我が子を“社会人失格”にさせない子育て

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 “上司に怒られて会社を辞めてしまった” “就活に失敗してひきこもりになってしまった”など、挫折から立ち直れなくなり、「もう社会ではやっていけない」とドロップアウトしてしまう若者が増えていると言います。約70万人(※1)がひきこもり状態にあると推計され、平均10.21年もひきこもってしまうというデータ(※2)もあります。

 なぜ、“社会でやっていけない大人”が増えているのでしょうか。子どもの教育現場に身をおく高濱正伸氏は、『へこたれない子になる育て方』(プレジデント社/刊)の中で、“社会でやっていけない大人”が育ってしまうのは、幼児期の教育と、母親の子どもへの接し方に大きな原因があると言います。

 親としては、立派に社会人としてお金を稼げる、ちょっとやそっとのことでへこたれない大人に育ててあげたいもの。そうなるには、いったいどのように子どもと接していけばよいのでしょうか。

■「自分は大丈夫」という、自己肯定感を持たせてやる
 高濱氏によれば、頑張れる子というのは、「自分は大丈夫!」という自己肯定感を持っているといいます。その背後にあるのが「何があっても、母親は絶対に自分の味方でいてくれる」という信頼であり、困難なことに対しても臆せず挑戦し、最後までやり切ることができる原動力になるのです。

 子どもの自己肯定感は、「お母さんにとってあなたは、何があってもマル(尊重する)」というメッセージを日々送り続けることで根付いていきます。しかし、肯定してあげるだけでは不十分で、「自分は大丈夫」という自己肯定感を核に、逆境を乗り越える経験をたくさんさせることが大事です。

 自らすすんで挑戦できる子どもは、「失敗しても大丈夫」という、母親への信頼や自信が根底にあります。子どもに自己肯定感を持たせて、幼少のうちから様々な逆境を乗り越える経験をさせてやることが、へこたれない大人に育てるためには大事なことなのです。

■トラブルが起きたら親が出るのではなく、子どもに乗り越えさせる
 「○○君がいじわるしてくる」などと子どもから言われたら、心中穏やかではいられないでしょう。担任の先生に相談するか、直接その子の親に話を付けにいくか、あれこれ考えてしまうと思います。
 しかし、子ども同士の揉め事は、逆境を乗り越える経験をさせるチャンスでもあります。すぐに親が介入せずに、「こうしてみたらどう?」「あなたならできる」と、たっぷりの愛情を持ってサポートすることで、子どもは主体性を持って問題を解決する経験を得ることができます。
 親同士の話し合いで強制的に仲直りをさせられてしまえば、子どもたちはお互いにモヤモヤした気持ちが残ってしまうかもしれません。子ども同士の揉め事に安易に介入し、何でも「事件化」してしまうと、ときには子どもの成長を奪うことにもなり得るのです。

■頑張っても、常に結果が出るわけではないことを教える
 年齢を重ねてくると、「どんなに頑張ってもダメだった」という現実にぶち当たるときがやってきます。特にスポーツやゲームなど、実力差がはっきり現れるものだと、「こんなに頑張っているのに」という気持ちとのギャップに打ちひしがれてしまうこともあるでしょう。

 頑張りが実を結ばず、子どもがもがいているときには、「こんなこともあるさ。さあ、次だ!」と、ぱっと気持ちの切り替えを示してあげましょう。「今はできなくても大丈夫。あなたが悪いわけではない」という明るい気持ちが自己肯定感を育みます。

 へこたれない子に育てるには、子どもを認め、肯定することで、色々なことに挑戦する気持ちを芽生えさせて、逆境を乗り越える経験を積ませることが大事であるようです。その積み重ねが、社会で辛い目にあってもすぐにドロップアウトしてしまわない、きちんと社会でやっていける大人へと成長していくのです。

 『へこたれない子になる育て方』には、幼少期から思春期まで、年代に合わせた子どもへの接し方や、教育の指針となるアドバイスが書かれています。苦しいことの多い現代社会に送り出すわが子を親としてできる限りのフォローはしてあげたいものですね。
(新刊JP編集部)

【参考データ】
※1若者の意識に関する調査報告書(内閣府政策統括官/共生社会政策担当)
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/pdf/gaiyo.pdf
※2『「引きこもり」の実態に関する調査報告書?』(NPO法人全国引きこもりKHJ親の会)
http://www.khj-h.com/pdf/10houkokusho.pdf