コロナショックで不動産価格はどこまで下がるのか(写真はイメージ)


 世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。東京を含め、世界の大都市が封鎖に追い込まれるなど、人々の暮らしや経済に甚大な影響を与えている。それでは、新型コロナウイルスは不動産にどのような影響を与えるのか。リーマンショックを切り抜けた経験を持つ不動産会社スター・マイカの水永政志社長に聞いた。(聞き手、結城 カオル)

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価格が3割まで下がってもおかしくない

──まず、今回の新型コロナウイルスの影響をどう見ているでしょうか。

水永政志氏(以下、敬称略) 現在は感染拡大の段階で影響を語るには早すぎると思いますが、今回の危機は2008年の金融危機とは根本的に異なります。前回の金融危機は、あくまでも金融機能の機能不全でしたが、今回は物理的に企業の生産活動が世界的に止まってしまいました。成長率が大きなマイナスに陥るのは確実でしょう。実体経済への打撃も、リーマンショックをはるかに上回るものになるとみています。もしかすると、1930年代の世界大恐慌レベルかもしれない。私は、そこまで深刻に考えています。

 その後の後遺症についても心配しています。今回の危機を受けて、各国政府はあり得ない規模の財政支出に踏み切ることになります。必要な措置だと思いますが、米国をはじめ、各国の政府債務が膨れあがればどうなるか。将来的なインフレは不可避だと思いますし、サプライサイドの落ち込みを考えれば、スタグフレーションまで覚悟しておく必要があるかもしれません。

水永政志(みずなが・まさし)氏
スター・マイカ代表取締役社長。1964年生まれ。東京大学農学部卒業後、三井物産、ボストン・コンサルティング・グループ、ゴールドマン・サックス証券を経てピーアイテクノロジー(旧アセット・マネジャーズ、現いちごグループホールディングス)を設立。その後、2002年に中古マンション流通を手がけるスター・マイカを創業した。大学在学中にコンピューターソフトウェア会社を設立。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営大学院で経営学修士(MBA)(写真:スター・マイカ提供)


──不動産市場についてはどう思いますか?

水永 リーマンショックで起きたことを考えると、高級マンションや商業施設、ホテルなどは「半値八掛け2割引」、すなわち今の価格の3割ぐらいまで下がってもおかしくない。逆に、手ごろな価格の中古マンションは5%程度の下落で済むと見ています。2000〜3000万円の中古マンションは流動性が最も高い不動産であり、家賃を15万円払うのであれば、住宅ローンで8万円を払う方がいいという消費者の市場です。子供が生まれれば広い部屋に引っ越すように、危機の中にあっても必要なら買うと思います。

──スター・マイカは入居者が借りている中古マンションを割安に取得、入居者がいる間は賃料収入を得て、退去後に一次取得者に販売するというビジネスモデルで成長しました。

水永 当社のビジネスをご存じの方は、私の話がポジショントークだと思うかもしれません。ただ、現実問題としてリーマンショックの時に下落率が最も低かったのは2000〜3000万円の価格帯の中古マンションでした。

 リーマンショックの時に、他社が赤字に転落したのに対して、当社は20〜30%の減益で済みました。それも、中古マンションに特化していたからです。5億円のマンションは2億円まですぐに下がりますが、3000万円のマンションが2000万円になることはありません。だからこそ、当社は令和の今も中古マンションだけを扱っているわけです。

バブルだった日本の不動産市場

──水永社長は今回のコロナ渦の前から、日本の不動産市場がバブルだと警鐘を鳴らしてきました。

水永 はい。当社は本業の中古マンションの他に、1棟モノの収益マンション投資も進めていました。合計26棟、時価200億円ほどありましたが、2017年に不動産市場がバブルだと感じ、2017年、2018年、2019年の3年間ですべて売却しました。

 併せて、5000万円以上のマンションとタワーマンションの中古物件も取得を禁じました。5000万円以上のマンションは価格帯が高く、下落した場合の下落率が大きいため、タワーマンションも下がった時の落ち方が大きいと見ているからです。

 バブルがいつ弾けるか分からなかったので、3年かけて売却しました。もっとも、すべての投資用不動産を売り切った段階で今の問題が起きたのはただの幸運です。

 ビル・ゲイツは以前から次の危機はウイルスだと明言していました。彼は今の状況が見えていたのかもしれませんが、私はEU(欧州連合)か中国か、どこかは分かりませんが、バブルは崩壊すると考えていただけです。まさか、ウイルスでこのような状況になるとは夢にも思いませんでした。本当にただの偶然です。

──2017年の時点でバブルだと認識していたという話ですが、何がシグナルだったのでしょうか。

水永 マクロ経済の状況と、いわゆる循環的な見方の2つです。

 まずマクロ経済の話ですが、リーマンショックと東日本大震災が来て、その後に賃貸マンションで利回り12%というあり得ない物件が出始めました。その後、日本銀行の黒田総裁による金融緩和、黒田バズーカがあり、マイナス金利に突入しました。マイナス金利は理屈としては分かりますが、私が習ってきた経済学では禁じ手です。デフレ脱却は急務だとしても、モルヒネを打ち過ぎです。

 循環論で言うと、東京のオフィスが上がった後、地方のオフィスが上がり、東京のレジデンスやホテルが上昇した後に地方のレジやホテルが上昇する。そして最後に地方のリゾートが上がり始める。今回で言えば、沖縄や北海道のリゾートが上がってきたタイミングで、平成バブルと同じだと思いました。

 ニセコは外国人スキーヤーの需要増で坪単価が上昇の一途を辿りました。最盛期は坪単価800万円です。正当化する方々は「ニセコは国際的なリゾートだ」と言っていましたが、坪単価800万円は東京で言えば恵比寿よりも高い。私は不動産価格の絶対水準としておかしいと思いました。マイナス金利という麻薬が、あり得ないバブルを生み出していたわけです。

 正直に言って、私はかなり保守的です。イケイケの人が多い不動産業界にあって、私は石橋を叩いても渡りません。それゆえに、2017年から売り始めたわけで、上げ相場に乗らなかったことによる機会損失もあったでしょう。今の状況は私にとっても逆風ですが、バブルの崩壊と、その後の不況に備えてきたという意味ではまだ耐性はあると思います。覚悟という点も含めて。
 
──この後の戦略は?

水永 ここから先は会社として生き残ることが第一です。それぐらいの大不況が来ると思います。現に、中古マンションの販売が仮にゼロになった場合のシミュレーションも始めています。当社の場合、賃料収入もありますので、販売収入がゼロでも耐えられると思います。この状況を当社が生き延びれば、生存者利益として投げ売りされた不動産を安価で買えるかもしれない。実際、リーマンショックの時は東日本大震災の後、買い場が訪れましたから。

筆者:結城 カオル