ソフトバンク・東浜巨【写真:荒川祐史】

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パ・トップの13勝をマークしているホークス東浜

 ソフトバンクの東浜巨投手が、目覚ましい活躍を見せている。今月18日に2位・楽天との直接対決第1ラウンドで先発のマウンドに上がると、7回1失点の好投で勝利投手に。西武・菊池雄星に再び1つの差をつけ、ハーラー単独トップの13勝目をマークした。

 ほぼ1年間ローテを守り抜いた昨季は夏場に失速。昨季の反省を生かし、ここで失速しないために、オフ、シーズン中と厳しいトレーニングを自らに課してきた。その経験、努力が実を結びつつあるのだろう。昨季とは打って変わり、夏場の今、自身6連勝中と白星街道をばく進している。

 自身初となる2桁勝利を達成しただけではなく、最多勝の栄誉すらも視界に捉え始めている東浜。そんな右腕に、1つの期待がかかる。沖縄出身者として、史上2人目の最多勝のタイトル獲得だ。

 これまで数々のアスリートを世に送り出してきた沖縄県。プロ野球界にも数多くの選手を輩出している。東浜のほかにも、西武の山川、ロッテの伊志嶺や大嶺兄弟、中日の又吉などなど、現役選手だけでも相当数の沖縄県出身者がいる。それなのに、なぜか球史に名を残すほどの好成績を残した名選手は数少ない。

 過去に、沖縄出身者で主なタイトルを獲得した選手といえば、1975年にセ・リーグの最優秀防御率を獲得した阪神・安仁屋宗八、1992年にセ・リーグ最多奪三振の阪神・仲田幸司、1990年のパ・リーグ打点王の阪急・石嶺和彦、1994年のパ・リーグ最多勝、1994年、95年の同最多奪三振、1995、96年の同最優秀防御率のロッテ・伊良部秀輝、2004年のパ・リーグ最多奪三振のダイエー・新垣渚といったところが挙がってくる。

昨季から急成長、今季は大黒柱の働き見せる東浜

 投手で言えば、近年で最も成績を残したのは、ロッテでプレー後、米MLBでも2桁勝利を挙げ、42歳の若さで亡くなった伊良部秀輝氏だろうか。当時日本最速となる158キロをマークした豪速球を武器に、日米通算106勝を記録している。沖縄出身者として唯一、複数年のタイトル獲得を果たした。

 それ以前を見ると、1964年から1981年まで広島、阪神でプレーした安仁屋宗八氏まで遡る。安仁屋氏は広島時代の1968年に23勝を挙げ、18年間で5度の2桁勝利。現役通算119勝をマークし、沖縄出身者として最も成功した選手の1人だろう。

 東浜がこのまま最多勝を獲得すれば、94年の伊良部氏以来、23年ぶりに沖縄出身者が最多勝のタイトルを獲得することになる。沖縄尚学高校から亜細亜大学を経て、2012年のドラフト1位でソフトバンクに入団した右腕。入団後3年間は思うような結果を残せなかったが、昨季から急成長を遂げ、今季は大黒柱としての働きぶりである。

 まだ27歳と若く、プロ野球選手としては、まだまだこれからの選手である。球界には「沖縄出身者は大成しない」というジンクスも言われる。確かに、沖縄出身者で目を見張るほどの活躍を見せた選手は近年いなかった。東浜はそのジンクスを打ち破れるか。そして、将来、沖縄出身者として最も成功を収める選手になれるだろうか。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)