【片岡 亮】ロケ地はわからず、スケジュールもあやふや…フジテレビのドラマ制作現場で起きている「異変」

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人材流出が止まらない

「俳優は個性が強いので、俳優間のトラブルというのは珍しくない。佐藤さんと橋本さん、ともに難しい人たちというわけではありません。

今回のトラブルは我々制作側のコミュニケーション不足による行き違いだと思いますが、正直これよりひどいトラブルは過去にいっぱいあった。もちろんそれはフジテレビに限ったことではない。

でも、そのトラブルをちゃんと解決できる人がいないのがフジの現状で、コンプライアンス担当の弁護士に判断を丸投げしちゃっていること自体が問題なのです」

そう語るのは、ドラマ制作に30年以上関わってきた敏腕プロデューサーA氏だ。フジテレビのドラマ「夫婦別姓刑事」で夫婦役を演じた、佐藤二郎と橋本愛の間で起きたハラスメント疑惑をめぐる一連の騒動は、フジ自身の大苦境がその背景にある。週刊文春の報道では、佐藤による言動が橋本を傷つけたハラスメントの強調がされているが、結果的に問題となったのはフジテレビの対応だ。佐藤に対して撮影時の橋本側の希望が十分に共有されず、事情を知らない佐藤が橋本の頬に触れてしまったのだ。

この事態に対して複数のフジ幹部が口を揃えて吐露したのは、「現場が維持できないほどの深刻な人手不足」という過酷な現状だった。

2024年に報じられた「中居正広と女性アナウンサーの性加害トラブル」以降、フジテレビは苦しい組織再編という名の泥沼に沈んでいる。この問題に関連して組織への批判が相次ぎ、スポンサーが次々と撤退したことで、局内では「天才」や「エース」と呼ばれた人材の流出が止まらないという。敏腕プロデューサーがディズニーやNetflixに移籍し、直近でも9人ものアナウンサーが退社。さらには現場を支えた有能なディレクター、放送作家、演出などスタッフたちが他局に流出しているのだ。

この「絶望的な人手不足」が、今回のハラスメント騒動を誘発した最大の引き金であるという。長年フジのドラマに携わってきた役員の一人に話を聞いた。

「制作側が各俳優に事情を伝えていれば、それがハラスメントだったとしても、本来こんなに感情的に揉める話にはならずに収められたはずなんです。

かつてなら怒った演者、傷ついた演者に対しても、丁寧に対応して丸く収めることのできる有能なプロデューサーやスタッフたちがいました。いまのフジにはそういう人が欠けている。

今回のドラマは制作費削減と人手不足で、本来3人で行う作業を1人がやっているなど、企画段階からトラブルだらけだったようです」

ロケ場所がわからない、スケジュールには間違い

実際、「夫婦別姓刑事」は企画時点からキャスティングの決定が遅れたという話もあった。現場関係者が不満をつぶやく。

「スケジュール表に誤りがあり、それを指摘されたのにもかかわらず、反映されていないバージョンが手渡されたり、劇中の警察署として使われた市役所のロケ場所が、劇中の警察署名のままになっていたり……。直前までどこで撮影するか分からないという問題が何度も起きました」

準備不足のまま進んだこのドラマが佐藤二郎主体で作られたのも、佐藤のキャリアやアドリブ力に期待してのことだったという。しかし、結果としてそれが佐藤本人への強いストレスに繋がった。現場の対応の遅さには、納得の事情がある。

「制作費削減で人手をすぐに補えない事情に加えて、コンプライアンス部門の指摘が絶対になっていて、現場が勝手に判断できない状況が逆に弊害となっています。

いまのフジは常に新たなトラブルに怯えていて、その結果、番組制作の実情にあまり合わない対応策が現場に共有されていて、出演者から『ここはどうなっているんですか』と聞かれても右往左往している。コンプライアンス的にダメなら絶対ダメという感じで現場を威圧するようになっているのです」

さらに事態を深刻にしているのは、フジテレビ側の「説明放棄」だ。今回の一件ではあくまで佐藤二郎がXや週刊新潮で発言して状況を説明していたが、フジテレビ側は文書で声明を出して対応しただけだったことに問題が垣間見えているという。

「今のフジテレビで、もし渦中にいたプロデューサーが会見をやりたいと言っても、止められると思います。会見をやって不測な事態が起きるリスクを心配するのがコンプラ側ですから。

つまり、企業防衛を優先するあまり、フジ関係者が表で説明することさえもリスク扱いになってしまっているんです」(前出の役員)

この役員自身は現在、フジの立て直しに尽力している人物で、「テレビエンタメのために、少しでも動きの余白を広げられるようやっていきたい」と言っているのだが、大組織の中ではそれを変えられないジレンマがあるようだ。

かつての中居正広氏をめぐる騒動で植えつけられたトラウマが、第二、第三のトラブルを招いているというのは、何とも皮肉な話だ。出演者よりも局を守ることに偏りすぎた結果、かえって有能な人材の流出を招いているように見える。

コンプライアンスという盾に守られた裏側で、現場を支えてきた人間味あふれるスタッフたちが次々と去っていくとすれば、その荒れ果てた土壌から、かつてのような優れたコンテンツが再び芽生えることなどあるのだろうか。

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