「辛いのがダメ」「ほとんど残していた」それでも15年以上“毎日”激辛ラーメン「蒙古タンメン中本」を食べ続ける56歳男性が明かす“やめられない理由”〉から続く

 全国の蒙古タンメン中本を巡り、限定メニューやイベントを追いかけ続けている、づけとごさん(56)。世の中には無数のラーメン店があるというのに、彼はひたすら蒙古タンメン中本に通い続け、その“中本愛”を何年にもわたって貫いてきた。

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 それだけではなく、彼は中本を理由に大企業を辞め、毎日のように通うようになった。まさに「レジェンド」である。

 自他共に認める探究者となった今、づけとごさんの辛さとの向き合い方や、中本というカルチャーの奥深さまで話を聞いた。(全3回の2回目/3回目に続く)


づけとごさん ©杉山秀樹/文藝春秋

◆◆◆

「せっかく休みを取れたから…」社会人になってからは有給を取って中本に

――づけとごさんは15年以上にわたり、ほぼ毎日中本に通い続けているのですよね。中本にハマり始めた頃は、どれくらいのペースで行かれていたんですか?

づけとご 大学生の頃は時間もあったので、月1〜2回くらいのペースで食べていたんですよね。その後、社会人になると、食べに行く機会も減りました。

 というのも、初代・中本正さんの「中国料理中本」は高校生の客が中心の店だったので、営業時間もすごく短く、夕方くらいには閉めてしまうことも多かったんです。

――それでは「休みの日に行けたらいい」くらいの感覚だったんですね。

づけとご でも、有給を取ったり、半休を取ったりして食べに行っていました。

――ん? 有給を取ってまで?

づけとご 当時は会社でも若手で仕事が忙しくて行けなかったので、有給でも取らないと食べられなかったんですよ。「せっかく休みを取れたから、まず中本に行こう」という感じでしたね。

ずっと「毎日食べたい」と思っていた

――同じ系統だとラーメン二郎にハマる人も多いですが、そこは違ったんですね。

づけとご もちろん、二郎も食べましたし、同じ時期にいろいろ食べ歩いていました。でも、中本の魅力がほかのラーメンを凌駕してしまったんです。中本を食べると頭の中が中本のことでいっぱいになる。お腹が空くと、「中本を食べたいな」と思っていました。

――そして、白根さんの蒙古タンメン中本になってから、営業時間も延びました。

づけとご ありがたかったですね。「仕事終わりにすぐ行く」という生活になりました。営業時間が長くなっただけではなく、定休日も減ったことで、非常に通いやすくなりました。

――それでも週1〜2回くらい?

づけとご 仕事もありましたからね。でも、頭の中はずっと中本のことばかりでした。

――いつ頃から、「毎日でも中本を食べたい」と思うようになったんですか?

づけとご 営業時間が延びて行きやすくなって以降、ずっと「毎日食べたい」とは思っていました。

「僕にはどこか物足りない…」中本以外のラーメン店に行かない理由

――寿司や焼肉のような“ごちそう”よりも?

づけとご 僕は中本が基準なんです。「今日は中本が休みだから寿司に行くか」という感覚ですね。

――おぉ……。完全に“中本中心”の生活ですね。逆に、「ラーメンを食べに行こう」と言われて、中本以外を指定されたら?

づけとご よほど、興味がある店なら行きますが、あまりないですね。それよりも、中本のほうが食べたいし、絶対おいしいとわかっているので。

――わっ、過激派。

づけとご もちろん、どのラーメン屋さんもおいしいんだと思います。みなさん一生懸命作っていますし。だけど、僕にはどこか物足りない……。中本のインパクトを知ってしまっているので、ほかのラーメンを食べても、結局「中本を食べに行きたいな」となってしまうんで。

――やっぱり、過激派ですよ。中本のために会社を辞めたとも聞いています。

づけとご 「もう、それしかない」と思ったんです。毎日、中本を食べたかった。でも、会社勤めだと会議や打ち合わせがあります。僕にとっては“その時間があるなら中本を食べたい”という感覚だったんですよね。

「会社で会議している場合ではない」中本のラーメンを食べるために大企業を退職

――「もう、中本がないと生きていけない」と言っても過言ではない。

づけとご しかも、中本には「1日20食」のような限定ラーメンがあるんです。そうすると、開店時間に行かなければならない。会社で会議している場合ではない。「だったら、自分で仕事をするしかないな」と思ったんです(笑)。

――ちなみに、勤めていた会社は?

づけとご ○○(編注:有名な外資系企業)です。

――大企業ですね。退職理由は「中本のため」だったんですか?

づけとご そうですね。仕事中に抜け出して食べに行っていたので、上司も僕が中本好きなのは知っていました(笑)。

――独立志向がもともとあったわけではなく?

づけとご なかったですね。中本がなければ、たぶんずっとサラリーマンを続けていたと思います。「どうやったら毎日中本を食べながら、家族も養っていけるか」という発想で退職を決意しました。

――『グラップラー刃牙』(秋田書店)の「斗羽と猪狩が試合をするのです。それはわたしにとって全てに優先されることです」というおじさんみたいですね。独立するとき、ご家族の反応は?

づけとご もちろん、妻はいい顔はしていなかったです。最終的に、「最低限、この金額だけ家に入れてくれればいい」ということで納得してくれました。

中本のラーメンを食べるために「朝4時に起きる」“異次元の食生活

――独立したことによって、かなり自由は利きそうですね。

づけとご 着替えるのが面倒なので、客先も中本シャツで行けるところしか行かないです。

――独立すると、自分で時間を組めますもんね。

づけとご それでも「中本に合わせる」のが大変になってきた。開店時間が10〜11時のため、遠い店舗だと、それよりも早く家を出ないといけない。

――もう「朝から中本を食べること」に疑問を呈することができなくなりましたね。そこで、生活リズムも変わった。

づけとご 「どうしたら仕事を効率よく片付けて開店に間に合うか」を考えた結果、朝4時に起きるようになりました。

――早起きの次元が違いますね。

づけとご 4時にランニングをしてから、9時くらいまで仕事をする。それから中本を食べに行く……。これが「最適解」だと気づいたんです。

――仕事を終わらせた達成感も込みで、中本を食べるということですね。

づけとご それもありますが、一番は「中本が開いていない時間に仕事をする」のが落ち着くんですよ。中本が営業している時間に仕事をしていると、「今、食べに行けるのに」と気になってしまいます(笑)。

「なるべく偏らないようにしています」同じ店に月3回以上行かないワケ

――ほぅ……。完全に生活の基準が中本ですね。

づけとご 朝のうちに重要な仕事を終わらせて、お店が混んでいない午前中に中本へ行く。そのあと、また仕事があれば戻るし、客先にも行く。これが、自分にとって一番いいサイクルなんです。

――それでは、毎週6〜7回は中本を食べるということですが、普段は、どの店舗によく行くんですか?

づけとご なるべく偏らないようにしています。同じ店に月3回以上行かないようにして、できるだけいろいろな店舗を回るんです。

――店ごとの味の違いを食べ比べているのですか?

づけとご 中本はセントラルキッチンで全部同じ味を出しているわけではなく、人が中華鍋を振って作っているので、どうしても小さな癖が出るんです。その微妙な違いを楽しみたいのです。

――でも、好みの店舗はありますよね?

づけとご ありますが、それはあくまで“好み”なんです。

――“正しい味”とはまた別。

づけとご 例えば、本来は辛さ3程度のメニューですが、「この人はちょっと辛めに作るな」と思うことがあります。

――頭の中に“基準”がある。

づけとご 基準の範囲内で、このお店はどの辺りの味なのかというのを楽しんでいるんです。

「ちょっとした揺らぎが最大の魅力」なぜ毎日中本を食べても飽きないのか?

――そこまでいくと、行きつけのお店で「づけとごラーメン」を作ってもらえそうな気もしますが……。

づけとご そんなのは邪道です。それに、僕は感想を言いすぎないようにしているんです。だって、僕の好みに寄せて作ってもらいたいわけではありません。「あなたが作るこのメニューは、どういうイメージなんですか?」というのを確かめながら食べるのが楽しいんですよ。

――「究極のお客さん」ですね。それでは、「おすすめの店舗を3つ教えてください」と言われても難しいということですね。

づけとご どの店舗にも、それぞれの良さがあります。どの店舗も人が作る魅力があるから、飽きないのです。完全に均一なラーメンだったら、たぶん飽きています。ちょっとした揺らぎが、中本最大の魅力だと思っています。

――とはいえ、自分の好みにぴったりの店舗に通いたくはならないんですか?

づけとご なります(笑)。だから、あえて散らしますね。ひとつの味を覚えすぎないようにしています。

ずっと食べているから、ほんの少しの塩分の違いも感じられる

――ところで、店舗ごとの味の違いって、一般の人にもわかるものなんですか?

づけとご たぶん、多くの人には“ほぼ同じ”だと思います。でも、たくさん食べていると、微妙な違いがわかるんです。そこを感じるのが楽しい。

――本当に「中本通」ですね。

づけとご ずっと食べていますからね。ほんの少しの塩分の違いとか、そういうところを感じるのが面白いんです。

――頭の中で、店ごとのデータベースを作っているような感じですか?

づけとご まさに「この人が作るこのメニューはこう」というのを、勝手に整理しています。

――卓上調味料を足したりは?

づけとご 基本的にはしません。店員さんが作った、その味を食べたいので。

――スープは最後まで飲むんですか?

づけとご 昔は飲んでいましたけど、今はスープまで飲むとお腹が一杯になってしまうので飲みません。

――あっ、はい。

撮影=杉山秀樹/文藝春秋

〈15年以上“毎日”激辛ラーメン「蒙古タンメン中本」を食べ続けているのに「健康診断は問題ナシ」…“異次元の食生活”を続ける56歳男性が「絶対に体を壊さない」理由〉へ続く

(千駄木 雄大)