、彼女を救っていた。

「最初、報道されると知ったあとすぐ渡辺さんに会ったときに、報道のことでイジられました。『私のために “愛のあるイジり” をしてくれている』って、わかってはいたんですけど、そのときは泣いてしまうぐらい、何も返せませんでした……。

 でも、それから毎回会うたびに、同じように声掛けをしてくださって。3月24日から、WACKのオーディション合宿に私も(ゲスト)参加したんですけど、そのときも会うたびに意図的に、報道の話を振ってくれました。

 回数を重ねるごとに、だんだん『なんでそんなこと言うんですか』というふうに返せるようになって。まだ “訓練中” といいますか、これからもっと強くなれるんじゃないかと思っています」(ナオ)

 渡辺氏の思惑は……?

「はい、意識的にイジるようにしていました。少なくとも、“身内” のあいだでは笑い話にできるように、と。たとえばオーディション合宿では、たまたま僕がビールを持っていましたので、風呂上がりの “成人している” ナオと、乾杯をする動画を撮ってツイッターに上げました。

 もちろん外の方に対しては、誠意をもって謝罪をしなければいけない場面は、これからもあると思っています。ですが、真剣にブルブル震えながら謝罪を受けても、アーティストとして彼女を見てくださる方々がキツいと思うんです。

 ですからナオには、『ほんっと、すみませんでした!』というお詫びの仕方ができるようになったらいいな、と期待している部分もありますね」(渡辺氏)

 それを見ていたメンバーたちも、「渡辺さんにイジられるたびに、だんだんと変わっていった」「ファンでも同じように、愛のあるイジりをしてくれる人がいて救われていた」と、ナオの変化を感じていた。

ミユキエンジェル

スキャンダル現場を完全再現!「見どころしかない」MV制作秘話

 本誌報道から約1週間後。豆柴の5人に、新曲『FLASH』が手渡された。詞曲もさることながら、明かされたMVの企画に、ナオは腹を括った。

「タイトルが『FLASH』なので、『飲酒現場を再現するんだろうな』と思っていました。でも、中途半端になるのは、本当に嫌で。だから、スタッフさんが『これが一番いい』と提示してくださったものを、私たちがすべて演じるしかないな、と。

『全力で、あざとい女を演じてください』
 そう言われたので、私も全力でやりました。現場では振り切っていて、何も思うことはありませんでした。本当に、“見どころしかない” MVに仕上がっています」(ナオ)

 彼女の思いを汲み取るように、スタッフ側も全力を注いだ。

「せっかくやるなら、トコトンまでやらないと、ナオの過ち自体を茶化すことになってしまうと思いました。ですから、出来る限り再現しよう、と。また、『お客さんに対しても、想像しやすくしたほうがいいな』と思って、とにかく再現に徹しました。

 ナオも思い出せる限りを、包み隠さず話してくれて。たとえば、MVのなかで彼女があざとく媚を売る男の子役が着る『LEVI’S』のパーカーなどは、すごくこだわりましたね」(渡辺氏)

アイカ・ザ・スパイ

 ほかのメンバーにも、その “再現魂” は、自然と浸透していった。

「MVではやっぱり、私たちの『男装』を見てほしいです。誌面の写真を見せて頂き、写っていた男性たちを、ナオ以外の4人で演じていて。それぞれ写真のなかに “モデル” がいるので、髪型も服装も、その人になりきりました。現場では名前もつけていて、私は……『アイ男』だったかな」(アイカ)

「みんな、役名の最後に『男』つければ男性になるよね、みたいな(笑)。私たち、パーティーなんてしたことないから全然ノリがわからなくて。それで、パリピ(パーティーピープル:パーティー好き)のスタッフさんに入ってもらいました。乾杯コールなんかも、教えてもらいながら演じたんです」(ミユキ)

 さらに、MVには映されていないが、これからライブで公開する『FLASH』のダンスは、ナオが振り付けをしたものだ。

「サビのところで、カメラで撮影するポーズをしたり、イントロでは『いつでも見られているんだぞ』という自分への咎めを意識した、目線をあらわす振り付けをしています。今回の企画ではとくにですが、私たちは、起きてしまったことを表現にすることしかできないので」(ナオ)

カエデフェニックス

クロちゃんと渡辺淳之介……“2人の父” が、私たちにくれたもの

 豆柴のメンバー5人は、外部との軋轢を感じずに、スキャンダルを楽曲表現に変えることに集中できた理由として、アドバイザーの「安田大サーカス」クロちゃんと、プロデューサー・渡辺氏の存在をあげた。

 クロちゃんからは、ナオが報道に際して報告のために連絡したときに、「反省しているのは伝わってくるから、これから芸能界で一緒に頑張っていこう」という旨の激励の言葉があったという。

「クロちゃんには、今回のこともそうですが、『自分を犠牲にしても、私たちを守ってくれている』と感じることが、よくあります。どんなときも悪意が私たちに向かないように、むしろ自分に悪意が向くように、ツイートや立ち振舞いをしてくださっているんです」(カエデ)

『水曜日のダウンタウン』の人気企画「MONSTER IDOL」で、豆柴立ち上げ時のプロデューサーを務めたクロちゃん。報道当日に出演したラジオ『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』(ニッポン放送)では、「このまま頑張って活動続けていくはずなので、『ナオが変わったのかな』というのを確認すればいいのかなと思いますね」と、今後も豆柴を見守っていく決意を口にした。

 そして今回の “騒動” の中心にいたナオが、報道を乗り越えて『FLASH』のパフォーマンスに振り切れた「核心」を語り始めた。

「いま私は、自分が豆柴の活動に向いていると思えています。そう思えたのも、WACKで強さを、諦めない力を学べたからです。きっかけは、2019年の合宿オーディションに参加したことでした。

 そのときの私は、本当に何もできない人間だったんですけど、合宿でオーディションの試練を受けていくたびに、毎日を過ごしていくごとに、『このままの自分じゃダメだな』というのに気づくことができたんです。

 その合宿では落ちてしまったんですが、『WACKに入りたい』という気持ちが濃くなって、3回めの今回で合格することができました。最初に受けたのが合宿じゃなかったら、たぶん『もうWACKは受けない』と意地を張ってしまっていたと思います」

 2019年の合宿で彼女を変えたのは、渡辺氏の言葉の数々だった。

「渡辺さんから、『歌とダンスが出来ていても、気持ちが入っていないとダメだ』と言われました。私は高校時代にもアイドルとして活動をしていて、『アイドルは歌とダンスが出来て可愛い子がいい』と思っていたので、衝撃的でした。『ああ、私には強い気持ちがなかったな』と気づいたんです。

 ほかにも、『出来なくてもいいから気持ちを伝えろ』『後悔しないように』という言葉をくださいました。本当に合宿オーディションが、人生のターニングポイントだったと思います。

 それまでの私は、見栄を張ったり、本心に思っていないことを言ってしまったり、とにかくヒネくれていて。だから合宿後は、自分が出来なかったことを認めて、自分を理解しようと努めました。そしたら、何事にもまっすぐ向き合えるようになりましたし、何に対しても諦めないようになったんです」

 クロちゃんからも渡辺氏からも、「今後の活動で返していく」という課題を与えられたいま、ナオと豆柴のメンバーたちは、新曲『FLASH』をたずさえ、ふたたびステージに上がる。

「ほかの事務所だったらきっと、報道を受けてまたそれを返すようなことって、出来ないと思います。だから、この言い方は正しくないかもしれませんが、『自分の弱点も全部さらけだして、強みにしていけたらいいな』って。今はまだ、出来るかどうか、確信は持てないんですが……」(ナオ)

「報道があってドン底のときに、この曲をもらいました。どんなことも豆柴の活動に転換してプラスにしていく姿勢を、渡辺さんに示してもらったので、『この曲と一緒に成長していきたい』と思っています」(カエデ)

 彼女たちに渡辺氏は、こう期待をかける。

「今回の報道は、ある種 “デジタルタトゥー” のように、数年後までついてまわります。それに対して、『萎縮はしないでほしいな』と思っているんです。

 今後も有事の際は求められる限り、『反省しています、申し訳ございませんでした』という話をし続けるべきなのか、正直、僕にもわからないところがあって。

 だからメンバーには、『過ちを吹きとばすぐらい売れようね』という話は、ずっとしています。『FLASH』みたいに直接的な表現じゃなくても、『自分が困難に立ち向かったときは歌詞に書いて、しっかり伝わって売れれば一番いいよね』と。

 豆柴たちにはこれから、失敗を表現にして伝える姿勢を身につけてもらい、そして『テレビ生まれのアイドル』として、老若男女に好かれる存在になってほしいと思っています」

 彼女たちは今まさに、新たな「スタート」を迎えた--。

まめしばのたいぐん
2019年に『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の人気企画「MONSTER IDOL」から生まれたアイドルグループ。WACKオーディション受験者のなかから、プロデューサー・クロちゃんが審査するオーディションに合格したメンバー4人(ナオ、アイカ、ミユキ、ハナエ)で結成。同年12月19日、デビューシングル「りスタート」を発売。12月25日には、同曲が6.4万枚の売り上げを記録し、オリコン・ウィークリーランキング1位を獲得。同日に生放送された「MONSTER IDOL」最終回で、CDのバージョン別売り上げ対決の結果、クロちゃんがプロデューサーを解任され、最終審査で不合格になったカエデの加入が決定した(メンバー全員、現在の芸名に改名)。その後、YouTubeでの曲再生回数バトルを経て、クロちゃんが「アドバイザー」として復帰。毎週月曜から木曜の22時55分より、『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)内の「豆柴LOCKS!」でレギュラーを務める。また、YouTubeチャンネル『豆柴の大群 -MAMESHiBA NO TAiGUN-』でバラエティ企画も配信中

※1stアルバム『スタート』がCD&デジタル配信で発売中