「メタンハイドレート」について〜日本が資源大国に変わる日〜






日本は石油や天然ガスなどの天然資源が貧しい国と言われて久しいです。



特に原油の自給率に至っては、99%以上を他国からの輸入に依存しているという厳しい状態が続いています。



しかし、そのような状況の中、先日新たな天然資源獲得の試験に成功したというニュースがありました。



それが、燃える氷とも呼ばれる「メタンハイドレート」です。





■メタンハイドレートとは



メタンハイドレートを直訳すると、「メタンの水和物(すいわぶつ)」となります。



「メタン」というのは、都市ガスや火力発電所の燃料のもとになる天然ガスに多く含まれている成分です。

また、「水和物」とはそれと水がセットになったものというような意味ですので、メタンハイドレートを簡単に説明するなら、「メタンの周りを水分子が取り囲んでいる物質」ということになります。



自然界では、水分子の間にメタンが入り込んだ氷状の結晶として存在していますが、メタンハイドレートに火をつけると周りの水分子が蒸発して、中に閉じ込められていたメタンガスが燃えることから、「燃える氷」とも呼ばれているわけです。



なお、メタンを燃やした時の二酸化炭素の排出量は石油や石炭よりも少なく、なおかつ燃えた後には水しか残らないことから、地球環境に優しい新たなクリーンエネルギーとして期待されています。



■どこで取れるの?



このように魅力的なエネルギー資源「メタンハイドレート」ですが、いったいどこで採取できるのでしょうか。



メタンハイドレートは、圧力が高く、温度が低いところでしか存在できず、それ以外の場所では水とメタンに分解されてしまうため、実際には深い海底の下や、永久凍土の下でしか発見されていません。



日本では、「南海トラフ」と言われる東海沖から九州沖にかけての深海や、新潟沖・能登半島沖などに多く存在するとされ、特に日本海側は比較的浅い場所に良質な状態で眠っていると考えられています。



天然資源が少ないとされてきた日本周辺の海底に、天然ガスの年間使用量の100年分以上に相当するメタンハイドレートが眠っていると考えられていることから、近年急速に注目され始めてきました。



■メタンハイドレートは禁断の資源?



メリットの多いメタンハイドレートですが、メタンハイドレートの実用化に向けては、いくつかの課題が待ち受けています。その中でも、特に大きな問題というのが、どのように採取するかという問題です。



メタンハイドレートを掘り出してそのまま地上に運んでしまうと、圧力や気温の変化によって、一気に溶けてしまいます。また、メタンそのものは、二酸化炭素と比べると20倍もの温室効果を持ったガスであるため、燃やす前にうかつに大気中に放出してしまうとクリーンどころか地球環境に多大なダメージを与えてしまいます。



そこで、周りの温度を上げて採取する「加熱法」や、圧力を下げて採取する「減圧法」のほか、分解促進剤を注入するなど、いくつかの安全な採取方法が検討されており、中でも「減圧法」がもっとも効率の良い方法であると言われています。この「減圧法」は、メタンハイドレートが埋まっている近くに穴を掘り、そこから二酸化炭素を入れて圧力を下げ、メタンハイドレートを分解してメタンのみを採取するという方法です。



ただ、いずれの方法を採るにしても、採取に相当なコストがかかることが当面の課題となっています。



■実用化に向けた動き



東日本大震災後は原子力発電所の停止が相次ぎ、現在の日本の電力はその大半を火力発電所に頼っています。

しかし、その燃料となる天然ガスは、ほぼすべてを海外からの輸入でまかなっているのが現状であり、これが日本の貿易赤字に大きく影響しているとも言われています。



そのような状況の中、経済産業省を中心として、2013年3月には愛知県沖で、世界で初めて海底からのメタンハイドレート採取試験に成功しました。今後は2018年の商用化を目指して、今回の試験結果をもとに、安全かつ安価に採取・運搬・貯蔵する技術を確立することが期待されています。



■まとめ



次世代の天然資源として注目されている「メタンハイドレート」。

実用化できれば、天然資源の貧しい国と言われ続けてきた日本を救うのでは…と期待されています。



メタンハイドレートの採取については、日本の研究技術がもっとも進んでいると言われています。実際ようやく海底からの採取に成功する段階まで来ましたので、今後はいかに安全で安く、かつ効率よく採取できるかが重要なポイントとなってきそうです。



(文/TERA)



●著者プロフィール

TERA。小さいころから自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。