この記事をまとめると

■スマートキーは車両ごとにID登録されており基本的に他車では使えることはない

■現在はローリングコードにより解錠の偶然性はほぼ皆無だ

■デジタルキーでは生体認証も加わることで安全性がさらに高まっている

現在は天文学的な組み合わせ数のコードで被る可能性はほぼゼロ

 いまどきの新車では、身につけているだけでドアロック解錠からエンジン始動までできるスマートキーは当たり前。安価な商用車でもボタンによってドアロックを操作するリモコンキーが備わっていることが多い。いずれも電波によって車両とキーが信号を送受信することで機能している。

 たとえばテレビやエアコンといった家電のリモコンは同一メーカーであれば信号が共通しているように、クルマのスマートキーなどでも同一メーカー・同一モデルであれば他人のクルマのロックを解除できてしまうのだろうか。

 答えはノーだ。

 ショッピングモールなどの大規模な駐車場において、リモコンキーのボタンを連打していると、他人のクルマのドアロックが解除できた……という都市伝説もあるが、現在はそうした事態は起きないようになっている。

 まず、スマートキー/リモコンキーの仕組みから整理してみよう。冒頭で記した家電のリモコンのように、同一メーカーで同じ信号を送って操作できるようではカギとしての基本的な機能を満たさない。

 そこで、キーと車両の通信時には、キーがもつ個体識別番号(ID)を含めるような仕組みになっている。

 スマホでワイヤレスイヤホンを使うときのように、車両とキーをペアリング(登録)しておくことで、同じように見える他人のキーでロック解除できたり、エンジン始動したりしないようになっているのだ。

 ユーザーとしてはキーのボタンを押したり、ドアノブの小さなスイッチを押したりといったシンプルな操作だが、その裏では車両とキーがIDを常にやり取りしており、ペアリングした相手であることを確認しているのだ。

 こうしたペアリングの仕組みは、古いリモコンキーでも採用されているのだが、かつては識別番号が6桁程度の数字で作られていることもあった。そうなると、まさに「万が一」くらいの確率で、同一メーカー・同一モデルにおいてリモコンキーでドアの施錠・解錠ができることになる。他人のリモコンキーによって解錠できた……という話が、都市伝説ではなく、実際にあったとしても不思議ではない。

 しかし、桁数を増やせば話は違う。たとえば、8桁の数字およびアルファベットの組み合わせによるIDであれば、理論上は200兆通りを超える。

 さらに、最新のスマートキーでは「ローリングコード(ホッピングコード)」といって通信のたびに暗号を変える技術が使われている。こうなると数京通りのまさしく天文学的な組み合わせとなる。同一メーカー・同一モデルであっても、他人のクルマを解錠できてしまうようなことは、まず起きえないだろう。

デジタルキーでは生体認証が加わり一層強固なセキュリティ

 スマートキーと車両のペアリングがされているということは、中古車を購入した場合に前オーナーがスマートキーを手もとに残しておくと知らぬ間にクルマを乗っ取られてしまうと心配になるかもしれないが、もし気になるのであれば、手元にないIDについてはペアリングを解除するという対策も取れる。こうした作業は専門のメカニックなどに依頼することになるが、安心のためにはペアリングの確認をするのもいいだろう。

 なお、最近ではスマホに専用アプリなどを入れることでデジタルキーとして活用できるクルマも増えている。こちらは、まさにクルマとスマホをペアリングしているので、同じアプリを入れたからといって他人のクルマを解錠できるはずもない。

 また、スマホのデジタルキーであれば、タッチ決済で使われるNFCのような近距離通信を使うこともあるので、離れた位置からロック解除されることもないだろう。さらに、デジタルキーは生体認証も併用できるので安全性も高い。こうした新しいデジタルキーを使うことは、スマートキーの微弱電波を増幅させて車両を盗む「リレーアタック」の対策にもなる。

 車両のバッテリー上がりなど、電気トラブル時にメカニカルキーが必要になることもあるため、すべてがデジタルキーに移行するのは現実的ではないという見方もあるようだが、生体認証によるセキュリティといったメリットを多くのユーザーが知ることになれば、一気にスマホで愛車のドアロックを解錠する時代に移行するのではないだろうか。

 すでにボルボの電気自動車などでは、スマートキーを身につけていれば、ドアを開けてシートに座るとシステムが起動してすぐに走れるようになっている。そう遠くない将来には、スマホにインストールしたデジタルキーによって、ボタンやスイッチに触れることなく、いま以上にスマートに走り出す時代になりそうだ。