歴史的な名車を蘇らせる「EV化のレストモッド」がいまトレンド! 一方「それで旧車の価値が守れるのか」論争も勃発

この記事をまとめると
■欧州を中心にかつての名車を現代の技術で甦らせるレストモッドが流行中だ
■一部ではエンジンではなくモーターを載せてEV化しているメーカーもある
■レストモッドでEV化した場合はクラシックカーという扱いではなくなる例もある
議論を呼ぶEVレストモッドの是非
レストモッド(=Restomod)とは、「レストア(復元)」と「モディファイ(改良)」を組み合わせた造語で、いま欧米を中心にブームになっている。
従来のレストアは工場出荷時の状態、すなわちオリジナルに忠実に復元することに重きを置いていたが、レストモッドは旧車をレストアしつつ魔改造し、その美しいデザインを活かしつつ、現代の技術でエンジン性能を引き上げたり、快適性を現代の水準に高めたりといったカスタム手法を指す。

そのなかでも、名車を未来へ継承する手段として、旧車のEV化(コンバージョンEV)がブームになっている。
有名どころのレストモッドEVメーカーとしては、イギリスのLunaz Design(ルナズ・デザイン)やCharge Cars(チャージ・カーズ)、イタリアのTotem Automobili(トーテム・アウトモビリ)などが挙げられ、新車以上の技術で名車を蘇らせていると評判だという。
Lunaz Designは、イギリスのシルバーストンに拠点を置く、富裕層向けの超高級EVレストモッドメーカーだ。ロールス・ロイスやベントレー、アストンマーティン、ジャガーなどのクラシックカーを完全分解し、最新の自社製EVパワートレインを搭載している。

Charge Carsは、ロンドンを拠点とするメーカーで、フォードからライセンスを取得し1967年型フォード・マスタングをベースにしたEVを限定製造している。外観はクラシックだが、中身は500馬力以上のモーターと四輪駆動を備えており、高い性能を誇る。

Totem Automobiliは、イタリアのスタートアップ企業で、アルファロメオの名車「ジュリア GTA」をベースにしたフル電動モデルを製作している。カーボンファイバー製ボディに600馬力近い強力なモーターを搭載し、クラシックなデザインと圧倒的な加速力を両立させている。

そのほかにも、レストモッドEVを手がけるメーカーはいくつもある。じつは新車メーカーも参入しており、シボレーやフォードなどの大手メーカーも、旧車に搭載できるEV用モーターキット(e-Crate)を発売し、カスタムカーショー等で積極的にアピールしているのだ。
レストモッドEVの製作にかかる費用は、仕様により大幅に異なるが、一般的なオーダーメイドでは 最低でも500万円〜が相場となっており、上は果てしなく、なかには本格的なレストアを含めると千万単位の費用を要するケースもあるという。

もちろん、所有しているお気に入りのクラシックカーがエンジンにトラブルを抱えても、EV化すれば乗り続けることができるし、欧州などでは排ガス規制が厳しく、従来のガソリン車は都市部への乗り入れが制限されるケースが増えているが、EV化することで、それらの規制をクリアし、合法的に公道を走れるようになるというメリットもある。
否定の声も少なくないが悪い選択肢ではない
一方で、オリジナルのエンジンを外すことで「歴史的価値」が問われるという議論も巻き起こっている。
それは「内燃機関(エンジン)こそが歴史的遺産である」という考えにもとづくもので、当局がモーターに載せ替えた旧車を単なる「改造車」と見なし、ヒストリックカーの登録ステータスを取り消す事例が多発しているのだという。

せっかくの特権が剥奪されると、クラシックカー向けの自動車税の格安措置が適用されなくなったり、厳しい現代の安全基準を証明しなければならなくなったりするリスクがある。
そこで、こうした法的なリスクを回避するため、イギリスなどの大手コンバージョン業者は「100%可逆性(元の状態に戻せること)」をアピールしている。ボディを切断したり溶接したりせず、元のエンジンマウントをそのまま利用するボルトオン工法を採用し、取り外したガソリンエンジンはオーナーに返却して保管してもらう手法がトレンドとなっている。

レストモッドEVに欧米を中心に大きな需要と関心が集まっている大きな理由としては、維持のしやすさと性能向上が挙げられる。古いクルマほど、ガソリン漏れや部品の枯渇といったトラブルから解放され、現代の交通事情でもスムースかつ静かに走れる実用性を手に入れることができるからだ。
日本では、旧車の電動化というのはまだこれからの分野だが、古いクルマを新しい形で愛用する文化として少しずつ注目されている。
一方で、レストモッドEVの「旧車としての価値」を巡る興味深い議論が欧州では起こっている。それはレストモッドEVというのは邪道なのか否かという根本的な問題だ。

個人的には、せっかく所有しているお気に入りのクラシックカーがエンジンの不調で走らせることができなくなったような場合には、EV化することでリーズナブルに乗り続けることができるのだから、それはいいことだと思う。
ただし、上でも述べたとおり、カギを握っているのは可逆性だ。やがていつか元に戻そうと思ったときに、完全にもとにもどすことができるのなら問題なし。もしできないとなると、それは邪道かなと思う。
