チョコレートをパクッと食べる人は大損している…同じチョコでも味わいがガラっと変わる"最高の食べ方"
※本稿は、市川歩美『味わい深くてためになる 教養としてのチョコレート』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■チョコレートを美味しく味わうための準備
チョコレートは、難しく考えず「美味しいね」と笑顔で楽しむのが一番!
私は、基本的にはそう思っています。私たちは日々、仕事や家事、勉強などで忙しく、頭を使って難しいことに向き合っているのですから。
チョコレートは日常に、心地よいひとときをもたらしてくれます。しかし、ときには知的好奇心から、チョコレートそのものとじっくり向き合い、頭で理解したくなることもありますよね。本稿では、そんなときのための方法をまとめます。
日頃、私がチョコレートジャーナリストとして活動しているときに実践している心構えやプロセスをもとにしていますので、ぜひ参考にしてみてください。
チョコレートとじっくり向き合うためには「味わう前の準備」が大切です。
環境を整え、自分の心と体の状態をチェックし、リラックスできているかを確認することが最初のステップです。
?場所を選ぶ:落ち着いてチョコに向き合える場所に身を置く
?心を整える:リラックスできているかを確認
場所選びは、とても重要です。人それぞれだと思いますが、散らかった空間よりも、きれいに片づいたテーブルが望ましいでしょう。チョコレートは五感で味わうものなので、視覚や聴覚、嗅覚が、ほかの要素に邪魔されない環境が理想的です。
■心に余裕がないと、繊細な味わいは感じにくい
私の場合は、まわりに物が少なく、色が少ない場所が集中しやすいです。
リラックスしていることも大切です。例えば「時間がなくて焦っている」「心配事で頭がいっぱい」「けんかして怒ったり泣いたりした直後」といった状況では、チョコレートにじっくり向き合う余裕がありませんよね?
「とりあえずチョコでも食べて、少し気持ちを落ち着けてくださいね」と言いたくなる状況です。
心に余裕がないと、繊細な味わいは感じにくいもの。まずは自分自身を整え、それからチョコレートに向き合えるといいですね。
さらに、人によっては音も影響します。私の場合、多少の騒がしさは気になりませんが、不意に誰かに話しかけられるような環境では集中できません。
あとは、ほどよく空腹な状態が理想的です。お腹がすきすぎていると勢いよくチョコレートを食べてしまい、じっくり味わう余裕がなくなってしまいます。
■五感でチョコレートと向き合う
「味わう前の準備」が整ったら、五感でチョコレートをキャッチしていきます。
ここでは板チョコレートを味わうことを想定しています。
まず、視覚と嗅覚、つまり目と鼻を使いましょう。
?見る:チョコレートの形、色、厚み、艶、パッケージに注目する
?嗅ぐ:チョコレートを鼻に近づけ、香りを確かめる
チョコレートをぐるりと見て回るようなイメージです。チョコレートの表面が白っぽくなる「ブルーミング」が起きていないかも確認しましょう。板チョコの厚みや形もチェック。パッケージに書かれている、カカオや原材料の情報にも目を通しましょう。
次に、チョコレートをすぐにパクッと口に入れず、鼻を近づけてみてください。10秒ほどでさまざまな香りをキャッチできます。
つづいて、いよいよチョコレートを味わいます。
?広げる:チョコレートを口に含み、ゆっくり溶かしながら風味を広げる
?味わう:苦味、酸味、甘味など、チョコレートの味を感じる
チョコレートをしばらく口にとどめておくと、体温で自然に溶けていきます。厚めの板チョコレートなら数回軽く噛んで、薄いチョコレートは噛まずにゆっくり溶かしましょう。

口どけはどう感じますか?
つるつるとしてなめらかでしょうか、それともザラザラした感じがしますか?
口どけには、作り手の意図や技術が反映されています。
■ハミングするように呼吸し「口から鼻へ」香りを抜く
?嗅ぐ:口を閉じ、鼻から息を吸って吐き出し、鼻呼吸で香りを感じる
?聴く:口の中での音に耳を澄ます
「口から鼻へ」香りを抜くようにしましょう。口を閉じたまま鼻からゆっくり息を吸い、鼻から吐くことで、豊かな香りを感じ取ることができます。
ハミングするように呼吸する、と言えばわかりやすいでしょうか。
チョコレートの香りを、スパイスやナッツ、フルーツ、花など身近なものに例えると、特徴がより鮮明に浮かびあがります。そこに「味」を組み合わせて表現すると……。
「レモンのような香りとキリッとした酸味」「赤いベリーの香りと甘酸っぱさ」「グレープフルーツのようなほろ苦さ」「キャラメルの香りに包まれた甘み」というように、チョコレートの個性が言葉に置き換わります。
ナッツやライスパフ入りなら、噛むたびに弾ける音も、風味を引き立たせてくれることがわかります。
■チョコレートのメモは時代の移り変わりを映し出す
チョコレートの名前とともに、味わった日付や購入場所、一緒にいた人、食べた場所や感想を記録しておくと、あとで発見があるかもしれません。
時間が経って、振り返るとわかることですが、チョコレートのメモは個人的な経験や感情だけでなく、時代の移り変わりも映し出します。私自身も、特定のチョコレートの思い出は、その時代の出来事や流行と結びついています。

SNSに投稿するのもいいでしょう。私たちは、昔と比べて記録を共有しやすくなりました。多くの人が同じ時代の思い出を作っています。振り返ったときに、みんなで多くの発見ができたら素晴らしいですね。
最後に、もう一つだけ大切なポイントをお伝えします。
「今食べたいチョコレートが、一番美味しいチョコレート」だということです。
自分の心の声に耳を傾け、今の自分のベストチョコレートを選びましょう。
「食べたい!」と私たちが心から感じて味わうチョコレートは、「それなら任せておいて!」とチョコレート側も張り切って、私たちに魅力を伝えてくれるような気がするのです。
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市川 歩美(いちかわ・あゆみ)
チョコレートジャーナリスト
大学卒業後、民間放送局に入社し、長年ラジオディレクターとして多数の番組企画・制作を行う。5歳頃から筋金入りのチョコレート好き。90年代にフランス・パリのチョコレートの美味しさに衝撃を受け、本格的なチョコレート愛好家となる。放送局の仕事を離れた後、メディアや企業のオファーをきっかけにチョコレート関連のコーディネーター、ジャーナリストとしての活動をスタート。現在は、日本唯一のプロのチョコレートを主なテーマに掲げるジャーナリスト・コーディネーターとして各種メディアに情報を発信。チョコレートのトレンドと情報の源流を作っている。著書に『チョコレートと日本人』(早川書房)など。
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(チョコレートジャーナリスト 市川 歩美)
