《ユニフォームの胸元に男性釘付け》世界で4000万再生された美女サポーターは「実在しない」 AI時代のW杯、日本でも「生成ギャル」が270万回超表示
スタンドに現れた、息をのむような美女サポーター。その胸元に釘付けになっていた隣の男性が、巨大スクリーンに映っていることに気づき、我に返る──。北中米W杯の開幕からわずか2週間、この「美人サポーター」の動画はSNSで4000万回近く再生された。だが、その女性は最初から存在しなかった。
【写真を見る】話題をさらった中継映像、ヤンキースタジアムの観客席にもいた同一美女サポーター
欧州放送連合(EBU)によると、この動画の投稿元は、「Chiara Cleo」を名乗るインスタグラムのアカウント。フォロワーは38万人を超え、コメント欄には実在する女性だと信じる声が数多く寄せられていたが、実在するインフルエンサーではなく、AIが生み出した架空の人物だった。 EBUは、このほかにもW杯期間中には生成AIで作られた美女サポーターの画像や動画が相次いで拡散されていると指摘している。
ベルギーの公共放送「RTBF」が動画を分析した結果、 AI判定ツールでは99.9%の確率で生成コンテンツと判定。商用ツール「Seedance 2.0」が使われた可能性が高いという。さらに、フランスのファクトチェック番組「Truth or Fake」は独自にこのアカウントを分析。「マイアミ在住の23歳女性」を名乗っていたが、実際にはルーマニアから運営され、投稿はすべてAIで生成されたものだった。
海外ジャーナリストが続ける。
「W杯に便乗し、露出の多い投稿でアクセスを集めることで、最終的にユーザーを成人向け課金サイトへ誘導する狙いのようです。プロフィールにサブスクサイト『Fanvue』のアダルトコンテンツへのリンクも貼られていたことから、ユーザーを誘導する狙いがあったのでしょう」
なぜ「美女サポーター」という設定がここまで拡散力を持つのか。背景には、W杯が長年「美女サポーター」が注目を集める舞台だったことがある。
2018年のロシア大会では、中継中にスタンドの若い女性にズームアップする「ハニーショット」が問題視された。FIFAの多様性責任者は、サッカー界の性差別を是正するため、放送各局に「美女」へのズームをやめるよう求めたと語っている。
「この大会では、写真サービス大手のゲッティイメージズが『W杯で最もホットなファン』と題し、女性だけを集めた写真ギャラリーを公開して批判を浴び、謝罪・削除する騒動もありました。当時は実在する美女サポーターがカメラに抜かれ、過剰に消費されることが問題になった。ところが2026年大会では、実在しないAI美女がSNSを介して注目を集めています。わずか8年で、 W杯を彩る『美女サポーター』は実在の人物からAIへと置き換わった格好です」(同前)
日本のAIギャルサポーターが270万回表示
EBUはこのほかにも、W杯期間中に拡散された複数のAI画像や誤情報を確認している。日本に関しても、Xのアカウントで投稿された日本代表をモチーフにした動画が270万回表示されるケースもあり、それらには実在の女性だと誤認識した上でのコメントも目立つ。
米Yahoo Sportsは、2026年大会を「人工知能時代最初のW杯」と位置づける。その背景には、48チーム・104試合という史上最大規模の大会となったことに加え、誰でも短時間で精巧な偽動画を作れるほど生成AIが進化したこと、さらに多くのSNSがファクトチェック体制を縮小したことがあると分析している。
サイバーセキュリティ業界でも、今大会は「史上最大のサイバー攻撃対象となり得るエンターテインメント」として警戒されている。
かつて世界を魅了したのは、偶然カメラに映り込んだ実在の美女サポーターだった。2026年大会では、その座をAIが奪った。"観客席の女神"も、まず疑って見なければならない時代が始まっている。
