キャリアアップとダウンを繰り返し、ジェットコースターよりも激しい野球人生を送ってきたケーシー・マギー。彼の”打たれ強さ”は、野球界でナンバーワンかもしれない。

 2003年のドラフトで、シカゴ・カブスに10巡目(全体283位)で指名されプロ入りを果たしたマギーだが、待っていたのは長いマイナー暮らしだった。ようやくメジャー昇格を果たしたのは2008年。しかし喜びもつかの間、メジャー昇格から57日後にウェーバーにかけられてしまう。


2013年には楽天の日本一に貢献したケーシー・マギー カブスからウェーバーにかけられミルウォーキー・ブルワーズに入団した1年目、マギーは実力を発揮した。116試合に出場し打率.301、16本塁打、66打点の好成績を残し、27年ぶりのプレーオフ出場に貢献。新人王争いで5位に食い込む活躍を見せた。

 2012年からはピッツバーグ・パイレーツでプレーすることになるのだが、この年は大スランプに陥ってしまい、シーズン途中にニューヨーク・ヤンキースにトレード。結局、ヤンキースでも大きな活躍を見せることができず、解雇されてしまう。

 失意のなか、マギーは日本でのプレーを決意し楽天に入団。すると、ここでも見事な活躍を見せたのだった。不動の5番打者として全144試合に出場し、打率.292、28本塁打、93打点を叩き出し、チーム初の優勝に貢献。日本シリーズでも巨人を下し、日本一も経験した。チームにとっても、マギーにとっても忘れられない1年となった。

 翌年、マギーはマイアミ・マーリンズと契約を交わし、メジャーに復帰。その勢いは止まらず、打率.287、76打点の成績を残し、カムバック賞を受賞する。それだけではなく、サードの守備ではナショナルリーグ1位の守備率を誇るなど、攻守で活躍を見せた。

 だがその翌年、再びスランプに陥ってしまう。この年、マギーはサンフランシスコ・ジャイアンツでプレーすることになるのだが、49試合で打率.213、2本塁打、11打点と振るわず、7月に自由契約。その後、マーリンズと再契約を果たしたが、60試合で打率.182、0本塁打、9打点と低迷したまま、オフに解雇となった。

 そして昨年は、デトロイト・タイガースと契約を交わすも、わずか30試合の出場にとどまり、打率.228、0本塁打、1打点。シーズンの大半を3Aのトレドで過ごし、11月に再び解雇を言い渡された。

 そんなマギーに声をかけたのが巨人だった。昨年はマギーにとって不本意なシーズンとなったが、巨人は彼の復活に賭けたのだ。マギーは巨人に入団し、再び日本でプレーすることについて、次のように語っていた。

「私のキャリアのなかでのアップダウンで、ひとつ大切なことを学ぶことができました。野球という競技は、何が起こるのか言い切ることができません。だから、未来のことを心配するのではなく、今できることを精一杯やるようにしているんです。今の自分がどんな状況かを見極め、それに対してできる限りのことをして、あとは天に任せるようにしているのです。日本に戻ってこられて、ワクワクしています。だって、ここでチャンピオンの喜びを味わえましたから。私にとって日本は、特別な場所なんです」

 たしかに、プロの選手として唯一の優勝を経験した日本に戻ってくるということは、今回の復帰に大きな影響を与えているが、実はこのほかにも理由があった。

 一度、日本でプレーしたことによって、野球のレベルの高さを熟知しており、そのなかで競争していかなければいけないことが、マギー自身のモチベーションにつながっているのだという。

「ここ(日本)で味わった、毎日グラウンドに立つときに、お腹のなかを蝶がぐるぐる飛び回る感覚を経験していなかったら、戻ってくることはなかったと思うんです。ドキドキ、緊張感のなかで味わう興奮。そして戦い。こうしたものがあると知っているので、日本に戻ることを待ちきれませんでした」

 アメリカの野球で”緊張”という言葉は、まず聞かない。アメリカでプレーする選手は、野球をするときに”楽しい”と表現することが多いが、マギーのように”緊張”という言葉を使う選手は珍しい。そこで”楽しい”と”緊張”の違いは何なのかを尋ねたら、こんな答えが返ってきた。

「勘違いしないでほしいんですけど、もちろん野球をすることは大好きなんですよ。ただ、”楽しんでくる”というのは適切な表現ではないと思うんです。私にとって野球は、生きていくための糧であり、家族を養っていく手段のひとつなんです。たとえば、パイロットがフライトする前、医者が手術をする前、彼らに向かって『楽しんできな』とは言わないでしょ? 野球選手にとっても同じことなのです。

 好きなことなんですけど、リラックスして、娯楽をしに行っているわけではないんです。ボクシングにしてもリラックスした状態でリングに上がったら、すぐにノックアウトされてしまう。野球だって、打席に立っているときはいつ打てるボールが来るかわかりません。だから、常に準備しておかなくてはいけないのです。それに、ほかの選手の生活もかかっていますから。頼られているということは、それに応えないといけない。そんなところから緊張がくるんです。もちろん、やれる自信はあります。ただ、それと同時に責任も感じています。楽しみはそのあとですね。ゲームが終わり、チームメイトと握手を交わし、称え合う。この瞬間が最高の楽しみなんです」

 これまで幾度となく解雇を経験してきたマギーだが、その度に劇的な復活を遂げてきた。そして今、再び日本一の歓喜を味わうため、巨人でプレーを続けている。不屈の男・マギーの野球人生はまだ終わらない。

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