夏休みにはSNSのトラブルが急増するという

写真拡大

 個人情報の保護が叫ばれる一方で、InstagramなどのSNSには個人のプライベートな写真が大量に投稿されており、実質的に個人情報がダダ漏れになっている状況である。写真が一枚ネットに上がってしまえば、そこからいくらでも個人を特定できてしまうのだ。

 若者はそういった画像をアップすることに、なんら抵抗がないケースが多い。特に、夏休みになるとInstagramやTikTokに画像や動画を投稿して“いいね”稼ぎに躍起になる高校生は珍しくない。最近の学校や親は、生徒のプライベートに介入しないケースが多いとされるが、本当に大丈夫なのだろうか。【取材・文=山内貴範】

【写真】夏休みに入り、学生でごった返す街・池袋にできた新しい名所「ヨドバシ池袋」の実態

無防備極まりない学生たち

 モバイル社会研究所が発表した「モバイル社会白書」によると、2025年時点で、中学1年生のスマートフォンの所有率は7割を超えており、中学3年生では約9割を超えている。もはやスマホは生徒の必携アイテムになっている。

夏休みにはSNSのトラブルが急増するという

 中学入学をきっかけに、親におねだりして買ってもらうケースが増えていると思われる。もちろん、スマホを親子の連絡ツールとして活用する例もある。これは確かに防犯面などで有益だろう。

 問題はSNSの使い方にある。InstagramやTikTokを見ると、中学・高校生の個人アカウントがいくらでも発見でき、学校やプライベートの写真を載せているものがたくさんあるのだ。自宅の前で撮影した写真もあれば、行った店をリアルタイムで報告している人までいる。親の写真はおろか、職業までご丁寧に紹介している生徒までいる。

 名前を隠していても、例えば、着ている制服のデザインから通っている高校を特定できるし、自宅の場所もすぐにわかる。行きつけの店やおすすめの料理をたびたびアップすれば、立ち回り先が判明し、待ち伏せすることもできる。あまりに無防備極まりないのではないだろうか。ストーカーに遭うような危険性はないのだろうか。

「画像をアップしないで」と指導はするが……

 筆者の知り合いの教師H氏が勤務する公立高校は、制服を着崩し、髪を染めたりする、いわゆる“やんちゃ”な女子生徒が多く通っている。夏休みのSNSの使い方を指導するも、生徒は聞く耳を持たないらしい。H氏が呆れながらこう話す。

「今の高校生は写真をSNSに載せることを、まったく躊躇しないのです。家族や知り合いにLINEなどで写真を送るような感覚で、気軽に写真を載せてしまいます。

 夏休みの間だけ髪を染めたりする生徒は前からいましたが、それを世界中の人が目にするSNSに公開してしまうのが今の高校生。それを見た人が学校に苦情の電話を入れてくることもある。不特定多数の人に見られているという意識がないんですね。画像をアップするのはやめましょう、と言ってもなかなか聞いてもらえない。私の指導力不足なのかもしれませんが……」

 バイト先でいたずらをする“バイトテロ”や、喫煙や飲酒など未成年としては明らかに問題ある行為の証拠写真を載せてしまい、学校に通報があったり、生徒が退学になったりする事態も例年のように起こっている。夏休みは気が緩むため、こういったトラブルが起こりやすいのだ。

無断で画像を載せられるのは大迷惑

 生徒が自身の写真を載せるだけではなく、クラスメイトや友人が、本人の許可なしに、勝手に他の生徒の写真を載せてしまう事態も起こっている。埼玉県のある公立高校の生徒Aさんがこう打ち明ける。

「うちの高校の行事を、いちいちすべて投稿するRさんというクラスメイトがいるんです。InstagramやTikTokでたくさんのフォロワーがいて、本人はインフルエンサーを気取っているのかもしれませんが、“いいね”が欲しいがために、球技大会や文化祭の集合写真も載せてしまう。私の顔写真も、モザイクなどをかけずにそのまま載せているんですよ……」

 近年、学校も公式のInstagramのアカウントを開設して情報発信を行うケースが増えているが、顔写真を掲載する際は、生徒に許可を取るのが基本だ。しかし、今回の問題はRさん個人のアカウントである。Aさんは苦しい胸中をこう打ち明ける。

「Rさんは、教室のなかで毎日のようにTikTokにアップする動画を撮影しています。クラスの中でも目立つ存在で、女子の間でもリーダー格。学校内でもファンが多いんです。もし私なんかが何か言ったら、いじめの対象になってしまうかもしれない。本音は、“なんで、あなたのSNSに、勝手に顔写真を載せられるんだ”と言いたくて仕方ないですよ。

 あと、うちの学校の制服は結構マニアに人気があるんです。私は見かけたことがないのですが、実際に盗撮にでも来ているのか、不審者を見たことがあると友達から聞いています。Rさんはわざわざ学校の様子を世界中に発信して、不審者にいろんな情報をあげてしまっているだけ。迷惑でしかありませんよ」

教師もスマホの扱いに慣れていない

 これまでに取材した教育関係者の多くが常に口にすることだが、スマホに関する指導状況は、学校によってまちまちである。しっかり警告する学校もあれば、家庭任せになっている例もある。こうした状況に疑問を投げかけるのが、前出の教師H氏だ。

「親がスマホの扱いに慣れているのかというと、そうともいえない。むしろ、親の方が子供のプライベートをがんがんSNSに投稿している例もありますからね。保護者と生徒、両方にスマホの使い方や、メディアリテラシーなどの指導をすることは必要だと思っています。

 そういう場を設けるべきだと、私は機会があるたびに話しているのですが、教育委員会や、教頭、校長があまり積極的ではないんです。学校側もスマホの危険性をよくわかっていない。スマホが急速に普及しすぎていて、ベテランの教師ほどその危険性や、SNSで行われていることを深く知らないのが問題です」

 近年、個人情報の漏洩に伴う様々なトラブルが起こっている。特に夏休みは、しっかりと家庭でもスマホやSNSの扱い方について、お互いに確認しておくことが必要ではないだろうか。

ライター・山内貴範

デイリー新潮編集部