【医師解説】 避難から1週間で急増する心臓や血管の病気 危険なサインは?
7月28日に発生した令和8年熊本地震から4日で1週間。医師は、避難から1週間で心臓病が急増すると指摘しています。命にかかわる危険なサインとは。
2016年の熊本地震では、直接死が50人だったのに対し災害関連死が225人と、犠牲者の8割が災害関連死でした。今回の地震では、今も多くの方が避難生活を続けています。
医師は、避難から1週間で心臓や血管の病気が急増すると指摘しています。熊本大学病院循環器内科教授で、災害医療教育研究センターの副センター長も務める辻田賢一医師に命にかかわる危険なサインを聞きました。
(熊本大学病院循環器内科 辻田賢一教授)
■避難してから1週間で災害関連死が増加
災害の発生直後は外傷や、倒壊に伴う圧死で亡くなる人が多いですが、避難してから1週間になると、たこつぼ心筋症、突然死、肺塞栓症が原因で亡くなる人が多いということがこれまでの調査でわかっています。なぜこのような病気が増えるのか、要因をみていきます。
▼避難生活による睡眠不足は心臓に負担
1つ目は睡眠不足です。避難生活が長引くとストレスで眠れないという人も多く、睡眠不足になってしまいます。ストレスや不安、睡眠不足が続くと血圧や心拍数が上昇して心臓病のリスクがあがります。
▼避難生活の食事が影響
2つ目は塩分過多の食事です。避難生活では、どうしても塩分が多い食事が増えてしまい、血圧が上がりやすくなります。140/90mmHg以上が続く場合は医療スタッフや医療機関に相談してください。180/110mmHg前後の著しい高血圧や胸の痛み、息苦しさ、麻痺などを伴う場合は速やかに受診してください。
▼簡単なストレッチだけでも予防効果あり
3つ目は運動不足です。避難所で動かない生活が続くと血流が悪くなってしまい、結果的に病気につながります。
▼持病薬をやめないことも大切
4つ目は薬を飲まないこと。災害時なので見落とされがちですが、高血圧や心臓の薬、糖尿病の薬など毎日欠かさず飲む薬を災害で中断してしまうと、持病が急に悪化することがあります。早めに病院を受診して薬をきらさないようにしましょう。そしてお薬手帳で管理しておく。これも日ごろの備えとして大切です。
▼車中泊は要注意
5つ目は車中泊などで同じ姿勢で長時間過ごすことです。同じ姿勢で長時間いると車中泊血栓症、エコノミークラス症候群になるリスクが高くなります。10年前の熊本地震で増加したのが深部静脈血栓症、足の血栓です。そしてこの足の血栓が肺にいくと肺塞栓症になります。
深部静脈血栓症のリスクが高い人はこんな方です。
・70歳以上の高齢者
・眠れないので睡眠剤を服用している
・足が腫れている
特に片足が腫れていると要注意です。昔から足にぼこぼこがある「下肢静脈瘤」も注意が必要です。
また、若い女性では避妊薬、ピルを飲んでいる人も注意が必要です。薬の副作用で血栓ができる場合があります。病院で申告しないケースも多く、避妊薬を服用している方は足が痛くないかなど特に注意してください。
ちなみに片足がはれていれば足の血栓=深部静脈血栓症ですが、両足がはれている場合には心不全の可能性がありますので、早めに受診してください。
■夏の災害で増える不整脈
2016年の春に発生した熊本地震のときには増えなかったのですが、2020年夏に発生した熊本豪雨で増えた病気が不整脈です。夏は暑さによる発汗・脱水に加えて、避難生活による睡眠不足や強いストレスが重なります。そうすると、体内の電解質のバランスが崩れたり、自律神経が乱れたりして不整脈が起こりやすくなります。
汗をかいたり、脱水になったりすると、汗と一緒にナトリウムやカリウムなどが失われます。そうすると体内の電解質のバランスが崩れる。その結果、不整脈になるというメカニズムです。
特にこういった災害のあとは心房細動が怖いです。脳梗塞の原因にもなりますので動悸や脈の乱れを感じたら我慢せずに受診をしてください。
■夏の対策は水分補給
まず大切なのは、のどが渇く前から少しずつ水分を補給すること。汗をたくさんかいた場合には、水だけでなく電解質も補給できる飲み物、スポーツドリンクなどを利用してください。高齢者は飲みすぎもよくないのですが、汗をかいたときには利用するといいと思います。暑さを我慢しすぎず、エアコンや扇風機を使って熱中症を防ぐことも結果として心臓や血管を守ることにつながります。
■不整脈に気づくための自己検脈
自分が不整脈なのか簡単に調べる方法があります。それが自己検脈です。手首を出して、親指の付け根あたりにある脈に3本の指をあてます。あてるときに指を軽く丸めると測りやすいです。脈を15秒測り、脈打つ回数を数えます。15秒の回数×4の回数を毎日記録してください。極端に上がったり、下がったりした場合には不整脈の可能性があるので医療スタッフに相談してください。
自分で体調不良に気付かない人も多くいます。自分で脈をチェックし記録する、これが命を守ることにつながります。
■心臓病のリスク あなたは何個あてはまる?
心臓病リスクをチェックしましょう。4つ以上あてはまれば特に注意が必要です。
・年齢が75歳以上
・家族が亡くなった、もしくは重傷
・家屋が全壊した
・地域社会が被害を受けた
・高血圧
・糖尿病
・心筋梗塞、狭心症など循環器疾患の既往
■命を守る7つのポイント
命を守る、7つのポイントです。
①睡眠の改善 6時間以上の睡眠をこころがけましょう
②運動の維持 散歩や簡単なストレッチだけでもいいので継続しましょう
③体重の維持 体重は増加だけでなく減少も注意してください
④感染症予防 避難所では感染症予防を徹底しましょう
⑤水分摂取 熱中症対策としても有効です。のどが渇く前から水分補給をこころがけましょう
⑥薬の継続持病がある場合には薬をきらさないことが大切です
⑦血圧管理 140以上は医療スタッフに相談してください
一人ひとりが体調管理をすることで、結果的に医療スタッフの負担を減らすことにもつながります。ご自分の心と体を大切にしてください。
※7月31日「金チカっ!」で放送しました。

