皇室典範改正で見逃されてきた「国費負担増」問題 「旧宮家養子は4人必要」との声も上がるなか皇族が増えればコストも増加 秋篠宮もかつて皇族数への問題意識を表明
異例のスピードで成立した皇室典範改正だが、国会でほとんど議論されなかった問題がある。旧宮家の男系男子を皇族の養子に迎えた際に、国民に新たな負担が生じることだ。推進派からは「養子は最低4人」との声も上がるなか、今回の改正が抱える大きな問題が浮き彫りとなった――。
少なくとも4人の養子が必要との想定
皇室典範改正案が国会で成立した7月17日、高市早苗・首相は会見でこう胸を張った。
「長年にわたった検討に結論を出し、改正の実現に至ったということは感慨深く……」
改正皇室典範には「旧宮家の男系男子を皇族の養子に迎える」制度と「女性皇族が結婚後も皇室に残る」制度が盛り込まれており、特に愛子さまと佳子さまという未婚の内親王を持つ天皇家、秋篠宮家にとって非常に大きな制度変更となった。
改正典範は天皇の御名御璽を得て公布され、今年11月頃に施行される。
しかし、これほど大きな皇室制度の改正にもかかわらず、国会では専門家や学識経験者から意見を聞く公聴会も開かれず、審議時間は衆院3時間、参院3時間の合計わずか6時間で慌ただしく採決された。審議が尽くされ、「国民の総意」を得たとはとても言えない。
そのため、大きな問題が残されたのだ。
そこに進む前に、改正によって新たな皇族がどのように現われることになるかを見ておこう。
皇族の養子になれるのは旧11宮家の「15歳以上の未婚の男系男子」となっており、現在、対象は東久邇(ひがしくに)家に6人、賀陽(かや)家、竹田家に各2人、久邇(くに)家に1人の計11人(15歳未満を含む)とされる。
養子を迎えることができる宮家は、常陸宮家、三笠宮家、三笠宮𥶡仁親王妃家、高円宮家の4家(7人)だ。
皇族の顔触れはどう変わっていくのか。皇室研究者の高森明勅氏が語る。
「旧宮家との養子縁組を推進してきた人たちは少なくとも4人の養子が必要と考えているようです。今回の改正皇室典範では女性皇族の子供は皇族として認められないが、養子皇族男子の場合、本人には皇位継承権は与えられないものの、生まれる男子は皇位継承権を持つとされた。皇位を男系で継承していくための規定です。そうした男系主義の考え方に立てば、将来的に皇位を男系でつなぐためには、確率的に内廷(現在の天皇家)とは別に4つか5つの男性宮家を立てる必要があるとされているからです」
現に、政府の有識者ヒアリングなどで旧宮家の男系男子の皇籍復帰を主張してきた百地章・日本大学名誉教授は7月18日付の「朝日新聞デジタル」の記事で、〈最低でも4人くらいは養子となっていただき、将来は宮家の当主として、天皇となられた秋篠宮家の悠仁さまを支えていただくことが望ましいと考えています〉と語っている。
国会審議や報道でも封印されたコスト論
旧宮家から誰が皇族となるかが注目される一方、今回の皇室典範改正の国会審議で全く議論されず、報道でもほとんど指摘されていない重要な問題がある。旧宮家との養子縁組で皇族を増やせば、国民の負担が増えることだ。
実は、この問題に早くから言及していたのが秋篠宮文仁親王だった。2009年の誕生日会見で皇族数の減少について質問された際、こう答えている。
「国費負担という点から見ますと、皇族の数が少ないというのは、私は決して悪いことではないというふうに思います」
皇族数を増やす議論が国費負担増につながることについて、皇族である秋篠宮が以前から問題意識を持っていたことがわかる発言なのだ。
先の高森氏もこう語る。
「麻生太郎内閣で旧宮家養子案の制度化を目指す水面下の動きがあった後の会見でした。秋篠宮殿下は皇族数が減っていくことについて、国事行為を別にして、公務について明確な規定のあるものはないから減らしていくしかないとおっしゃっていた。だから私は皇族減少を憂いておられると考えていたが、国庫負担、国民の税負担が減るから決して悪いことではないとおっしゃったので非常に驚きました。秋篠宮殿下には、赤の他人に近い旧宮家養子案への違和感があったのでしょう。それなのに今回の皇室典範改正論議では、旧宮家の男子との養子縁組で国庫負担がどう増えていくかが全く議論されていない」
関連記事では高森氏監修のもと、旧宮家の男系男子を皇族の養子に迎えた場合、一家族あたりどれだけの費用がかかるのか試算している。
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※週刊ポスト2026年8月7日号
